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旅にしあれば

人生の長い旅、お気に入りの歌でも口ずさみながら、
気ままに歩くとしましょうか…

土田よしこさん追悼~きみどりみどろあおみどろ再読

2023-12-29 17:35:00 | 図書館はどこですか



漫画家・土田よしこさん死去のニュースを、旅行中の9月現地で知りました。
遅ればせながら、心よりお悔やみ申し上げます。

土田さんの代表作としては、「つる姫じゃ~っ!」がまず挙げられるでしょう。
しかし私としては、どちらかというとほぼ同時期りぼん誌上で連載されていた
「わたしはしじみ!」のほうを推していました。つる姫のどぎついギャグよりも、
ややソフィスティケートされた(…ように記憶する、細かいところ忘れちゃって
いるなあ、なにせ半世紀前に読んだのが最後)しじみのほうが肌に合ったので
しょう。いずれにせよ、当時かなり熱心なファンだったのは間違いありません。

ところが、どちらの著書も手元にはなく、私が所有しているのは、少し溯り
りぼんで掲載されていた「きみどりみどろあおみどろ」一冊のみです。当時
しじみらは、毎回オンタイムに読むことができたので(友達に借りるなどし)、
あえてコミックスを買い求める必要がなかったのでしょう。ずいぶん後で、
もう一度読んでみたいと思い立ち、文庫本化などの復刻版ブームが起こった
ときに探してはみたものの、残念ながらしじみは再発売されることなく終わり、
手に入れることができなかったのです(ところが調べてみると、その当時
愛蔵版が出ていたことがわかりました。再読する機会を逃したみたいですね、
悔しいです)。


         

さて、このきみどり~に関して、なぜ当時これを買ったのかは、今となっては
正確には思い出せません。おそらく、しじみやつる姫のコミックス版ならいつでも
友達に借りられるし、それ以外のものをラインナップに加えたいと考えたのではと推察
されます。しじみ、つる姫よりも少し前に発表されたこの作品は、若干粗削りながら、
しじみらの原型はこの頃すでにほぼ出来上がっていると思われ、ギャグの厳しさが
つる姫に、ラブコメ的要素がしじみに受け継がれたとするのは、ちょっと強引すぎる
暴論でしょうか。

今回ものすごく久しぶりに読み返し、泣き笑いしながら読んじゃいましたよ。
私のギャグ的な感性の一部は、間違いなく土田よしこ作品から影響を受けたのに
違いないことを再確認しました。土田さん、笑わせてくれてありがとうございました、
安らかにお眠りください。
    

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三人書房

2023-12-22 18:52:00 | 図書館はどこですか




先のミステリー小説ランキング紹介記事で取り上げられていた作品中、
まず借りることができたのが「三人書房/柳川一(やながわ はじめ)著」
でした。野波記者が『偏愛の一冊』と紹介していた作品で、「乱歩ファン
必読の連作短編集だ」となると、読まないわけには参りません。

乱歩は、専業作家となるまで職を転々としたことは有名で、二人の弟と
団子坂で営んでいた古本屋『三人書房』時代を舞台にし、架空の事件に
乱歩が首を突っ込んで、解決させる短編を集めたものがこの本の骨子です。
乱歩の職歴にはなんと「夜泣きソバ屋」もあり、この小説では、その
突拍子のなさは、実はある事件の捜査のためとしていたり、のちの作家
デビュー後、創作に行き詰まり、休筆、逃避行するのも、別の事件解決に
没頭するためだったとの受けとめです。要は、後付の筆者の「好意的」な
解釈にすぎないのですが、そんな空想もなんだか楽しくなってはきます。
そうした一見回り道が、やがて「屋根裏の散歩者」や「押絵と旅する男」
などの代表作につながったのだというこじつけも、ファンとしては
さもありなんと信じたほうが夢があっていいですしね。

著作権などが切れているからでしょうか、近年のアニメ作品内でも、
文豪自身や小説内登場人物がよくお目見えし、海外ものではシャーロック
ホームズやモリアーティ教授なども主役、脇役問わず頻繁にお目に掛ります。
「憂国のモリアーティ」では教授が主役でホームズが敵役、「アンデッド
ガール・マーダーファルス」では、主役・不死の少女の首をはね、胴体を
奪った敵役がモリアーティでした。「啄木鳥探偵處」には各文豪に交じって
平井太郎(乱歩の本名)も登場します。石川啄木に探偵的な素養があった
のかどうかはともかく、実際乱歩と交遊関係があったのだろうかなどと
想像すると、面白いですよね。乱歩や横溝正史のエッセイには、探偵小説
作家たちとの交流は随所に描かれている一方、同時代に活躍していたはずの
純文学作家のことはほとんど触れられていません。両者には「壁」のような
ものが存在し、行き来することはなかったのでしょうかね。

