二つの世界の違いの元。ビターな解答。
* * * * * * * *
亡くなった恋人を追悼するために、東尋坊を訪れたリョウ。
ふとその断崖から墜落してしまった
・・・のだけれど、気がつくと見慣れた金沢の街にいる。
家に帰ってみるとそこには見知らぬ女性が。
彼は、「姉」が生まれ、「自分」が生まれてこなかった、別の世界に入り込んでしまっていた。
こう言うと、かなりSFチックな作品に思えるのですが、
これはそのような設定が特異というだけで、
実は非常に厳しい自己認識に関わる青春のストーリーなのです。
何しろ、元々のリョウの世界は悲惨です。
好きだったノゾミは東尋坊で事故死。
両親の不和。
事故で植物状態だった兄はとうとう息を引き取ったところ。
ところが、リョウが迷い込んだ世界ではノゾミも兄も健在。
微妙に元の世界とは異なるこの世界。
どこが違うのか・・・まるで間違い探しの様なのだけれど
・・・そもそもその差異はどこから来るのか。
物語のラストでリョウはその答えを見つけるのですが、それは非常に苦い物なのです。
終章は 「昏(くら)い光」となっていまして、
私たちはそのラストに戸惑い、呆然とさせられるでしょう。
この著者の作品、そう多くは読んでいません。
一番始めに読んだのが「さよなら妖精」で、
これはむしろ著者の作品群では異色ですね。
その後に読んだのが「春季限定いちごタルト事件」。
この題名と表紙のかわいいイラストから予想した内容とは裏腹に、ビターな作品でした・・・。
なんというか、鋭利で冷たいナイフを首筋にあてがわれたみたいな、
ひりひりする感覚があります。
仲良しこよしとか正義とか、もちろん愛とか恋とかは置き去り。
ほとんどお気楽読書で通している私には、
やや苦手感が残っていまして、その続き、夏・秋は読んでいません。
この本では、やはりその感覚が呼び覚まされるのですが、
それにしても、読まされてしまいますね。
著者の才能をもろに感じますが、
あまり深入りしたくない・・・というのも正直なところです。
満足度★★★★☆
* * * * * * * *
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亡くなった恋人を追悼するために、東尋坊を訪れたリョウ。
ふとその断崖から墜落してしまった
・・・のだけれど、気がつくと見慣れた金沢の街にいる。
家に帰ってみるとそこには見知らぬ女性が。
彼は、「姉」が生まれ、「自分」が生まれてこなかった、別の世界に入り込んでしまっていた。
こう言うと、かなりSFチックな作品に思えるのですが、
これはそのような設定が特異というだけで、
実は非常に厳しい自己認識に関わる青春のストーリーなのです。
何しろ、元々のリョウの世界は悲惨です。
好きだったノゾミは東尋坊で事故死。
両親の不和。
事故で植物状態だった兄はとうとう息を引き取ったところ。
ところが、リョウが迷い込んだ世界ではノゾミも兄も健在。
微妙に元の世界とは異なるこの世界。
どこが違うのか・・・まるで間違い探しの様なのだけれど
・・・そもそもその差異はどこから来るのか。
物語のラストでリョウはその答えを見つけるのですが、それは非常に苦い物なのです。
終章は 「昏(くら)い光」となっていまして、
私たちはそのラストに戸惑い、呆然とさせられるでしょう。
この著者の作品、そう多くは読んでいません。
一番始めに読んだのが「さよなら妖精」で、
これはむしろ著者の作品群では異色ですね。
その後に読んだのが「春季限定いちごタルト事件」。
この題名と表紙のかわいいイラストから予想した内容とは裏腹に、ビターな作品でした・・・。
なんというか、鋭利で冷たいナイフを首筋にあてがわれたみたいな、
ひりひりする感覚があります。
仲良しこよしとか正義とか、もちろん愛とか恋とかは置き去り。
ほとんどお気楽読書で通している私には、
やや苦手感が残っていまして、その続き、夏・秋は読んでいません。
この本では、やはりその感覚が呼び覚まされるのですが、
それにしても、読まされてしまいますね。
著者の才能をもろに感じますが、
あまり深入りしたくない・・・というのも正直なところです。
満足度★★★★☆