高木陽介「奔馳不息(ほんちふそく)」

衆議院議員 高木陽介のブログ

小沢氏の権力ゲーム もう終息させるべき

2011-08-30 12:43:52 | 活動徒然
 また新しい首相の誕生だ。

 小泉首相の退陣以降、5年で6人目となる。前半の3人は自公政権。後半の3人は民主党政権の交代となる。前半の3人は、連立を組んでいた公明党も大きな責任を負っている。

 この首相が1年で交代する状況について、日本の政治の劣化を指摘する論評は多い。一方で日本は課題が山積している。東日本大震災の復興、原発事故の対応と今後のエネルギー政策、円高とデフレ経済、社会保障と財政の再建…。今の日本は政権与党である民主党内の争いをしている余裕はない。ここは新たに首相に就任する野田民主党代表がどのような対応するのか注目していきたい。

 今回の民主党の代表選は5人の候補者の中から、得票1位、2位の海江田氏と野田氏の決選投票に。海江田氏は1回目の投票から34票上積みしたのに、野田氏は1回目と比べ113票増となった。2位以下の連合が1位を破ったという構図だが、2回目に野田氏に投票した議員の心理は「小沢傀儡」に対する反発ではないか。要は小沢元代表が敗れたということだろう。

 昨年秋の代表選は「親小沢」対「脱小沢」の戦いで、小沢氏本人が出馬して敗れた。その後、政治資金規正法違反事件で強制起訴された小沢氏は党員資格も停止され。今回も投票権のない小沢氏の動向が注目されるというおかしな代表選だった。

 短期間の代表選で、マスコミも政策よりも小沢グループの動向をかなりの分量で報道していた。

 昨年の秋に続いて敗れた小沢Gだが、新しい首相にどう対処していくのか。20年にわたる小沢氏の権力ゲームは、このあたりで終息させたらどうだろうか。

 一方、野田氏は、この2年間の政権運営について、明確に総括をしてスタートを切らなければ、ねじれ国会で野党との協議も進めることは難しい。

 政権交代してからの民主党をみていると、マニフェストにしばられて、場あたり的な対応が目立っていた。

 3党合意でようやくマニフェスト見直しに言及したが、まだ民主党内には火種が残っているように思える。特に選挙基盤の弱い議員ほど、マニフェストの見直しは次の選挙の当落に直結する。

 だが、できないものをできると約束して政権をとったのだから、責任はとらねばならない。新首相はその責任を果たす意味でも、復興の第3次補正予算を仕上げたら国民に信を問わねばならない。




「経済危機」より自分の事 遅すぎた菅退陣の流れ

2011-08-18 08:58:58 | 活動徒然
 経済が危ない。それも日本だけでなく世界全体が揺れはじめている。

 米国の格付け会社、スタンダード&プアーズ(S&P)による米国債の格下げが発表されたのが5日。米国の景気への不安と共に、欧州の財政不安の深刻化が連動し、世界の株式市場で株価が急落した。しかも、日本にとっては円高(というよりドル安)の加速が、輸出産業に打撃を与えている。

 本来であれば政府がこの経済危機に対し速やかに対応策を打ち出さなければならないのだが、菅首相は自らの進退に汲々としていて、同時株安に全く関心がないようだ。

 そういえば、今年1月のこと。S&Pが日本国債の格付けを「ダブルA」から「ダブルAマイナス」に格下げしたとき、記者からの質問に「いま初めて聞いた。ちょっとそういうことには疎いので、また改めてにさせてほしい」と菅首相は述べた。首相就任の前には財務相を務めていたにもかかわらず、「疎いので」という発言にあきれた国民も多かったはずだ。

 今回の株安を3年前のリーマン・ショック以上の金融危機と指摘する人もいる。

 当時の日本は福田首相が辞任し、麻生内閣がスタートする時だった。内閣発足と共に衆院解散・総選挙を模索していた自公政権だったが、麻生首相は金融危機を乗り切るために解散を先送り、景気対策優先の政権運営を行った。就任直後に2008年度第1次補正予算を成立させると、09年の年明けに第2次補正予算、09年度本予算を次々と仕上げ、同年6月には09年度1次補正予算と、9カ月で4度の経済対策を打ち続けた。

