高木陽介「奔馳不息(ほんちふそく)」

衆議院議員 高木陽介のブログ

チリ鉱山事故に見習うべきリーダー像

2010-10-19 14:12:35 | 活動徒然
 「奇跡の生還」に世界中の人々が感動した。暗い世相の中で久しぶりの明るいニュースだった。

 チリのサンホセ鉱山の落盤事故。

 国会図書館で調べてみると、事故発生時の新聞記事は見つからなかった。地球の裏側で起きた落盤事故について、
わが国メディアはあまり関心がなかった。

 ところが、事故から17日後、地下700㍍で33人全員が無事でいることが確認されると、新聞、テレビが報道しはじめた。

 それから約2ヶ月近く、33人の救出作戦を通し、数多くのドラマが伝えられた。

 閉じ込められている間に地上では娘が誕生した29歳の作業員。安否を気づかう地上の家族たちの中で、妻と愛人が鉢合わせするハプニングも。

 生き埋めになった69日間について早くも映画化の動きも出ているという。「奇跡の生還」の映画化といえば「アポロ13」を思い出す。
主演・ラベル船長のトム・ハンクス。地上の主席管制官ジーン・クランツはエド・ハリスが好演した(アカデミー助演男優賞にノミネート)。絶対助かると分かっていてもハラハラドキドキした。

 「アポロ13」でもリーダーの決断が重要だった。今回の救出劇で多くのメディアが大きく取り上げたのは、32人の作業員を統率した
ルイス・ウルスアさん(54)だった。

 事故直後、20日分の食料を確保しようと、小さじ2杯のツナなどを48時間に1度配分することを決め、17日後の生存確認まで全員で耐えた。パニックに陥りがちなメンバーに「希望を失うな」と励ましたウルスアさんは、救出の時も「33番目」を選択した。

 テレビのコメンテーターも絶賛したリーダー。どうしてもわが国の〝リーダー〟の菅首相と比較してしまう。

 臨時国会での4日間にわたる衆参の予算委員会が終った。菅首相より仙谷由人官房長官の方が目立った予算委だった。

「希望を失うな」―。

 リーダーたる首相は国民に「希望」を指し示す責任がある。だが、菅首相の答弁には、その気迫が感じられなかった。

 そういえば、事故現場の近くの家族が待つテント村は「希望」を意味する「エスペランサ・キャンプ」といわれた。
また、作業員の妻が出産した女児も「エスペランサ」と命名された。

 首相はどのような「希望」を描いているのだろうか。このままだと、国民は地上の陽光を浴びることができなくなる。


首相は当事者意識が欠如

2010-10-05 13:45:14 | 活動徒然
「もうこの国はどうなっちゃうのかしら」

 臨時国会がスタートした1日の夜。都内で飲食店を営むおかみさんが嘆息した。さらに、おかみさんは大相撲の秋場所千秋楽の場面を語り始めた。

 「私、国技館に行ってたの。テレビでは分からなかったようだけど、菅さんが(総理大臣杯の)表彰で土俵に上がるとき、すごいやじだったの」

 ―中国問題はどうした!

 ―解決してから出てこい!

 「そうよね。尖閣で大変な時に相撲を観にくるなんて…」

 私もテレビニュースで表彰式を見たが、菅直人首相はおどおどしていたように感じた。

 菅首相が鳩山内閣からバトンを引き継いで4カ月。参院選、民主党代表選があったとはいえ、内外の問題が山積し、「政治空白」の4カ月になってしまった。

 今年の夏は記録的猛暑だった。特に熱中症で死亡した人は過去最高。被害者は高齢者に多かったが、まさに災害といってもおかしくない。そんな時、菅首相は軽井沢のホテルで静養。テラスで読書する姿を記者に公開し各新聞に掲載させた。

 また、この時期に円高が急激に進行し、回復基調にあった輸出産業に打撃を与えていた。しかし、政府はスピード感あふれる対応をしなかった。

 最大の〝空白〟はやはり尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件だろう。報道によると、逮捕するときは内閣で検討が重ねられたという。岡田克也外相(当時)と海上保安庁を所管する前原誠司国交相(当時)は逮捕を主張。前原氏は会見で「国内法に基づき粛々と対応」と強気の姿勢をみせていた。

 ところが、中国から異常なまでの対抗措置を受け、船長を釈放してしまった。仙谷由人官房長官は「釈放は検察の判断」と強弁したが、額面通り受けとる人は少ないのではないか。逮捕の判断は内閣。外交問題に発展し、釈放の判断は検察。これが民主党の主張する「政治主導」なのか。

 国民が困っている、苦しんでいるときに対応するのが政治の仕事だ。また、相手のある外交は、一つの判断がどう展開するか、先を読むことが不可欠。今の内閣にはその「当事者意識」と「想像力」が欠如している。

 所信表明演説で「有言実行内閣の出発です」と胸を張った菅首相。しかし実行すべき具体的「言(葉)」がまったくない。冒頭のおかみさんではないが、多くの国民が嘆息している。