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旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

不死鳥伝説再び~小説版 火の鳥 大地編 を読み返し始める

2022-10-20 19:11:11 | 図書館はどこですか



作業の合い間合い間にある程度まとまった休憩をもらえるときがあり、その時間を
有効活用するべく、職場へ持参して読み始めたのが「小説版 火の鳥 大地編」です。
朝日新聞土曜別刷り版beで長期連載された桜庭一樹作 黒田征太郎画 手塚治虫原作
による作品をとり置いていて、いつか読み直せればと機会をうかがっていたところ、
今回それが叶いそうなのです。

すでに単行本化されているでしょうし、わざわざ面倒なスクラップを持ち出さなくても
いいものを、でもまあいいじゃないですか。再読後、これで心置きなく古新聞として
リサイクル、処分できるというものです。


    

さすがに単行本には、黒田さんのイラストがすべて掲載されているわけでないで
しょうしね。


         


ところで、このサッカー漫画『アオアシ』と『ブルーロック』のイラストは、
今朝の新聞に全面広告として掲載されたものです。私は漫画としてはこれらの
作品に触れたことがなく、アオアシはつい先日2クール分のアニメ放映を
終えたばかり、ブルー~はこの秋の新作アニメとして放映中で、テレビでは
馴染んで見知っているこれら作品が同時掲載されたことに驚きました。

同じサッカー競技を舞台にしたアニメでも、両作品、作風は趣が異なっていて、
アオアシはサッカーアニメの王道(主人公にはエスパーに近いくらいの特殊な
才能を与えられてはいますが…まあ全般泥臭いスポ根もの)を行くのに対し、
ブルー~は日本を代表する真のストライカーを育成するために用意された特殊な
環境下での訓練、競い合いを描く(なので、登場人物はすべてフォワードばかり)、
あり得ないけどあり得るかもの極端設定、かなりの異色作です。


         

一体全体、これは何を意図した企画なのと思いきや、「2022年はまだ、
愛の年にできる。」と題した、朝日新聞による『讃えあい広告』なのだそうです。
片や「リアルな漫画」、一方は「最先端の漫画」と描かれるスタイルは違えど、
お互いを讃えあい、認めあおうといった趣旨なのでしょう。と、言われても、
正直私にはそれでもピンときませんねえ…

とはいえ、アオアシが終わったとたん始まったブルー~が、同じサッカーを
素材にしたアニメでもずいぶん雰囲気が違う作品であることに私も戸惑い、
違和感を感じていたひとりです。その違いを楽しもうよ!ってことでいいのかな。  

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横溝正史エッセイコレクション第3弾

2022-09-21 19:07:00 | 図書館はどこですか



横溝正史エッセイコレクションの第3巻「真説 金田一耕助/金田一耕助の
モノローグ」を図書館でお借りして読み終えました。表題作二編のほか、
『横溝正史自伝的随筆集(抄)』、さらに未発表エッセイ数編が収録され、
前2巻と合わせ、これで横溝さんが書かれたほぼすべてのエッセイを
読めたことになります。

真説~、~モノローグともに金田一耕助の名前がタイトルに列挙されていて、
これは注目をより高め、読者増を狙う意図が明らかで、中身は金田一のことに
触れられたものばかりではありません。当時は私自身も含め、横溝ブーム=
金田一ブームといった様相でしたので、その人気にあやかって相乗効果を
狙ったのは間違いないところです。

それでも特に真説~に関しては、フィーバー渦中の混乱ぶりが生々しく描かれ、
末席ながらそれを同時体感していた私などにも、その頃のことが懐かしく
思い出されます。映画化され、さらにそのヒットの余波でテレビシリーズが
制作されることになり、それを楽しみにしていたファンの私もひとりでしたしね。
当時主にテレビシリーズで金田一を演じた古谷一行さんが先日お亡くなりに
なられました。私にとっての金田一は、古谷版が一番イメージに近いというか
それですり込まれている感があります。改めてご冥福をお祈りします。

横溝ブームだった頃中学生だった私は、当時の角川文庫が仕掛けたムーブメント
にまんまと乗せられてしまった部類です。もしかしてそれ以降、性格がますます
注意深く懐疑的になり、そうしたブームにはできるだけ乗らないようにしている、
極力避けて通るようになったのは、その裏返しなのかもと思ったりもします。

