予備知識ほぼなしで観る予定が、観賞直前に「クリス・エヴァンスなのに韓国映画らしいよ」→「え、マジか!?」という状況。ハリウッドの皮を被った韓流と言えば、かの迷作『D-WARS ディー・ウォーズ』を思い出し、一抹の不安を抱えて観賞開始。しかしオープニングクレジットで「ポン・ジュノ」って出たので少し安心しました。
で、第一声は「コレ、結構スゴいわ」。
開始当初、列車の中での階級社会という設定がかなり強引なため、よくある「SFなんだからそこは前提なので触れないし説明もされない」ということなのだろうと観始めました、ところが実はそこは作品のキモで、その不納得感を考えさせる余地のないスピード展開と、少しずつ布石が回収されていく感が絶妙。最終的に提示される“縮図”であったというオチは、力技でねじ伏せて納得させるのではなく、こんな強引な初期設定がここに落ちるのか!と、ありそうなオチながら見抜けなかった自分に「やられた!」という喜びを満喫させてくれました。
アクションに関しては、閉塞空間で素人が強引に前に進みながら戦うという設定なので、それ自体はウリではないのでしょうが、大きなカーフでの銃撃戦は映画史に残ってもいい名シーンです。さらに韓国映画にしてはゴア描写は控えめで、ストーリーの面白さの方に比重が置かれています。
あとちょっとヘンな空気感も魅力です。緊迫の場面のはずなのに、少しだけ「ズラ」す演出。それによりなんとも言えないただの作品ではない雰囲気を醸し出してます。ポン・ジュノ監督が『グエムル』でも魅せているあの雰囲気とはちょっと違くて、あえて言えばテリー・ギリアム感とかティム・バートン感をほんの少しだけ、という感じ。あえて力の抜けた演出が加えられることで、シリアスと空想のはざまに作品を置き続けます。真正面からとらえると重たすぎる状況を、痛快なエンターティンメントに魅せる演出っていうんでしょうか。こういうのって裏目に出る可能性もあって非常に難しいですが、本作ではみごと成功しています。
クリス・エヴァンス、エド・ハリス、ティルダ・スウィントン、ジョン・ハート、(もちろんソン・ガンホも)と豪華俳優陣にも驚きます。ポン・ジュノの名前でここまで集められるのですね。完全に世界監督です。それに彼は、ほんっとなんでも撮れる人なのだと関心します。こないだ『母なる証明』を見たばかりですので同じ監督とはとても思えない。
もし「韓国映画だから」と躊躇している方いたらぜひご覧あれ。ただのハリウッド模倣ではない、アジアの新しい風を感じられます。
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