映画と本の『たんぽぽ館』

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「ミッドナイト・ララバイ」 サラ・パレツキー 

2011年01月30日 | 本(ミステリ)
40年前の事件の真相を探るヴィク

ミッドナイト・ララバイ ((ハヤカワ・ミステリ文庫))
山本やよい
早川書房


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このブログでサラ・パレツキーをご紹介するのは初めてのようです。
・・・ということは、このヴィクのシリーズ、ずいぶん久しぶりに出たのですね。

V・I・ウォーショースキー
(Vはヴィクトリアなので、親しい人にはヴィクと呼ばれたりします)
という女性探偵が活躍するシリーズものですが、
私は好きで当初から読んでいます。
この本でシリーズ9冊目。
ハードボイルドタッチのこの女性探偵は、
シカゴを舞台に、自らの命を危険にさらしつつ数々の事件を解決。
始めから読むと、彼女の男性遍歴も結構楽しめそうです。


さて、この本では、ヴィクは行方不明のある黒人青年の捜索を依頼されるのですが、
なんと、それはもう40年も前の出来事!! 
さすがに手がかりも極端に少なく、
しかもその少ない情報の持ち主も非常に非協力的。
それでも調べていくうちに、
40年前のある大きな出来事に関係していることが解ってきます。

それは1966年、シカゴで実際にあったキング牧師の公民権運動のデモ。
キング牧師とデモ参加者を警備していた警察に対して、
近隣に住む人々が攻撃を始めたという事件です。
つまり、白人が黒人のデモに対して暴動を起こしたということで、
作品中ヴィクはこの事件に大変心を痛めている。
この事件は40年前著者が実際に目撃したことでもあり、
その心の痛みはもちろん著者の心の痛みでもあります。
この物語は、そのときの事件を大きな軸として進んでいきます。

ヴィクは作中やけどを負って入院したり、
監視の目をさけて家を脱出したり、
相変わらずの奮闘ぶり。
すぐカッとなってしまう火のような性格も相変わらずですが、
愛すべきそのまっすぐな正義感は、絶対に信頼できるものです。

彼女を取り巻く登場人物たちも、お馴染み。
特に、彼女と同じアパートの1階に住むミスタ・コントレーラスは、
非常に世話好きの人のいいおじいちゃんで、私も大好きです。
ヴィクと共同でレトリーバーを飼っていたりしますが、
この人なつっこい二匹の犬が、
殺伐とした事件に落ち込むヴィクをいつも慰めていますね。
その犬たちの情景がいかにも目に浮かぶようなので、
きっと著者も犬が大好きなのでしょう。

この本ではヴィクは前作での恋人モレルと別れたところでした。
うーん、せっかくいい感じだったのに残念。
しかし、今度は階上に音楽家の男性が引っ越してきまして、
このジェイクがまたいい感じでヴィクを助けてくれたりします。
また、今作ではヴィクの年の離れた従妹ペトラが初登場。
明るくて元気で、いかにも今時のギャル。
そのペトラがこの度は行方不明になったりします。
失踪か、はたまた誘拐か。
そこのところもお楽しみに。
ペトラは是非今後もレギュラーで出演して欲しいですね。
次の巻までまたしばらく待つことになるのでしょうか・・・。

「ミッドナイト・ララバイ」サラ・パレツキー ハヤカワ文庫
満足度★★★★☆