しかしたしかにその当時はブームに踊らされ、勢いに任せ多くの金田一ものを
読みあさったことを否定はしませんが、それだけではなく、横溝さんが描く
探偵小説が根っから面白い本質を、若輩ながら見逃してはいなかったのだと
最近思い直しています。それは、近年当時の文庫本を読み返し始め、いずれも
引き込まれるように魅了され読み進めることができることで確信に至りました。
すっかりストーリーを忘れてしまっているマイナー系作品はもちろんのこと、
犯人やトリックを覚えている代表作でも関係なく再読を楽しめることから、
今後すべての作品を読み返せるのを心待ちにしています。

その一端を担ってくれた柏書房による横溝コレクションシリーズは、今回で
最後となります。現在では入手困難になっていた有名作以外の横溝本を一挙
収録、テーマごとまとめ読みできた功労に深く感謝いたします。

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横溝正史エッセイコレクション

2022-08-24 18:57:00 | 図書館はどこですか




柏書房から出ている「横溝正史エッセイコレクション」全3巻のうち、今回まず
①「探偵小説五十年/探偵小説昔話」と②「横溝正史の世界/横溝正史読本」の
二冊を図書館でお借りして読みました。横溝さんのエッセイ集はこれまで七冊
出ていたようで、それを今回再編集、3巻にまとめて出版されました。

私の手元にあるのは文庫版「横溝正史読本(小林信彦氏との対談集)」のみなので、
その他はすべて今回初めて読むものばかりです。ただ、横溝さんは何度か繰り返し
自身の生い立ちに関するお話や江戸川乱歩氏ら他の探偵作家とのつきあい、編集者時代、
信州での療養期のお話、岡山への疎開中の出来事などを述べられているし、また、
逆に乱歩の文章でもしばしば横溝さんのことに触れられていることもあり、私には
既読感のある内容も相当量含まれていました。

収められているエッセイは、戦前~戦後すぐにかけての古いものが含まれているのに加え、
昭和50年前後のいわゆる横溝ブームが沸き起こる直前直後あたりに書かれたものも多く、
ご本人の戸惑いと共に、その頃のムーブメントのすさまじさが伝わってきます。

昔語りの中では、『本陣殺人事件』『蝶々殺人事件』『獄門島』『悪魔が来りて笛を吹く』
等々の代表作品が、その発表当時どういった評価を受けていたのかがうかがい知れるのも
面白いですね。乱歩、坂口安吾氏の批評記事がそのまま復刻掲載されているのも興味深く、
ほぼ同時期に掲載された本陣~と蝶々~が、評者によって偏った評価となっているのも
大変おもしろく思いました。今になって見れば、極論と言えるような過度な評価を受けて
いたりもします。戦後すぐに、しかもいきなり同時に二編もの、当時日本では稀有だった
論理的なトリックを網羅した長編本格探偵小説が発表されたことに、周辺関係者には驚き、
感激をもって受け入れられ、ある種興奮状態だったことが推し量られます。


しかし納得できないのがこのコレクションのお値段で、いずれも6000円(税別)!!
もするんですよね。これまでのものがたしか税別2600円くらいだったと記憶している
ので、それと比べても(2600円でも十分いいお値段ですが、内容や装丁の充実さを
考えると納得価格ではあります)急に倍以上高くなったのが解せません。分量もさほど
変わらないですし、今回に限りカラー写真が多数掲載されているわけでもないんですがね。
著作料、使用許可料などの問題でこのような値付けになったのでしょうか? 図書館で
気軽にお借りできるから何気に見過ごしてしまいそうですが、もしこれ、個人での購入を
考えていたならば、躊躇するのではないですかね。


編者・日下三蔵氏の解説によると、横溝正史コレクションシリーズは、今回の三冊で
完結となるようです。私としては、「金田一集大成」の実現を期待していたのですが、
それはかなわぬ夢となりそうです。その分、最近角川文庫版が復刻販売されているので、
未読の金田一ものは、それを利用するなどして穴を埋めたいと思います。

