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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「楽園」鈴木光司

2010年04月10日 | 本(その他)
ヒトを突き動かす「思い」のすごさ

楽園 (新潮文庫)
鈴木 光司
新潮社

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              * * * * * * * *
 
鈴木光司といえば「リング」、「らせん」などホラー作品を思い浮かべます。
けれど、この作品は氏のデビュー作にして日本ファンタジーノベル大賞優秀賞受賞作。
ちょっと意外な感じですが、
鈴木光司を語る上では外せない作品かと思います。


物語は3部構成。
まずは太古のユーラシア大陸、砂漠。
そこに住む愛し合う男女が引き裂かれてしまう、
プロローグとなるストーリーです。
片や、北へ北へと進みベーリング海峡を渡って北アメリカへ至る。
もう片方は、北の道は閉ざされたと知り、
かすかな望みを抱いて南へ南へと下り、
いつか再び彼女に相まみえようとする。


次には18世紀南太平洋に浮かぶ孤島。
この島には太古に南ルートからアメリカへ行こうとした男がたどり着いた形跡がある。
その末裔の人々が築いた平和な楽園のような島。
しかし時は大航海時代。
そこにたどり着いたヨーロッパ人。
そして不気味な地震。
私たちは、その島の人々からも忘れ去られていた一つの光景に、
息を呑むでしょう。


そして最後に現代。
アメリカ。
第一部で離ればなれとなった男女の、それぞれ遠い末裔である男女。
この二人は果たして無事に巡り会うことが出来るのか・・・?

時空を超えた愛の力。
お互いのDNAが呼び合う。
実に壮大なロマンスです。


このストーリーの描写は、かなり傍観的で淡々としています。
でもそれが逆にこのストーリーで語られる、
ヒトを突き動かす「思い」のすごさを浮かび上がらせているように思いました。
人間の歴史はこのような、
ヒトが何かを成し遂げようとする
「思い」・「情念」によって作り上げられてきたのでしょうね。
読後しばし、ぼーっとしてしまいます。
それほどのボリュームの本ではないのですが、
分厚い本を読み終えたような充足感があります!

満足度★★★★☆