アニメ世界やこの小説内でも共通するのは、登場する作家などがカッコよく
描かれすぎていて、それが少々気になります。美化されすぎるきらいがある
のです。フィクションと割り切り、楽しめばいいとは思うのですが。

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目立つ「本格」 刑事と挑む謎解き~ミステリー小説ランキング紹介

2023-12-16 18:30:50 | 図書館はどこですか



12月13日(水)の朝日新聞夕刊に掲載された記事で、年末に発表される
ミステリー小説のランキングが出そろったことが紹介されていました。
主たるランキングだけで四つもあるのですね、それすら私は知りませんでした。
以前述べたように、私自身はランク入りしているのかどうかを優先して本を
選んではおらず、まあでも、選択肢の指標になることは確かですし、新聞紙上で
紹介される話題作、お勧め作品の多くが、ランク入り作品と被っているのでは
ないですかね。

この記事ではランキングのすべてを紹介しているわけでなく、上位入賞作
数編を取り上げて、あとは野波健祐記者の独断と偏見の?お勧め作品が
いくつか挙げられています。中にはすでに別の紹介記事などで知っていて、
図書館に予約済みで順番待ちの新刊も含まれており、この記事で新たに興味
を覚えた数冊を追加予約入れておきました。野波記者のベストとして白井智之
さんの新作を推していることから、私と好みの傾向が一致している気がする
ので、見解の相違がないと思うんですよね。記者が『偏愛の一冊』として
挙げた柳川一氏の「三人書房」、さっそく予約しましたよ。

この記事には、「上位作品には、謎解きプロセスの純度が高い『本格』
作品が目立つ」とあり、読者が純粋に推理に挑める作品が、より本格志向
だという見解です。奇抜な特殊設定が目立つ近年のミステリー小説界、
ぶっとんだ設定に驚き、振り回されつつも、基本、純然たる真理への探究を、
登場人物たちと共に挑めたらと思います。

ミステリー偏重のこのところの読書環境がいいのかどうかはともかく、
活字に親しむ習慣づけはできているほうだとしておきましょう。現在
朝日新聞紙上では、朝刊、別刷り版ともに時代小説を掲載中、ここでの
読書で、多少なりとも偏りをほぐすこととします。食わず嫌い(読まず
嫌い)な時代小説は、正直とっつきにくいので読み始めは毎度苦戦し、
克服した現在、今村翔吾、沢木耕太郎両氏の作品ともに、大変面白く
読ませていただいています。 

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孤島の来訪者

2023-12-15 17:17:17 | 図書館はどこですか



「竜泉家の一族」シリーズ第二弾、「孤島の来訪者/方丈貴恵著」を続けて
お借りしました。三作のうち、この二作目が、私としては一番面白く読めました。
ただ、三作目「名探偵に甘美なる死を」は、シリーズものという知識がないまま
いきなり読んでしまったので、もしかして前二作を理解した上で今読み直すと、
評価が変わる可能性はあります。

しかしシリーズとは言え、一作目の「時空旅行者の砂時計」とこの二作目との
関連性は極めて低く、主人公も違う、登場人物もほとんど違っている、時代も違う
などなどで、一作目の主役の名前がかろうじて物語中に出てくるのと、本作の
主役が竜泉家の末裔であるのがほぼ唯一の共通項で、なぜわざわざ「シリーズ」
とした理由がよくわかりません。もしかしたら、第三作目まで読むと、一連の
つながりがより鮮明になったのかもですが、いきなり三作目から読み始めた私は、
そのあたり理解ができず、曖昧なまま読み進めたのです。たしか、三作目結末に、
まだ続きがあるように示唆されていたと記憶するので、それぞれが単独で楽しめる
構成としている上に、通読することで続きものとしている意味がより深まる仕掛け
なのかもしれません。