 「漢字が読めない」などと批判されたトップであったが、経済対策についてはしっかりと手を打ち、日本経済はリーマンショックから脱出しつつあった。

 麻生首相が解散先送りを決めた時、連立を組んでいた公明党の太田代表(当時)が、2度にわたって会談を行い、解散を促した。だが、麻生首相は頑として首をタテに振らなかった。

 麻生首相は就任直後、ワシントンでの金融サミット、リマでのAPEC首脳会議に相次いで出席。各国首相と金融危機について会談を重ねた。「胡錦濤(中国国家主席)は私の言うことにメモをとっていた」「サルコジ(仏大統領)は別れ際に振り返って『日本が頼りだ』と言うんだ」と太田代表に語り、今は選挙よりも経済対策を優先するべきだと主張した。

 結果的には解散のタイミングを逸し、(自公からみれば)政権交代という敗北を喫したが、一国の首相は経済に対しても、重い責任を背負っている。

 麻生政権の時の衆院の予算委員会で、野党の質問者として立った菅首相は「まさに麻生政権の存在そのものが政治空白ではないですか」と追及した。

 ようやく退陣の流れができた菅首相だが、その言葉を首相自身がもっと早く自覚しなければならなかった。

国民の声が届かない日本の首相官邸

2011-08-02 14:04:04 | 活動徒然
 中国の高速鉄道事故のニュースをみていると、「中国もだいぶ変わったな」と思う。中国政府のコントロールがきかず、民衆が独自の情報を得るようになってきた。

 先月23日の事故発生以来、中国鉄道省の対応はあまりにもおそまつだった。鉄道省は当初、事故原因について落雷によるシステム故障が起きたとして「天災」と主張。しかし、調査が進むと信号および管制システムに問題があったことが明らかになった。

 さらに、衝突した先頭車両の一部を救助が終わっていないのに、重機で現場に掘った穴に埋めてしまった。日本の鉄道事故では考えられない。その後、車両から生命反応はないとして救助活動を打ち切ってから、2歳の女児が発見されるという展開に。

 中国国内のネット上では、車両を埋めたのは「事故原因を隠蔽するためではないか」といった批判があふれた。

 事故から一週間。国民の批判の矛先が鉄道省から政権中枢に向かうことを恐れたのか、温家宝首相が事故現場に足を運んだ。記者会見に答えた温首相は、原因究明と調査結果の公表を約束せざるをえなかった。

 中国政府に対する国民の批判は昔からあった。1989年6月の民主化を求めた天安門事件。人民解放軍の戦車を1人の若者が走行を阻止しようとした映像を見た人も多いのではないか。

 当時、毎日新聞の社会部記者だった私は、日本に学んでいた中国人留学生を取材。天安門事件に呼応し、留学生たちは民主化を求め東京の中国大使館などでデモなどの活動を行っていた。だが、中国国内では言論が封じられ、民主化運動は次第に沈静化していった。

 日本での中国人留学生たちはビザが切れて中国に帰国すると、反政府活動をしていたということで、逮捕される可能性があった。命の危険さえある留学生のビザを延長し、日本政府は保護するべきだとの原稿を書いたこともあった。

20年前の中国と比べると、今はまさにネットの時代。中国政府の都合の悪い情報も一気に広がる。特に今回の事故に関する政府への批判の原動力は中国版ツイッター「微博(ウェイボ)」。なんと日本の人口より多い1億7000万人が利用しているという。中国政府がどんなに規制をしても、情報の波は止めることができない。

 どんなに強固な権力も、その基盤となる民衆がそっぽを向いたら成り立たなくなる。今回の鉄道事故は、昔の中国だったら押さえ込んでいたかもしれない。

 一方、わが国の最高権力者は民衆から既に見放されているにもかかわらず、その職にしがみついている。首相官邸には国民の声が届くシステムが全く機能していないようだ。