角川版の復活劇があったとはいえ、それでもけっして色あせることのない柏書房の
横溝コレクションです。初版本にできるだけ忠実に再現、正確に校正され、各分野ごと
まとめ読みできたこのシリーズの魅力、意義は薄れることがないでしょう。私に
全盛期の財力があれば、全巻購入し、書棚をにぎわせたいところでした。改めて
編者、関係各位の労をねぎらいたいと思います。どうもありがとうございました。

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横溝正史没後40年&生誕120周年記念企画

2022-08-16 19:03:00 | 図書館はどこですか



「横溝正史没後40年&生誕120周年記念企画」と称して、角川文庫版の横溝本が
復刻販売されています。近年、柏書房がコレクションシリーズで奮闘、手に入りにくかった
初期の短編集、由利三津木もの、少年向けなどを一気に読む機会を与えてくれましたが、
どうやらそのシリーズでは「金田一もの」をまとめて出版する予定はないようなので、
今回は特に、それを収集、拾い読みできる最大のチャンスですよ。

元々私の手元には、当時の角川版の金田一ものに関してはそれなりの蔵書がありましたが、
すべてを網羅できていたわけでなく、この機会に、抜け落ちていたものをいくつか
チョイスして補完するつもりです。今回の購入はその第一弾で、「壺中美人・720円」
「吸血蛾・800円(いずれも税別)」の2冊を買い求めました。なかなかのお値段ですが、
背に腹は代えられないですかね。


    

今回の復刻版の特徴は、当時の杉本一文さんによるカバーイラストが再現されていること
でしょうか。魅惑の表紙絵に、読書欲がよりそそられるのは確かでしょう。壺中美人の
イラストなどはインパクトがありすぎて、当時中学生だった私は買うのをためらい、
そのまま欠番になったのかもしれません。


    

ただし、その他のデザインなどは今日発売されている横溝シリーズに準拠したものに
改められている等、すべてがオリジナルに忠実に再現されてはいないようです。また、
文字サイズもひとまわり大きなものに変更されているみたいで読みやすそう、老眼の
進んでいる身としては大助かりです。

現在別の本を読んでいるため、これらに取り掛かれるのは少し先になるのですが、
その日を心待ちにしたいと思います。また、あと数点の追加購入も検討しています。

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南海囚人塔

2022-07-08 17:52:30 | 図書館はどこですか



今回図書館でお借りしたのは、横溝正史少年小説コレクション第7巻
「南海囚人塔」です。これでようやくコレクション最終巻まで読み通すことが
できました。

第7巻には表題作をはじめ中短編6作品と合わせ、海野十三(うんのじゅうざ)
名義の長編『少年探偵長』も収録されており、この作品は海野氏死去後、
未完成だった後半を横溝さんが引き継いで執筆を続け完結させたようです。
解説でも触れられているように、どこから横溝さんが担当したのかが
まったくわからないくらい、ストーリーや文脈などが自然に踏襲されている
のがすごいと思います。

7巻の収録作は三津木俊介や探偵小僧・御子柴進などがいっさい登場しない
ノンシリーズものばかりで、その内容はほとんどが探偵小説というよりは
冒険小説に近いのですが、人物の「縛り」がない分、全体的に好き勝手に
のびのびと描かれている印象です。ただし、太平洋戦争当時の作品に
関しては、その情勢を少なからず受け、時勢を感じさせます。

巻末掲載された横溝さんの妻と長男を交えた座談会(再録)がとても
印象深いです。私にとっては「好々爺」的な印象しかない晩年の
横溝像ですが、お若い頃は相当癖の強い人物だったことが伺えます。
強烈なエピソードをサラッと回想する夫人もすごくて、これくらい
肝の据わった方でないと作家の妻は務まらないのだと思い知りました。
無から新しいものを生み出す作家のパワーは、それなりのアクの強さが
源となっているようです。

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今回の旅で読んだ本~幽霊座

2022-06-04 19:06:00 | 図書館はどこですか



今回の旅行中に持ち出しで読めた唯一の本が、「幽霊座/横溝正史著」です。
往きの船内で三分の二ほど読み終えていました。その後別のもう一冊は三分の一
ほどで頓挫、続きを読めるのは少し先になるやもしれません。

