高木陽介「奔馳不息(ほんちふそく)」

衆議院議員 高木陽介のブログ

今こそ政治の劣化を止めるべき

2012-04-24 13:24:59 | 活動徒然
 「『真摯(しんし)』という“言葉”が怒っているんじゃないの?」

 2閣僚の問責決議案が可決されたテレビニュースを見ながら妻が言った。

 問責を受けた前田国交相が記者団に「結果を真摯に受け止め、大臣としての職責を果たしていく」述べたからだ。真摯に受け止めるならば、辞任をするのが筋ではないか。

 もう1人の問責大臣、田中防衛相も「いろいろと(野党から)指摘があった。肝に銘じて、防衛相の責任を果たしていきたい」とコメント。野党は大臣として不適格と決議したのだから、辞任しないで「肝に銘じる」ことは矛盾してしまう。

 公明党は問責2閣僚が辞めない場合、審議拒否は2閣僚の関係委員会に限定している。このことに自民党の脇参院国対委員長は「邪論としかいいようがない。大いに反省を求めたい」と批判。「邪論」とは乱暴な表現だ。自分たちの思惑通りにならないので、過激な言葉で批判したようだが、国民はどう判断するか。脇氏の言葉の方が“邪論”と思う人が多いのではないだろうか。

 これまで何度も「言葉」についてこのコラムで書いてきた。特に政権交代して2年8カ月。鳩山、菅首相の言葉と行動の乖(かい)離はひどかった。それが永田町全体に蔓延してしまったのか。言葉の軽さ、荒れた使い方、不適切な表現・・・。政治家の発する一言一言が国民の政治不信を増幅させている。私自身も政治家の一人として心していかねばならない。

 なぜそうなってしまったのか。理由はいろいろあるかもしれない。自らの反省も込めていえば、政治が場当たり的に対応しているからだ。次の選挙に勝つことを意識し、この国をどうしていくのか、理想やビジョンを示せない。自分が中心になっている。そして「何のためと」いうことが希薄になっている気がする。

 だが、あえていえば、そんな政治家を選択したのも国民ということを忘れてはならない。国民の選択眼も求められている。今、既存政党に不満を抱く人が増えている。2005年の郵政選挙では「小泉チルドレン」、09年の政権交代選挙は「小沢チルドレン」が生まれた。そして、次は「橋下(大阪市長)チルドレン」が誕生するのか。

 国民の判断材料の多くはマスメディアから得ている。視聴率が取れる、面白いといった「劇場型」の報道ばかりが先行すると、政治の漂流は深刻になってくる。ジャーナリズムは事実の報道と共に、多角的な検証が必要だ。表層的ではない国民の判断材料を提供することが、民主主義を守ることになるはずだ。

 毎日新聞の先輩でもある政治ジャーナリストの岩見隆夫氏の近著「政治家だけに日本をまかせるな」に「政治家たちは<日本のあす>のために決死の構えで格闘しているか」というくだりがあった。政治家も私心を捨てて、どこまで行動できるか。今こそ政治の劣化をストップさせなければいけない。

 05年10月からスタートしたこのコラムも今回をもって終了となります。ご愛読ありがとうございました。

増税より防災こそ待ったなし

2012-04-10 12:16:21 | 活動徒然
 「認識を共有させていただきました」
 
 握手を求めてきた野田首相が、私に向って話した。
 
 衆議院の第一委員室。先月30日、予算委員会で暫定予算案の採決直後のことだった。その日、予算委で私は首都直下地震について質問した。

 政府の中央防災会議によると、首都直下地震の発生確率は30年以内に70%。これは30年後に発生するのではなく、今起きてもおかしくない数字だ。しかも、先月、文科省の研究チームの調査で、震源の深さが従来の想定より10㌔浅いことが分かった。この調査で震度6強だった最大震度が震度7の所もあるという。
 
 質問の冒頭、政治の究極の目的は国民の命をいざという時に守ることではないかと尋ねた。野田首相も「一番大事なのは、高木委員御指摘のとおり、国民の命を守ること」と答弁した。

 さらに、「きょうは追及ではなく、共有の認識を持っていただき、どうするかという、スタートにしたい」と述べ、質問に入っていった。
 
 まず耐震化の問題。首都圏1都3県で、1981年の建築基準法改正以前の住宅は370万戸ある。そのうち耐震改修された建物は2006年からの5年間でわずか1万7千戸。阪神大震災の時は震度7の揺れで住宅の多くが潰れてしまった。
 
 首都直下地震の18パターンの震源域のうち、東京湾北部地震(最大震度6強)が最も被害が大きい。全壊発生時間が夜の場合、数十万人が全壊家屋に生き埋めになることも考えられる。ところが、救助にあたる消防、警察、自衛隊が48時間以内で出動できる人数は約7万人(ただし、救助部隊も被災している可能性がある)。これはもう、自ら脱出するか、地域の人に救出してもらうほかない。
 
 今、電車に乗って、このコラムを読んでる皆さんも大変。朝7時台のラッシュ時に首都圏のJR、私鉄、地下鉄に乗っている人は約300万人。阪神大震災は明け方の発生で、あまり電車は動いていなかったが、震度7のエリアの電車は14本中13本が脱線。震度6強のエリアは13本中3本が脱線した。もし、時速100㌔の電車がカーブの所で脱線したら、JR福知山線の事故のようになってしまう。
 
 大丈夫なのかと思うことはまだまだある。東日本大震災の時は「想定外」という言葉がよく使われていた。首都直下地震に対する問題意識を「共有」した野田首相に、消費税にのめり込むだけでなく、「防災も待ったなし」と申し上げたい。