■『東のエデン 劇場版Ⅰ・Ⅱ』予告編(Youtube)
【ネタバレありです】
ボクのメインフィールドが聖地 豊洲ユナイテッド・シネマということもありTVに小説にと追っかけてきた本作。にもかかわらず劇場版二作は結局豊洲では観られずDVDでの鑑賞となったが、TVから数えると一年半越しでやっとすべてを鑑賞することができた。
神山監督ファンには申し訳ないのだけど、まずこれエンターティメントとしては大きく失敗作なのだろうなぁと思う。本作の本来の魅力は、選ばれた12人の個性的なキャラクター達がこの謎のセレソンゲームの中で100億円とジュイスを使っていかに駆け引きし合うかにあったはず。あわせてエデンというセカイカメラを発展させたようなWeb3.0的システムを利用することで創造される新しいコミュニティにより、日本をどう導いていくかという点にも観客は期待したはずである。TV版ではそれなりに満足の行くラストを迎えたといえるが、劇場版といえば全くといっていいほどこの2点が機能していない。滝沢と物部の間にセレソンゲームは全く展開されず、ジミーすぎる密室での会話劇で終わる。しかもゲーム自体、亜東才蔵の一存で「はい終了ね」と乱暴すぎる結末を迎え、エデンシステムに至ってはなんら活躍しない始末。劇場版というのは通常、映像やら展開やらにパワーアップを期待するものだが、TVを下回るジミーさですべてが終焉を迎える。これではあちこちの酷評されている理由も分かる気がする。
ただこれ、あくまでもエンターテイメント活劇としての側面から観た場合の評価だと思う。
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一方この映画を、本作の主題である「閉塞感に覆われた日本という国の立て直し方」に対する問題提起と討論としての場、として捉えれば大変面白く拝見させてもらうことができた。
「今の日本を100億円でどうにかしてみれ」という問いかけ(命令?)に対し、真面目に最後まで取り組んだのは物部と滝沢のみ。物部は政府のリストラと内務省復活による富国強兵という分かりやすい右派思考。滝沢はと言えばもっと個人の力を信じてればなんとかなるよ、というものスゴク楽天主義な考え。一億人のエゴイスト集団を「国民」と記号化する物部に対し、個人個人を大切にしようという左派的希望的観測な滝沢。ただ今の日本にはお金を払ってサービスを享受し、声高に権利を主張する人間しかいないので、お金をもらうこと(サービスを提供する側)が楽しいと思える国にすればいいというのが滝沢の主張だった。で、その行動に答えは出ずに作品は終わるのだけど、これってとっても滝沢らしい終わり方だったと思うし、スゴく共感できる。
亜東才蔵のあのゲームの終え方は全くのブン投げにも見える。ただ最後タクシー内での平澤への告白を咀嚼し直せば納得できるのではないか。ガムシャラにがんばって日本を創り上げてきた"上がりを決め込んだ世代"の代表である彼が、どう見ても頼りなげな若い世代にこの国を任せてもよかろうと思ったのだ。もちろんソリューションも欲しかったのだと思う。しかしMr.OUTSIDEはが最後に選んだ答えはこの国の「希望」だったのだ。
おネエに向かって滝沢が言う「なんとかなんじゃない?」っていう言葉。これ自分を信じて、自分に責任を持っている人でないと言えない言葉なんだよね。皆がこの日本の将来と若い世代を信じてみようという気持ちになったこと、これが本作の本当の魅力に違いない。
。。。と、このように二つの相反する点が共存しているところに、この映画の評価が真っ二つにわかれる理由がありそう。まぁ本編で東京にミサイルぶち込んだり、裸の二万人のニートがコンテナで運ばれてきたりとハデなことやっちゃってるだけに、劇場版はあまりにもジミー。アニメであれば本来「絵」として表現されるべきことを全部キャラに語らせてみたり、ジュイスの受理した「この国の王様」さえもリセットされてしまったことには確かに異議申し立てもしたい。まぁエンターテイメントとの共存を果たしてこその名作でしょうから、結果的には失敗なのかもしれず。
ただ団塊世代からのバトンや全共闘運動の意味、お金とは何か、ニートの存在意義、この時代ITの果たす役割、自分を信じることとは、などと内面に広げれば広げるほど大変楽しめる映画だったと思う。たぶんTVで十分完結しているものの、語り切れなかった思いをそのまま滝沢にしゃべらせてしまったのだろう。これが滝沢から、というか監督からボクらのような世代へのメッセージであって『東のエデン』とはつまりはこういう作品だったのだ。
「ノブレス・オブリージュ。
この作品からちょっとの勇気を得られたたくさんの人たちがこの国の救世主たらんことを。」
評価:★★★★☆
まあミサイル撃てちゃうぐらいだからなんでもありなんでしょうが、日本中の携帯にIPフォンアプリを強制ダウンロードって(^_^;
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ただ私は、本作を失敗作か成功作かに分けるのは面倒なので、単に傑作と呼んでいます
これほど時代に即した作品も珍しいかな、と感じています。
確かに「傑作」ですね。
アニメという架空の世界を描きながら、今の時代を赤裸々に映しだした作品として大変面白く拝見できましたね。