竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

夜遊びにいつも応えて水中花

2015-06-10 | 入選句
夜遊びにいつも応えて水中花 たけし



夜遊びも旧い記憶となった
理由にならない理由をつけて毎晩の午前さま
家人のみなが寝入っている明方に自宅へ忍び入る
そんな奔放な時代もなつかしい

水中花はいつも媚態で応えてくれた


入選 2015/7/7  朝日新聞 栃木俳壇 石倉夏生選
コメント

慟哭をあづけた憶え夏怒涛

2015-06-09 | 
慟哭をあづけた憶え夏怒涛 たけし



夏は青の時代のたくさんの傷がある
甘酢ぱい記憶 火傷のような記憶 塩辛い記憶
悲喜交々の記憶がおりかさなっている

夏の荒れた海をみると
しばし立ち止まって動けない
かの日が蘇る
定かではない記憶の中で
思い切り叫んでいた事だけは確かな記憶
コメント

青芒風をたばねて大背伸び

2015-06-08 | 
青芒風をたばねて大背伸び  たけし



<切っ先はまだ尖らせず青芒>は昨年のもの
青芒が成長してやがれは秋の月に欠かせないものとなる
冬の枯芒も青芒あればこそ
この青芒 今は風をたくさん飲み込んですくすくと育ちざかり
人の70~80年を芒は1年ごとに繰り返す
コメント

自由の日また自由の日鉢金魚

2015-06-07 | 
自由の日また自由の日鉢金魚 たけし



仕事を完全にリタイアして10年
自由の日に自由の日が続く日常だ
家族も気儘な暮らしぶりに不足もないようだ

気儘で受有はある意味でなんとも居心地が悪い
多忙やストレスのなかに突如現れる自由な時間
その醍醐味が全くない

いつでも良いのはいつでも好機ではないのだ
鉢の中の金魚とは思いたくはないのだが

これが余生というものらしい
コメント (1)

薄紙のなかに枇杷の実世を知らず

2015-06-06 | 
薄紙のなかに枇杷の実世を知らず たけし




いつから枇杷の実が高級な果物になったのだろう
幼少期には珍しく貴重なものでは無かったものだが
虫に毒されないための手間暇がコスチに上乗せされたのか

枇杷の実が薄紙に包まれているのを見ると
世の移り変わりを感じる

世間知らずは当方か
コメント

青嵐吾に始祖鳥の憶えかな

2015-06-05 | 
青嵐吾に始祖鳥の憶えかな たけし



青嵐は青い香りを含んだ激しい風
その風に向かうとなぜか懐かしく気持ちが良い

翼の名残か
両肩から腕にかけての細胞が疼くような気配を感じる

子供らは両手を広げて風に乗ろうと駆け出したりもする
そうだ細歩とは始祖鳥だったむかしを覚えているんだ
コメント

有頂天上るを止めぬ凌霄花

2015-06-04 | 
strong>有頂天上るを止めぬ凌霄花 たけし



のうぜんかつら は上へ上へと這い上がる
近くに大樹あらばその大樹を覆い尽くして伸びあがる
その頂にはまだ上を伺う新芽がある

やがて季節のうつろい
しの伸びすぎた我が身の始末は容易ならなく
無残なものだ

人の世界も同じ
有頂天の自覚がなかなかできない

*のうぜんかつら
字数が多く句作には不向きだったが
凌霄花 こんな素敵な呼称があったのに救われた
コメント (2)

沁みいるや法話の余韻青時雨

2015-06-03 | 
沁みいるや法話の余韻青時雨 たけし




座禅会のあと導師の法話を聞く
長い時間ではないのだがいつも心に深く沁みる

座禅のあいだ降って歌小雨が止んでいて
参道を下る

樹木からときおり雨の滴がおりてきて気持ちが良い
この雨を青時雨というそうだ
コメント

己が影信じ難くて羽抜鳥

2015-06-02 | 入選句
己が影信じ難くて羽抜鳥 たけし






鏡にうつる自身の顔
一瞥して目をそらす
日差しが強くなって小野が影がしっかりと道に映される
歩む影のなんとたどたどしいことよ
歩幅も小さく影は揺れてさへみえる

現実は見事に残酷だ


入選 2015/8/30 角川俳句27-9 名村早智選
コメント

両の手を翼に児等や春嵐

2015-06-01 | 
両の手を翼に児等や春嵐  たけし




もう初夏の趣だが昨日の句会での席代は「春嵐」
ほんの5分ですーっと浮かんだ句
そのまま投句
あまりにもわかりやすすぎて類想がたくさんありそう
決行天が入ってびっくりだった
コメント