幽霊座には表題作の中編一編と、『鴉(からす)』『トランプ台上の首』の
二編の短編が収録されています。いずれも横溝さんの代表作、有名作品、
あるいは映像化作品でないこともあり、金田一ものではありますが、現在
読むことが困難な作品でないかと思われます。

代表作でないから内容がお粗末かというと決してそうではなく、金田一ワールド、
横溝ワールドが全開、読み始めると止まらなくなる面白さなんですよねえ。
たとえば最近読んだ「名探偵に甘美なる死を」や「だから殺せなかった」などの
現在的で論理的にカチッと筋道を立てられた推理小説とでは、無論今となっては
見劣りする部分もあります。現在とは時代背景などが違いすぎるのでもちろん
単純には比較できないけど、筋立ての脇が甘いというか、展開がもたつき気味で
スピード感に欠けるというのか、一言で言うと「古さ」を隠し切れないのです。

それでもその世界観にすぐさまどっぷり浸かってしまい、ページをめくる手が
とまらなくなり夢中で読ませるのは、金田一が醸し出す魅力だし、それを
操る横溝さんの力量、技量なんでしょうか。

一見人付き合いが悪そうで外部との交流の少なそうな金田一ですが、意外に
そうでもなく、歌舞伎界を舞台に事件が勃発する『幽霊座』では、その登場人物
(歌舞伎俳優ら)と以前から面識があり、梨園とも付き合いがあって顔が効く
意外な一面も見せています。

一部の有名作品以外、現在は入手困難になっている金田一ものです。上記の
三作品も、そのまま埋もれ、忘れ去られるのは、いずれも惜しい作品です。
最近「横溝コレクション」として、長いこと廃刊だった作品群が様々な切り口で
まとめられ、シリーズ化され蘇っていますが、この一連の流れで、金田一ものも
すべて復刻してくれたらいいんですけどね。それまで待ちきれない方々は、
一部の図書館には、おそらく地元市民から寄贈されたであろう旧角川文庫版の
横溝シリーズが、けっこうな数そろっているところもあるので、そこを探り
当てるのが、それまでのつなぎとして今考え得る手でしょうか。

最近も『仮面舞踏会』の草稿や『悪霊島』の創作ノートが新たに発見されるなど、
いまだに話題に事欠かない横溝さん、まだまだ楽しませてくれそうです。


*近年、「横溝正史生誕120年記念復刊」と称し、角川文庫版が復刻出版
 されているようで、「幽霊座」もついこの5月に発売されたばかりみたいです! 
 今回の再読は、別にこのタイミングを狙ったわけでなく、すごい偶然ですわ。
 836円とけっこういいお値段しますが、興味のある方には、またとない
 チャンスですよ。私の手元にない金田一ものも復刻されていて、買い足そうか
 検討中です。図書館への入庫を期待しますが、今のところ和歌山では
 その動きはないようですわ、残念ながら。

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姿なき怪人

2022-05-07 19:17:00 | 図書館はどこですか



「名探偵に甘美なる死を」と同時に借りたのが横溝正史少年小説コレクション第6巻
「姿なき怪人」です。コロナパンデミック後の近未来を舞台にした名探偵に~と、
昭和の高度成長期の東京を背景にした古い推理小説、しかもジュブナイルものという
極端な読み合わせに、頭の切り替えがかなり大変でした。

姿なき~には、敏腕新聞記者・三津木俊介と探偵小僧こと御子柴進くんコンビの
活躍を描く長編3作が収録されており、もっぱら中心となるのは探偵小僧御子柴くん
でしょうか。これは、いずれも当時連載されたのが雑誌「中学一年~三年コース」と
いうことで、同年代の御子柴くんを目立たせることで、読者に親近感を持たせようと
しての配慮でしょうね。対象が主に中学生ということで、内容もやや大人テイストに
シフトされ、残忍な殺人シーンもそれなりに登場します。しかし、誘拐、監禁
されながらも殺害を免れた被害者(あまりに可憐で幼気なので?)もいるなど、
微妙なさじ加減で、作者は残酷さの程度を調整していたのだろうと想像します。

