Dylan Thomas - And Death Shall Have No Dominion
原題:『Happy End / Nowhere to Go But Up』
監督:アモス・コレック
脚本:アモス・コレック
撮影:ケン・ケルシュ
出演:オドレイ・トトゥ/ジャスティン・セロー/ジェニファー・ティリー
2003年/フランス
ディラン・トマスの詩の引用の仕方について
おそらく世界的に大ヒットした『アメリ』(ジャン=ピエール・ジュネ監督 2001年)に主演したオドレイ・トトゥの人気にあやかって製作された本作は、観るべきところが全くない残念な仕上がりになっているが、ウェールズの詩人であるディラン・トマス(Dylan Thomas)を有名にした詩「And death shall have no dominion」を知るきっかけになる作品としてだけ価値があると個人的には思う。以下、和訳してみる。
「And death shall have no dominion」 Dylan Thomas 日本語訳
(「だから死は支配権を失うはずだ」ディラン・トマス)
And death shall have no dominion.
Dead men naked they shall be one
With the man in the wind and the west moon;
When their bones are picked clean and the clean bones gone,
They shall have stars at elbow and foot;
Though they go mad they shall be sane,
Though they sink through the sea they shall rise again;
Though lovers be lost love shall not;
And death shall have no dominion.
(だから死は支配権を失うはずだ
裸にさせられた死者たちは
西の月で風の中にたたずむ男と一緒にされるべきである
彼らの骨は肉がきれいに削がれきれいな骨も削られ無くなっていく
死者たちは肘と足に星を輝かせているはず
死者たちは狂ってはいるが正気であるはず
死者たちは海に沈むが再び浮かんでくるはず
恋人を失うとしても愛を失うはずがない
だから死は支配権を失うはずだ)
And death shall have no dominion.
Under the windings of the sea
They lying long shall not die windily;
Twisting on racks when sinews give way,
Strapped to a wheel, yet they shall not break;
Faith in their hands shall snap in two
And the unicorn evils run them through;
Split all ends up they shan’t crack;
And death shall have no dominion.
(だから死は支配権を失うはずだ
渦巻く海のもとで
長い間横たわっていた者たちが渦巻によって死ぬはずがない
拷問台で体をよじると両足の腱が切れ
刑車に革紐でくくられても彼らがくじけることはありえない
彼らが手に入れた信念が真っ二つに折れ
邪悪な一角獣たちが彼らを突き刺す
全ての最期を分裂させろ、死者たちが裂けることはありえない
だから死は支配権を失うはずだ)
And death shall have no dominion.
No more may gulls cry at their ears
Or waves break loud on the seashores;
Where blew a flower may a flower no more
Lift its head to the blows of the rain;
Though they be mad and dead as nails,
Heads of the characters hammer through daisies;
Break in the sun till the sun breaks down,
And death shall have no dominion.
(だから死は支配権を失うはずだ
死者の耳元でカモメはもはや鳴くことはなく
浜辺に波濤が休みなく高鳴り打ち寄せることももはやない
花が風で飛び散ったところで
打ちつける雨に向かって頭をもたげる花はもはやない
気が狂って釘のように冷たく亡くなっても
それぞれ気骨を持った者たちが頭を雛菊が咲き乱れる墓を中から打ちつけて
太陽が沈むまで日差しの中で墓を壊す
だから死は支配権を失うはずなのだ)
ディラン・トマスの詩を引用したからといって『インターステラー』(クリストファー・ノーラン監督 2014年)のように必ず上手くいくわけではないのである。