MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『リアリティのダンス』

2014-12-29 00:04:16 | goo映画レビュー

原題:『La danza de la realidad
監督:アレハンドロ・ホドロフスキー
脚本:アレハンドロ・ホドロフスキー
撮影:ジャン=マリー・ドルージュ
出演:ブロンティス・ホドロフスキー/パメラ・フローレス/イェレミアス・ハースコヴィッツ
2013年/チリ・フランス

「リアリティ」という矛盾の中の「軽快」なダンスについて

 かつてサーカスの曲芸師で今は洋品店を営む主人公のハイメは、身体障碍者たちをゴミのように扱い、店にスターリンの写真を飾るほどの「マッチョ」な共産主義者で、男らしさを息子のアレハンドロに求めるあまり、例えば、顔を殴られてももっと強い殴打を要求させ、歯が折れても麻酔をせずに治療することを求めるのであるが、その余りの理不尽さに消防団の行進の最中に「マスコットボーイ」を務めていたアレハンドロは倒れてしまい、その「ひ弱さ」はハイメにまで及ぶ。
 名誉挽回のために、ハイメは誰もしたがらない、ペスト感染者の集団に水を届ける仕事を引き受けるのであるが、水を配っている最中に彼らは荷車を引っ張ってきたロバを殺して食べてしまう。這う這うの体で家に帰って来たハイメ自身もペストに感染してしまい、彼を隔離しようとする住人たちが家に押しかけてきた時、妻のサラの「聖水」によって奇跡的にハイメは回復する。
 「生まれ変わった」ハイメはカルロス・イバニェス大統領の暗殺を企てるのであるが、それは大統領を殺すのではなく、彼が大切にしている愛馬「ブケパロス」を殺すというものだった。しかし仲間が犬の仮装大会で大統領を銃殺しようとした際に、それを阻止したことから大統領に気に入られてしまい、愛馬の世話係として雇われることになるのであるが、その愛馬の世話をしていた男は自分の役目は終わったとしてハイメに墓穴を掘らせて死んでしまう。その愛馬に薬を飲ませ、馬の体調の急変を知って駆けつけたイバニェス大統領の背後から大統領を銃殺するつもりが、ハイメから銃を受け取ると大統領自ら馬を安楽死させてしまう。記憶を失ったハイメが記憶を取り戻すと見知らぬ女性がそばにいて、ハイメが記憶を取り戻したことを知ると自分の役割は終わったとして自殺してしまう。たまたま知り合った椅子作りの職人の手伝いを始めたハイメが一緒に大量の椅子を作り教会に運ぶとその椅子作りの職人は教会内で死んでしまい、彼の墓を作るためにハイメは帰国するために貰っていた給料を寄付してしまう。
 ここでは2度の「小便」に注目しておきたい。一度目はハイメが景気の良い話を垂れ流すテレビを便器に突っ込んで自ら小便をかけ、自身の威信を誇示するものとして機能するのであるが、二度目の、サラがハイメの顔にかける「聖水」によってハイメのキャラクターは正反対になる。しかし矛盾の中を生きなければならないことに変わりはなく、スターリン、イバニェス大統領、そしてハイメ自身の肖像を焼いたことでようやくハイメは「マッチョ」から解放されるのである。


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