MASQUERADE(マスカレード)

 こんな孤独なゲームをしている私たちは本当に幸せなの?

『ゴーン・ガール』

2014-12-19 00:04:27 | goo映画レビュー

原題:『Gone Girl』
監督:デヴィッド・フィンチャー
脚本:ギリアン・フリン
撮影:ジェフ・クローネンウェス
出演:ベン・アフレック/ロザムンド・パイク/ニール・パトリック・ハリス
2014年/アメリカ

 夫婦の強い絆という「悪夢」について

 主人公のニック・ダンを演じているベン・アフレックの演技が素晴らしい。妻のエイミー・エリオット・ダンが突如として行方不明になり、情報提供を求める記者会見を行った際に、離婚を言いだそうとしていた矢先の事件だったために、複雑な気持ちを抱えているニックは表情を暗く見せているのであるが、時折見せてしまうほんの2度だけの満面の笑みがマスコミで取り上げられて却って顰蹙を買ってしまう。
 そもそも最初に声をかけたのはニックの方だったために、文句は言えない立場ではあったとしても、エイミーは彼女の両親が創り出した「完璧なエイミー(Amazing Amy)」という子供向け絵本のイメージキャラクターの元となった女性で、いつの間にかエイミーは両親の期待に応えようと自らを「完璧なエイミー」に近づける努力をしていたのであるが、それはあくまでも「世間体」の良さを目指したものであり、ニックは彼女が心に抱く理想に切磋琢磨しながら自分を合わせることに疲れ切っており、その疲れ切った感じのベン・アフレックの演技が秀逸なのである。
 イギリスのロックバンドのザ・サイケデリック・ファーズのリチャード・バトラーが歌う「忘れじの面影(She)」のカバー版を特報予告に用いていることにもセンスを感じる。言うまでもなく「忘れじの面影」は『ノッティングヒルの恋人』(ロジャー・ミッシェル監督 1999年)のメインテーマとして有名であり、主人公を演じたヒュー・グラントとジュリア・ロバーツのような理想のカップルをイメージするからで、結果的にニックとエイミーが遥かに「理想を超えた」カップルになるという皮肉が効くのである。
 ネタバレは避けようと思うが、タイトルの「ゴーン・ガール」の「ゴーン(gone)」の意味はここでは「いなくなった」という意味と共に「狂った」という意味も含まれていると思う。


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