ようやく前天狗岳到着 9:00。ここで初めてニペソツがその端正な姿を見せる。
ニペソツは不思議な山だ。十勝や表大雪からたびたびその姿を目にするが、そこから見た容姿はイマイチで
あまりかっこよくはない。音更や石狩からだと多少鋭利な姿となるも、やはり惚れ惚れするほどでない。
面白いのは、すぐ脇を走っている国道273号線からはほとんど姿を拝めず、ようやく三国峠から
その全貌を見ることになっても、この項最初の写真のように、やはり魅力のない山容だ。
そして、登山道をひたすら登ってきても、前天が邪魔をしてまったく姿が見えず、ようやく前天を乗り越えて、
初めてその山容を間近に拝めるのだ。しかし、苦労してたどり着いて、初めて望むその急峻かつ端正な姿こそ
「真の」ニペソツであって、ここと次の天狗岳以外から見るニペソツは、「本当のニペソツじゃない」と言い切っても
いいと、私は思うのだ。
皆、ここから立ち去る際に別れを惜しんで、必ずといっていいくらいにもう一度振り返り別れを告げていた。
だって、ここを離れたら最後、次に本当のニペソツが見える場所はないのだから。
ここからは十勝連峰も見える。
(以降、公序良俗に反する行動が映倫に引っかかり、一部映像並びに音声がカットされている)
天狗岳からのニペソツの雄姿。これが見たいから皆さん登ってくるといっても過言じゃあないだろう。
綱渡りのような登山道に一瞬ビビルが、意外と危険箇所はほぼないと思う。高所恐怖症の私が、二度
登頂しているのだから間違いない。
しかし、登山意欲のそそる山容ながら、今回は遠慮させていただいた。やはり私にとってニペソツは、
見る山であって、登る山ではないようだ。
このすぐ下、登山道を熊が横切ったらしい。登山者はしばらく立ち往生したそうだ。
同じ地点からトムラウシ方面。雲が増えてきた。
登山道脇に残る唯一の雪渓。念のためこの雪をナイロン袋につめて持ち帰った。結果的には
担ぎ上げた水で足りたので、融雪水は手洗いやうがいに使った。
昼前から雲が多くなって、粘っていたニペも夕方までに見えなくなった。夕景を楽しめなかったのは
残念だった。ニペの景観はあきらめ、F4望遠ズームに二倍のテレコンをつけてうろついていたら、
目の前にナキウサギが出てきたので一応撮影できた。ほとんど鳴かなかったのでメスなのか?
私に言い寄ってきたのだから間違いなくメスだ。しかし私のF4ズームは、IS=手振れ補正付ではないので
あきらかにブレブレだ。これじゃあ撮影しても仕方ないなと気力も失せて、早々に切り上げた。
7月5日(日) 晴れ
ニペソツ山は過去に二度日帰り登山していて、次回こそ山で泊まってみたいと願っていた。
日帰りでは時間がかかりすぎてゆっくり楽しめないし、ぜひあの鋭峰を朝夕条件のいい状態で
眺めたいと思ったからだ。
ただその場合、この山は「水場がない」というのが最大のネックとなり、基本二日分に必用な水を
自身で担ぎ上げなければならない。北海洋さんから、雪渓が少し残っているとの情報もいただいては
いたが、最悪の場合に備え、最低限の水を用意した。カップ麺など大量の水が必用な食料は省き、
おにぎり5個、ロールパン6個で三食分とした(ほかに行動食、スティックコーヒー等あり)。用意した水分は、
真水 1.6リットル
ポカリスエット 1リットル
ウイスキー 150ミリリットル(←これ余計ね)
である。
この日早朝は快晴で、三国峠眼下は一面の雲海であった。写真左の台形の山がウペペサンケで、
右端のピークが目指すニペソツである。
久しぶりに16の沢出合の登山口を訪れると、いわゆる駐車スペースはUターン専用場所となっていて、
車はすべて林道脇にとめなければならなくなっていた。晴天の日曜日、すでに多くの車が並んでいて、
推測だが、この日20組以上がニペソツに挑んだと思われる。5:20 出発。
歩き始めてすぐに「これはやばいかも」と思った。予想以上に水の重さが「ズシッ」とこたえる。
あとで思えば、F4の望遠ズームと二倍のテレコンは置いてきてもよかった。ニペソツには
経験からナキウサギがワンサカ生息していることは知っていて、あわよくばその撮影もできたらいいと
考えたのだ。しかし私のような体力のない者には、ハードな登頂後、とてもナキちゃんを追い掛け回すだけの
気力は持ち得なかったのだ。
樹林帯の急坂をあえぎながら登り続ける。5組以上に抜かれた気がする。
7:30 大岩到着。大きな荷物なので乗り越えるのに難儀した。前を行く子供を含む三人連れとは、
のちに前天狗岳に着くまで、抜きつ抜かれつの「非常に低レベルな」デットヒートを繰り広げた。
ここを過ぎるとようやく展望が開けた。遠くにウペペサンケ、右のピークが前天狗岳。
糠平湖にはまだ雲海がかかっていた。
ほどなくして「天狗のコル」と呼ばれるキャンプ指定地に到着。すっかり雪渓は消失し水は得られない。
「仕方がない」から前進する。
さらに林間の急登を続けるとガレ場に出て、ここで初めて北側の展望が大きく開ける。
三角形が乗り越えてきた小天狗、右奥のツインピークスがオッパイ山。
石狩岳~音更山などの石狩連峰の巨大な壁、左奥に表大雪山。
さらにもうひと登りすると、ここで初めてトムラウシ(左端)が見えた。こちら側からのトムラウシは
イマイチ迫力がない。
前天狗岳のロックガーデン。ナキちゃんの声が響き渡る。
前を行く三人連れ。姿を見たのはこれが最後だった。