最も卑劣な犯行が繰り返されるのが表題作『姿なき~』で、その分内容も大人寄り、
これがやはり、作品としては一番楽しめました。『まぼろしの怪人』は四つの
短編作を組み合わせたオムニバス風の長編で、犯人役を同じ「まぼろしの怪人」に
しなければならない関係上、事件が解決し、いったん捕まった犯人をその都度
脱獄させるなどして復活させなければならず、少々苦しい導入部の連続です。
これは、乱歩の二十面相が脱獄を繰り返すなどして何度も蘇るのを参考にしたので
しょうけど、苦し紛れの感はぬぐえないですかね。

まぼろしの怪人、姿なき怪人、そして怪盗X・Y・Zと、この巻だけでも
三人もの悪役キャラクターを誕生、登場させた横溝さん。最後まで少年探偵団に
対峙する二十面相のように敵役を固定できなかったので苦心を募らせた半面、
ある程度幅広く自由に描ける楽しみ、良さがあったのかもしれません。

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名探偵に甘美なる死を

2022-05-05 19:22:30 | 図書館はどこですか




今回読んだのは、「名探偵に甘美なる死を/方丈貴恵(ほうじょう きえ)著」です。
この本のことも、朝日新聞の夕刊の書評欄で知って、図書館で予約していたのです。

ところがようやく順番が回ってきたのが先の旅行出発直前だったので泣く泣く権利を
いったん手放し、予定外の早い帰宅に再度予約を入れ、そうして再び順番が巡ってきて、
やっとこさ手元にできたようなドタバタを経て読むことができました。


物語出だしは、正直あまり気乗りせず読み始めました。今時、クローズドサークルを
創り出そうとすると、「孤島」「携帯電話を没収される」などなど、だいたいパターンが
決まっているんだなとちょっと冷めたのと、「VR空間」や「ミステリゲーム」を
取り入れてストーリーが進行する…というか、そんまんまVR空間上が犯行現場、
舞台となっていて、こうなるともう、古い人間の私にはさっぱり理解できず、これは
どうやらついていくのが無理そうだなと、半ば放棄寸前という感じでした。

なので、特に物語序盤でのVR空間における設定やルールはあまり理解できないまま
読み飛ばしたので、当然犯行を暴くことも阻止することもできるはずもなく、その時点で
私は名探偵失格、甘美なる死を与えられるところでした。その分、物語導入部の、
ちょっとしたヒントには、早くから気がついたりはしましたよ、名誉挽回?

50代より上の世代の方には、正直あまりお勧めできない推理小説ではあります
(それって、ついていけないのあなただけじゃない?)。しかし読み進めると、
VR空間と現実世界で同時並行して事件が起こる設定や、トリック、犯罪手法などは
秀逸で、スリリングな展開に引き込まれ、途中から加速度的にページがめくられ、
あっという間に読み終えました。ただし繰り返しになりますが、細かいところは
「横に置いて」みたいな感じでしたが… 今時は、こんな最新技術を用いて、あるいは
その技術の盲点をついて、密室での完全犯罪が成り立つんやなあ。乱歩や横溝さんらが
このトリックを知ったら、どんな感想をお持ちになったのでしょうか…


シリーズ第三弾となるらしいこの作品は、まったく問題なくこれだけでも独立して
楽しめますが、前二作を読んでおいたなら、登場人物により感情移入しやすくなるなど、
さらに物語世界観への理解が深まりそうです。人気作のようだし、図書館で順番待ちに
なっているなら、先に前作を読んでおくのも手かもしれませんよ。

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白蠟仮面

2022-03-15 19:05:30 | 図書館はどこですか



横溝正史少年小説コレクションシリーズの第5巻「白蠟仮面(びゃくろうかめん)」
を読み終えました。新聞記者・三津木俊介と探偵小僧・御子柴進が活躍する長編四作と
ノンシリーズもの短編五作が収録されています。

