行けども行けども袋小路の迷宮。そこに自ら進んで入り込み、人生を踏み外す男たち・・・。
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この映画は、1969年から始まった実際にあったアメリカの連続殺人事件を描いています。
犯人自らゾディアックと名のり、新聞社に暗号を送りつけて、犯行の声明とする。
この事件を追うトースキー刑事。
新聞記者のエイブリー。
そして新聞社のイラスト担当ロバート・グレイスミス。
映画の原作はこの、ロバート・グレイスミスの著作です。
彼らの必死の捜査と推理にもかかわらず、決め手が見えてこない。
犯人と思しき人物は何人か・・・。
しかし、決定的な証拠が出てこない。
状況証拠では逮捕できない。
手がかりを見つけても、いつも袋小路。
彼らは事件にのめりこむあまり、あるものは家庭をなくし、あるものは健康を損ない、また、あるものはキャリアをも失ってしまう。
この劇場型犯罪そのものよりも、進めども進めども事件は迷宮化、いたずらに時間ばかりが過ぎ、男たちは人生を持ち崩していく、そんなありさまの方にに、よほどリアリティを感じました。
正直、この作品は思っていたほどスリルに満ちたものではなく、やたら長くて、退屈ですらありました。
しかし、この長さこそ、彼らが追った事件のいたずらな長さを表現しているのではないかと、穿ちすぎかもしれませんが、思ったわけです。
結局現実の事件同様、犯人は藪の中。
一番怖いのは、今もゾディアックは一般の社会の中にひそんでいるということでしょうか。
収まりの悪い、不安の中に取り残されたような感じです。
イギリスの切り裂きジャック事件のように、後々まで、さまざまな人が推理を繰り広げる、そんな事件になるのかも知れません。
もし今なら、さまざまな科学捜査で、もっと真相に近づけたかも知れませんね。
すでに、人の記憶もうすれた過去の出来事、証拠といっても今となっては難しいのでしょう。この事件に限らず、結局未解決の事件がどれだけあるのか、と考えるとこれもまた怖いです。
このように興味深い点はありつつも、この映画に猟奇殺人事件、サイコキラー、ホラー、そのようなものを予想した方には、ちょっと期待はずれかも知れません。
2007年/アメリカ/157分
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ジェイク・ギレンホール、ロバート・ダウニー・Jr、マーク・ラファロ、アンソニー・エドワーズ
「ゾディアック」公式サイト