高木陽介「奔馳不息(ほんちふそく)」

衆議院議員 高木陽介のブログ

施行された「国民投票法」使えない〝異常〟状態の立法府

2010-05-25 16:59:05 | 活動徒然
「悪法も法なり」

 ソクラテスの言葉といわれる。現代にあって、「悪法」でもないのに、施行されたにもかかわらず、使うことの出来ない法律がある。18日に施行された国民投票法だ。

 憲法改正の手続きを定めた国民投票法が成立したのは2007年。施行まで3年で準備しなければならなかった課題が解決しないまま時が過ぎてしまった。

 まず、憲法改正原案を審議する場として衆参両院に設けられた憲法審査会がスタートできない。参院はその規定すら作らず、規定のある衆院でも委員が選ばれていないのだ。
 
 また、国民投票法は18歳以上に投票権を認めた。同法の施行までに、公職選挙法や民法の成年年齢の「20歳」を改めるよう「必要な法制上の措置を講ずる」と国民投票法の付則で定めた。さらに、法相の諮問機関の法制審議会も昨年7月、成年年齢の18歳引き下げの報告書をまとめた。だが、公職選挙法も民法も改正論議がまったく進んでいない。

 憲法審査会が〝開店休業〟状態になっているのは、民主党の消極姿勢と、連立与党の社民党の反対によるところが大きい。

 鳩山首相は05年に「新憲法試案」を発表。小沢幹事長も自由党時代、「日本国憲法改正試案」(1999年)を発表している。ところが民主党内には「改憲」「護憲」の両派が混在し、昨年9月には党憲法調査会が廃止され、憲法論議を封印してしまった。

 一方、護憲を掲げる社民党だが、議論さえしないというのはいかがなものか。

 憲法改正は両議院の3分の2の賛成で国会が発議できるが、最終的には国民投票で決める。議論を避けるということは、最終決定者の国民を信頼していないか、自らの主張を国民に納得させることができないと言っているようなものだ。

 夏の参院選が近づき、国会は政局がらみの話題になりがちだ。しかし、選挙とは関係なく「国のかたち」をどうするか、腰を据えて論議するのも国会の仕事ではないか。

 立法府で作った法律を立法府が〝異常〟な状態にしたままでは、今後どんなに良い「法」を作っても「悪法」よりも劣ってしまう。

小選挙区制の「限界」

2010-05-11 13:08:07 | 活動徒然
 「いったい、誰が勝ったのか」

 6日の英国総選挙(定数650)。結果が判明後、BBC放送の司会者が冒頭の言葉を漏らした。

 英国総選挙は与党・労働党が大きく議席を減らして258の第2党に。13年ぶり政権交代を目指した保守党が306議席と第1党の座を獲得したものの、過半数を制することができなかった。どの政党も過半数がとれない「ハングパーラメント(宙づり議会)」となったのは36年ぶりのことだという。

 英国総選挙については、各新聞が様々な分析をしているが、「英国民は労働党に幻滅したが、保守党を信じ切れない状態でもあった」(読売新聞8日付朝刊)という解説は、「わが国の政治状況にもあてはまる」と感じる人も多いのではないか。

 翻って日本の政界は―。昨夏の衆院選で政権交代をした民主党。普天間基地移設問題での迷走や、けじめをつけない「政治とカネ」の問題。さらに高速道路料金の政府と党の意見対立など、多くの国民は今の政権の統治能力に疑いの目を向けている。一方、野党第一党の自民党は離党者が続出し、政権奪還への気概が伝わってこない。マスコミ各社の世論調査の結果がそれを物語っている。

 2大政党制は、政権党がダメな場合、野党がそれに代わって政権を担っていく。新たに担った政権党がダメなら再び交代するはずだが、下野した政党が立ち直れていない場合、国民はどの政党を選べばよいのか。完全小選挙区と2大政党制本家の英国。今回の総選挙結果が、その制度の「限界」を印象づけた。

 小選挙区制では最高得票の1人しか当選しないため死票が多く、英国でも「不公平さ」が指摘されていた。日本でも小選挙区の場合、大半の当選者は選挙区の有権者の2割から3割の得票率で当選。残る7、8割の有権者の民意は議会に反映されないことになる。

 小選挙区制度の導入を決めた細川連立内閣。1993年8月、細川首相は衆院本会議で政界再編後の形として「穏健な多党制」と表現。1年生議員として議場にいた私は、細川首相の言葉が忘れられない。夏の参院選を前に新党が次々と誕生し、民主、自民に飽き足らない有権者を意識して「第3極」争いが過熱している。

 先日、ベテランの政治ジャーナリストと対談した。「小選挙区制によって政治が小さくなった」という言葉が胸に突き刺さった。選挙制度を見直さねばならない。