高木陽介「奔馳不息(ほんちふそく)」

衆議院議員 高木陽介のブログ

首相が国民生活に増税シュート

2010-06-23 10:26:40 | 活動徒然
 参院選が明日24日に公示される。だが、世の中は選挙よりもサッカーW杯の方が関心が高い。

 民放各局の朝の情報番組。昨年の衆院選や3年前の参院選は公示前から各党横並びの討論が活発に行われた。ところが、14日のカメルーン戦に日本が勝利すると、情報番組の多くはW杯に時間を割き始めた。参院選の話題はごくわずかだ。

 日本が決勝トーナメントに進出できるかの大一番のデンマーク戦が公示日翌日(25日)の午前3時半にキックオフ。各党党首の第一声のニュースも、デンマーク戦絡みの話題にさらわれそうだ。

 しかし、今回の参院選は菅首相が「消費税10%」に言及し、「消費税」が最大の争点になりつつある。しかし、菅首相の発言や民主党幹部の説明を聞くにつけ、少々乱暴な論理展開と感じる人も多いのではないか。連立を組む国民新党の亀井代表は「断じて賛成しない」と早々に反対を表明。民主党内からも反発が渦巻いている。

 17日の記者会見。菅首相は自民党が提示した消費税10%を「参考にする」と発言したが、同日発表の民主党マニフェストは、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」としか書かれていないのだ。マニフェストに表記せず、「発言」で重大なことを表明するのは、普天間基地問題で鳩山前首相が失敗したのと同じ手法だ。

 また、昨年の衆院選で民主党はマニフェストの財源は総予算を組み替えれば捻出できるので、消費税増税は4年間必要ないと訴えていた。しかし今回の消費税増税の〝公約〟は「あのマニフェストは間違っていました」という意味に他ならない。

 そもそもなぜ「10%」なのか。根拠がはっきりしないのも問題。財政再建のための借金返済なのか。バラマキ・マニフェストのための財源なのか。菅首相は「強い社会保障」とも言った。しかし、その具体像は示されていない。年金、介護、医療といった社会保障の具体的ビジョンと、そのために必要な金額はどれくらいなのか。さらにムダを削って、新たに国民に負担をお願いするのはいくらなのか。そこで初めて税率の話が出てくるのではないか。

 W杯の行方も気になるところだが、今回の参院選は「国民生活」に強烈なシュートが飛んできたようなものだ。

 雰囲気でなく論理的な各党の議論と、冷静な国民の判断が求められる。

民主「V字回復」に待った!

2010-06-08 13:20:18 | 活動徒然
 「世論」いや正確に言えば「世論調査」は怖い。

 発足当初は7~8割の内閣支持率を誇った鳩山内閣だが、わずか8カ月の間で支持率は急落。退陣直前は20%前後だった。

 先週、鳩山首相の後継として菅直人氏が新首相に指名された。直後の報道機関による世論調査は目を見張るようなV字回復となった。

 組閣前の調査のため、内閣支持率と一概に比較はできないが、「菅首相に期待する」という調査で、朝日59%▽毎日63%▽産経とFNN(フジニュースネットワーク)が57.3%▽共同通信57.6%―と、民主党にとって首相交代が「吉」と出た。

 だが、ちょっと待てよと思う。

 鳩山首相の退陣の弁によると、辞任理由は2つ。「普天間」と「政治とカネ」だ。首相は交代したが、この2つの問題はまだ解決していない。

 まず、「普天間」問題。迷走に迷走を続け、最終的に移設先を沖縄県内の辺野古に決定したが、その閣議決定に副首相兼財務相として菅首相は署名をしている。もちろん「最低でも県外」「学べば学ぶほど」といった鳩山首相の軽薄な言葉をはじめとする無責任な対応が問題だったが、閣内ナンバー2としての8カ月間の菅氏の責任はどうなってしまったのか。

 「政治とカネ」も小沢幹事長を道連れにしたダブル辞任で、けじめをつけたつもりかもしれないが、鳩山、小沢両氏から「政治とカネ」への説明は不十分なままだ。

 鳩山首相は辞任を表明した民主党の両院議員総会で、「クリーンな民主党」を訴えた。それならば小沢氏の証人喚問を民主党も堂々と賛成をしなければ、「クリーンな民主党」発言も、パフォーマンスに終ってしまう。

 それ以外にも「高速道路無料化」「ガソリン税の暫定税率廃止」などのマニフェスト違反。口蹄疫にみられる危機管理の欠如に加え、郵政法案など強行採決連発の国会運営・・・。鳩山首相の責任は重たいが、同時に政権交代を果たした民主党の「8カ月」も問われていたはずだ。

 だが、それらの総括もないままに党代表選、続いて新首相が誕生した。報道機関も鳩山首相が辞めるまでは政権課題を指摘していたが、新首相誕生で、そうした記事は消えてしまい、世論調査が実施されている。

 民主主義は事実を知るところから始まる。それを伝えるのはジャーナリズムの使命だ。

 せめて、国会では予算委員会などの集中審議の場を設け、新首相と野党の論戦が不可欠なのは言うまでもない。