まず注目されるのは『蠟面博士(ろうめんはくし)』ですかね。私の手元にもある
角川文庫版などは探偵役が金田一耕助に変更されているので、オリジナル版で
出版されるのはずいぶん久しいことだそうです。三津木を金田一と入れ替えると
どうなるだろうかと想像しながら読み進めましたが、単に名前や役割を変えるだけ
では説明がつかない箇所も相当数あることは容易にわかることから、かなりの部分で
文章の改変などが行われているのだろうと思われます。現在の基準に照らし合わせると
むちゃぶりすぎで、こんな暴挙は到底許されざることでしょうけど、読み比べることが
できる楽しみが増えたと考えるなら、むしろ大歓迎かもしれません。

ワンパターンな展開が目立つ長編よりも、むしろ短編五作のほうが内容としては
興味深く読むことができて、当時少女向け雑誌に発表された作品などは、そのまま
少女漫画の原作になっても面白いものが多く含まれます。高階良子さんなどに
漫画化してもらうか、あるいは挿絵を描いてもらい、タイアップして出版しても
面白いように感じました。



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弔い月の下にて

2022-02-25 19:12:00 | 図書館はどこですか



ここでいったん横溝正史少年小説コレクションシリーズを離れ、読んだのは
「弔い月の下にて 倉野憲比古著」です。朝日新聞夕刊記事で紹介されていたのが
読もうと思ったきっかけで、それから、図書館での貸し出しが解禁されるのを
待ち構えるようにしてお借りしました。記事は1月中旬頃の掲載でしたから、
そこからでも約一か月かかりました。なにかしらの、新刊本に対する図書館への
導入に際してのルール、取り決めのようなものがあるのでしょうかね。以前、
新刊本がすぐに図書館で読めるせいで、ベストセラー本の売り上げに影響が出ている
というようなニュースを聞いた覚えがあります。そのため、わざと発刊直後本の
図書館への導入時期を遅らせているのか、関係なく、単に予算がなくてすぐには
入れられなかっただけなのか… 事情はともかく、どうやらこの図書館での貸し出し
第一号となったらしく、待たされた分、なにかしら得したような気分もあるのです。


さて、私は作者の倉野憲比古(くらの のりひこ)さんの名前も存じてなくて、
もちろん作品を読むのも今回が初めてで、記事によるとこの弔い月~は、探偵役に
心理学を専攻する学生・夷戸武比古(いど たけひこ)を登場させたシリーズの
第三弾となるようです。カバーに作者の言葉として、「謎の使用人、異常心理学、
宗教、怪奇趣味etc.と、私の趣味嗜好をすべて注力した…」と記載されているとおり、
かなり偏りのあるクセ球がこれでもかと投げ込まれた変格的っぽい推理作品です。

探偵役夷戸は、心理的、あるいは精神病理学的側面から不可解な犯行を暴き、真実に
近づこうとしますが、かなり突拍子もない論理の展開に、正直こちらがついていく
のに四苦八苦します。登場人物の他の面々からもあまりの「現実味のなさ」を指摘
されるほどの、一見的外れのように思えた彼の論理的思考はやがてすべてを解き放ち、
絡まっていた糸を一本の線へと導きます。

非科学的かと思われた事件は理詰めな筋道で解決され、謎が謎を呼ぶ仕掛けの舞台
装置だけ見ると徹頭徹尾変格ものなのかと思わせておいて、実は筋の通った本格的
推理小説だったのだと考えを改めさせられた矢先にどんでん返し、人知の及ばぬ
超常現象が真の原因でないかと啓示があり、最後まで読者をけむに巻きながら真相は
迷宮の度合いをますます深め、すべてをつまびらかにしないまま物語は終わりを
告げます。「弔い月」だけがすべてを知っている…って感じでしょうかね。


正直とっつきにくくて、独特のマニアックな世界観を持て余し気味になるのは確か
でしょうけど、のめり込むと、あっという間に読み終えてしまう濃~い中身でも
あります。馴染んでくると楽しめますよ。前作2冊も図書館に蔵書され、こちらを
先に読んでみることも考えましたが、せっかくだし、この新刊を読んでから判断
しようと借りるのを思いとどまりました。むろん今は読む気満々なので、いずれまた
底なし沼ようなラビリンスに引き込まれるのを楽しみにしたいと思います。

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