映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ジャイアンツ

2011年01月10日 | ジェームズ・ディーン
ジェームズ・ディーンは永遠に

ジャイアンツ [DVD]
ジェームス・ディーン,エリザベス・テーラー,デニス・ホッパー
ワーナー・ホーム・ビデオ


              * * * * * * * *

ジェームズ・ディーン最後の出演作です。
全部で201分、DVDなら2枚組という長大な作品ですが、
これがまた実にドラマチックな人生ドラマですね。


20世紀初頭のアメリカ西部テキサスが舞台です。
テキサス州ベネディクトの広大な牧場に、
東部から嫁いできた若妻レズリー(エリザベス・テイラー)。
彼女は聡明で活発。見るからに活き活きとした魅力に富んでいます。
そんな彼女が見たテキサスは、いかにも考えが古く思われる。
女性は政治の話しに口を出せないこととか、メキシコ人を人並みに扱わない偏見・差別の根強さとか・・・だね。
そんなことでしばしば夫ジョーダン(ロック・ハドソン)と意見が合わず、口論になる。
そんなとき、彼女は言うのです。
「私がこういう女だって、始めから解っていたでしょう? 
私は始め猫をかぶっていた?」
そうなんですよー。
お互い一目惚れしたようなのに、かみ合わない会話・・・。
それでも結婚しちゃった。
あえて、夫に合わせようとしないレズリー、私は好きですね。
たぶん、そういうと思った・・・。


あれ? それで、ジェームズ・ディーンはどこに出てくるの。
はい、それが、彼はこの大きな牧場のしがない下働き、ジェット。
いかにも無教養で品のない田舎者って感じです。
もともとジョーダンはこの男が気に入らなくて、追い出したいと思っていた。
でも、彼の姉がジェットを気に入っていて、
彼女の遺言により、この牧場の一部が彼に譲られた。
そしてジェットは若く溌剌としたレズリーに密かに思いを寄せていくんですね。
私は夫との関係が破綻したレズリーが、
ジェットに惹かれていく物語かと思ったんですよね。
しか~し、夫婦の絆は強かったんですよ! 
不倫物語ではなかったのです!!
この夫婦には一男二女ができ、時がどんどん過ぎ去っていく。
一方ジェットは譲り受けた土地で石油を掘り当て、
とんでもない富と名声を手に入れる。
しかし、彼は孤独のまま、ちっとも幸福そうではない。
ラストでは、レズリーがこの地に嫁いでから25年が立っています。
夫婦の危機を乗り越えながら、25年を共に過ごしすっかり馴染んでいる夫婦。
今はあまりにも簡単に離婚があるけれども、
こうして苦難を乗り越えて育む愛もあるという・・・、
今時逆に新鮮な気がしてしまうドラマなんですね。
天涯孤独なジェットをここまで支えてきたのはある一つの思い・・・。
これがまた胸を突かれますねえ。
いってみればテキサス版の“風と共に去りぬ”だなあ。
この土地に根付いた人々の人生ドラマ。
レズリーが育った東部は緑があふれる美しい街なんです。
しかし、このテキサスはだだっ広いばかりで、見渡す限りの荒野。
緑はほとんどない。
私ならノイローゼになりそうだ・・・。
でも、彼女は強いんです。
意地悪な小姑にも屈しない。
でもその小姑があっけなく死んでしまったので、ちょっと悪い気がしてしまいました・・・。


ジェームズ・ディーンは、前2作では家族とうまくいかない孤独なティーンエイジャーと言う役どころで、
今度は違うと思ったのですが・・・。
結局同じなのかも知れません。
虚勢を張り自分の弱いところをつつみ隠して、
孤独に打ち震える純粋なコドモのような青年・・・。
やっぱり、ジェームズ・ディーンのイメージそのままだね・・・。


この作品、20代の俳優さんたちが、終盤50歳くらいを演じますよね。
うん。今でこそメイクの技術とかCGでどのようにでも出来そうな気がするけど、
これは1956年の作品でしょ。
それにしてはとても自然に年とってました。
昔のメイク技術もバカにしたものではないよ。
24歳で亡くなってしまったジェームズ・ディーンの将来の姿をかいま見ることが出来た・・・ということで、何だか不思議な感じです。
この撮影終了後に、自動車事故で亡くなったということなんですね。
1955年9月30日。
それは日本で「エデンの東」が公開される直前のことだったそうです。

でも、フィルムの中では永遠に生き続ける。
俳優さんはそういう意味でシアワセだと思います。
いや、もう“フィルム”もなさそうなんだけど・・・
はあ、じゃ、なんていえばいいんでしょ。
ディスク?・・・味気ない世の中だなあ・・・。

1956年/アメリカ/201分
監督:ジョージ・スティーブンス
原作:エドナ・ファーバー
出演:エリザベス・テイラー、ロック・ハドソン、ジェームズ・ディーン、デニス・ホッパー