明るいときに見えないものが暗闇では見える。

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【マイマイ新子と千年の魔法 (2009)】 

2010年10月02日 | 映画


■『マイマイ新子と千年の魔法』予告編(Youtube)



『サマー・ウォーズ』と同じマッドハウス制作作品。
地味すぎてひっそりと劇場上映されたのちに、ジワジワと口コミでその良さが広がっており大変気になってた作品。


昭和30年代の子どもたちの話ということと、タイトルにある「魔法」から、子供向けの"懐かしモノ+ファンタジー"だろうと思って観たのですが、そこに描かれていたのは単なるノスタルジーでも空想でもなく、紛れもない大人向けの"リアル"でした。


新子が遊ぶ空想の世界。用水路を駆け抜けるミドリの小次郎との追っかけっこ。千年前の平安の都に思いを馳せ「牛車が通るよ、さあよけて」と、新子の空想の世界の住人に貴伊子も加わっていく。意識の共有、無限に広がるイメージ。そこには"日常から飛躍し創造の中で遊ぶ子どもの姿" と "子ども同士が友だちになるまさにその瞬間" が驚くほどのリアルさで瑞々しく描かれています。

単なる懐かしい風景を並べたてた見せ物のノスタルジーではなく、大人になってからすっかり忘れてしまっていた当時の純真な感覚を彼ら子供たちと同じ目線でリアルに再体験させてくれます。心の奥底の記憶に触れ鮮やかに子供心がよみがえります。


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この作品は自分にもこんな自由の翼があったことを懐かしく誇らしく思い出させてくれるとともに、自らの可能性を再度感じさせてくれるだけの力があります。そして友達って理屈じゃなかったんだという当たり前のことも改めて提示してくれます。ボクはいつから人との付き合い方に条件や損得勘定を入れるようになってしまったのだろうか。したり顔で大人になったような気でいたことを恥ずかしくも思わされました。新子と貴伊子のデコピンを観て涙が出ました。


タイトルには「千年の魔法」とありますが、特に魔法やらトトロのような空想動物やらが出てくるわけではありません。平安の時代から千年の時を紡いで、現在まで伝承され引き継がれているひとつの悠久の時の流れを、子供たちの日常と照らし合わせながらサラリと描いています。

新子と辰吉は残酷な現実に立ち会い不穏な大人の世界を垣間見ます。そして自分たちは立派な大人になろうと誓いますが、そのためにももっとたくさん遊ぼう、もっとしっかり子供でいようと約束します。「明日の約束を返してっ!」という新子の叫びは、私たち大人に向けられた言葉。子供にしっかりとじっくりと子供でいさせてあげること。子供時代に培った遊びや空想力、友情の作り方、それら人としての礎が次の世代に受け継がれていく。急いで大人になんかしないでという心の叫びです。今の時代だからこそ深く厳しく響く言葉だと思います。


穂先をなでるつむじ風のようにさらさらと流れていくストーリー。昭和の時代の子供たちの姿が本当にイキイキと魅力的で、子供への人への愛が感じられます。延々と続く麦畑の風景もアニメの描ける一到達点と言える美しさです。


平安の都と現在の防府とのつながりに少々の分かりにくさがあり「ん?」と考えさせられた点がちょっとモッタイなかったかもと思いますが、そのへんはまあ子供たちの魅力に比べれば大した問題ではないです。


何も足さない何も引かないそして何にも媚びていない、いわゆる商業アニメの対極にあるような作品です。(まあ商業アニメも好きなんですけど^-^;)
文科省特選(推薦ではなく特選!)なので今後小学校の体育館や地域の図書館などで無料上映されたりしてたくさんの人の目に触れてくれると嬉しいです。


ホメすぎましたが、93分の短い作品です。ぜひ機会あればご覧ください。
きっとあなたの財産になります。


評価:★★★★★


エンドロールのコトリンゴさんの音楽がまた素晴らしいです。第二の矢野顕子さんみたいだなぁと思ったら、坂本龍一教授に見出された才能らしいです。



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2 コメント

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TBありがとうございました (かみぃ)
2010-11-19 21:47:27
自分は一年近く前の劇場公開時に観て、この映画の虜になってしまいました。
今なおこうしてこの映画を“発掘”してくださる方がいることを大変嬉しく思います(^^)
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Re: TBありがとうございました (takakuss)
2010-11-20 18:26:34
かみぃさん

コメントありがとうございます。
かみぃさんのブログをみて、ああ、ボクと同じことをこの作品から感じている人がいるなぁと大変うれしくなりました。
本当にこの作品は力があると思います。できれば変な期待をかけずになにげにこの作品に出会い、思わぬ感動に包まれてほしいので、TVで不意に放送してくれるとうれしいなと思っています。

ぜひまたお寄りくださいね。
ボクもそちら覗かせていただきます。
ありがとうございました。
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