MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『超能力研究部の3人』

2014-12-11 00:03:44 | goo映画レビュー

原題:『超能力研究部の3人』
監督:山下敦弘
脚本:いまおかしんじ/向井康介
撮影:四宮秀俊
出演:秋元真夏/生田絵梨花/橋本奈々未/碓井将大/葉山奨之
2014年/日本

「ナチュラルな振る舞い」と「硬い演技」の狭間について

 3人のアイドルが主役を演じる「アイドル映画」といえば、森昌子、桜田淳子と山口百恵の「花の中三トリオ」が出演した『花の高2トリオ 初恋時代』(森永健次郎監督 1975年)を思い出す人が現在何人いるのか定かではないが、寧ろ逆に美空ひばり、江利チエミと雪村いづみの「三人娘」が共演した『ジャンケン娘』(杉江敏男監督 1955年)を思い出す人の方がまだ多いのかもしれない。観客はアイドルとしての彼女たちを観に行ったはずではあるが、ドキュメンタリー作品ではないのだから、もちろん彼女たちのキャラクターを尊重しながら「物語」は撮られたのである。
 ところが本作は、最初から秋元真夏、生田絵梨花、橋本奈々未のスタッフへの挨拶から始まり、物語ることを放棄しているように見える。いくらなんでもドキュメンタリー作品ではないはずだからと思いつつ、「物語」が始まるのを期待して待っているのであるが、例えば、撮影現場のシーンには絶えず撮影スタッフが映りこんでおり、スタッフが映りこんでいないシーンは何故か現場ではなく、舞台装置に囲まれたシーンであり、なかなか「本番」は始まらないのである。
 ここで印象に残ることと言えば、なかなか怒る演技ができないで監督に厳しい指導を受けている秋元真夏、ピアノの前で自分の演技のつまらなさを泣きながら吐露する生田絵梨花、大学の先輩の友人の男性と楽しくおしゃべりしている橋本奈々未たちのナチュラルな振る舞いであり、それは演技の硬さと対比されることになる。
 ところがこのような演出が突然変化する。休日に石器山周辺の海岸あたりをメイキング監督の森岡と一緒に楽しんだ3人は、役作りのためにセーラー服を借りてUFОを呼ぶ機械を台車に乗せて山に運びだした辺りからスタッフが映りこまない「本番」シーンになり、いよいよ宇宙人の森正太郎を帰す計画を実行に移すことになる。しかしここで注目されるべきなのは、「物語」そのものよりも3人が見せる身振りなのである。それまで私たち観客は3人の「ナチュラルな振る舞い」と「硬い演技」を交互に見させられていたはずである。本作でも問題にされていたが、アイドルとは何者なのかと問うのであるならば、この「ナチュラルな振る舞い」と「硬い演技」の間に位置するタレントであるはずで、おそらく本作は初めてアイドルの「真の姿」を捉えた傑作であり、人はそれを「超能力」と呼ぶのである。最も「最後まで何が何だかわからなかったね」と言う生田のセリフが3人の共通認識であったとは思うが。


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