MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『トワイライト ささらさや』

2014-12-15 00:06:12 | goo映画レビュー

原題:『トワイライト ささらさや』
監督:深川栄洋
脚本:深川栄洋/山室有紀子
撮影:安田光
出演:新垣結衣/大泉洋/中村蒼/福島リラ/富司純子/石橋凌/波乃久里子/藤田弓子
2014年/日本

一生懸命する意味について

 主人公のユウタロウの職業が落語家に変更されている理由は、物語の舞台となる佐々良の俯瞰がジオラマに見えるように、本作そのものがユウタロウが語る「噺」のように見せるためであろう。だから本作はユウタロウの妻のサヤの成長物語というよりも、妻と生まれたばかりの息子のユウスケを置いて亡くなってしまった自身の葛藤の物語となっている。それでは結果的に自分を捨てて家を出て行った父親と同じ身振りを演じてしまうことになるからである。
 ユウタロウを演じた大泉洋の演技は相変わらず素晴らしいが、中村蒼や小松政夫はともかく、「大泉洋」を演じるはめになってしまった富司純子と寺田心の熱演は評価されてしかるべきであろう。
 サヤが他の誰も笑っていないユウタロウの噺を「一生懸命にやっていたから」可笑しかったと語り、クライマックスにおいてユウタロウと父親の悲惨な「走馬灯」を同じように笑いながら見つめているサヤに、ユウタロウが何がおかしいのか訊ねた時、「一生懸命にやっていたから」と答えるサヤにユウタロウは返す言葉がなかった。実際に、富司純子と寺田心の熱演を観て私たちは笑わずにいられなかったのだから。
 「噺」が終わり深々と頭を下げたユウタロウの背後から光る「トワイライト」はフィルムが流れ終わった後のスクリーンのように見える。


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