この作品はいわゆる「島」もので、今は無人となっている孤島を舞台とすること
で世間と隔離する状況を成立させます。そしてシリーズ通しての案内役を務める
マイスター・ホラが「…どのような過程を辿ろうとも、この物語が本格推理小説
であることだけは変わらない…」とまず序文で宣言する割に、どうやら犯人は、
変幻自在、人間にさえ姿を変えられるクリーチャーであることが判明します。
この怪物の生態って、「遊星からの物体Ⅹ」なんだと気づいたのは、読み終えて
からでした。こうした特殊設定は、たとえば今村昌弘さんの一連の作品などで
おなじみで、普通はありえない極限状態の最中、ありえない不可能犯罪が発生し、
探偵役など巻き込まれた人々は、否応なし、両方に対処することが求められます。
顧みると、三作目の名探偵~のVR空間での犯罪が、一番普通の設定に思えてくる
から不思議です。こうした特殊設定路線を集めたものを、「シリーズ」と呼んで
いるとすれば、それはそれで納得できますかね。

ここで私は、「本格推理小説って何?」と素朴な疑問に立ち返る始末で、たとえ
犯行が未知の生物の手によるものでも、フェアなルールにのっとり、頭脳派探偵が
トリックに挑み謎を解きさえすれば、「変格」でないってことなのでしょうか?
もとより私は、本格なのか変格なのかにはそれほどこだわっているわけでなく、
変格に大きく振れているような内容でも、結果面白く読めればそれでいいことを
再認識、「ミステリー」でひとくくりにされているジャンルはたいてい守備範囲
みたいです、極端にホラーじみたものでなければ…  特にパニック路線的な特殊
設定ものにハマりやすく、この孤島~も魅入られたように、途中からほぼ一気読み
で読破しました。


最後、ややくどすぎるくらいに何重にも張り巡らされた伏線をすべて回収する
手際も鮮やか、説得力があり、出だしや途中にさりげなく込められた一言一言に
すべて意味があったことにも唸りました。

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時空旅行者の砂時計

2023-12-10 17:17:17 | 図書館はどこですか



続けざまに図書館でお借りしたのが、「時空旅行者の砂時計/方丈貴恵(ほうじょう
きえ)著」です。きっかけは新聞の紹介記事で、今度、文庫本化され、再発売される
との内容でしたが、私が手にしたのは初版単行本でした。

同じく方丈さんの作品では、以前「名探偵に甘美なる死を」を読んでいて、この時空~
は『竜泉家の一族』シリーズ第一作目、名探偵~はその三作目となるようです。正直、
名探偵~は読むのに相当苦戦した作品でした。VR空間など、私がついていきにくい
最先端ハイテク機器をふんだんに取り入れた内容に加え、シリーズを初めて読む身には
理解しがたい初期設定もあるなどしたためでした。結果、読む順番が逆になっても、
いい機会でもあり、手に取りたいと思ったのです。

タイトルからもわかる通り、タイムトラベルにより1960年へと舞台を移すという
SF的な要素を手助けに、まずはクローズドサークルを作りよい状況を生みます。
このあたりは近年発表されるミステリーの共通項、かなりの力技でないと、スマホや
防犯カメラなどが使えない設定に持ち込めないんですね。ここからは、横溝正史ばり
の旧家にまつわるおどろおどろしい連続殺人事件が勃発、作者は本格路線のみにこだわる
ことなく、変格的(SF的)なスパイスを絡ませて犯罪を成立させるのが、この小説の
特徴でしょうか。やや反則技っぽい構成にも、ストーリーにより深みを持たせるためだと
理解できなくはありません。

ただ、複雑な家系設定の割には、人物の性格付けなどがステレオタイプであまり練り
込まれていないのが少々気になるし、明確なトリック解明はできないまでも、おそらく
この人だろうと勘繰った人がやはり犯人で、最後に動機が判明した後も、それじゃ
ちょっとありふれてないですか? と突っ込みを入れたくなりました。過去と未来
(タイムトラベラー)が交差する世界観が独特なだけに、あっさりしすぎている描写が
それに水を差すようで、もったいない気がしたのです。

細々とした不満はあるのは確かだけど、陰惨な事件のあとにしては読後感は比較的
さわやかで悪くなく、シリーズ化しているということは、たぶん主人公(正義)は
負けない設定、安心して感情移入でき、親しみやすいのは確かでしょう。この勢いで、
シリーズ第二作も読んでみますか!

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十戒

2023-11-28 19:29:00 | 図書館はどこですか




「方舟」「時計泥棒と悪人たち」に続き読むことになった夕木春央作品が、「十戒」です。
実はこの本も前回の旅行中に予約順が回ってきそうなのを心配していて、図書館が(書庫
整理のため?)長期休館したのが幸いしたようで、ちょうどいい塩梅で順番となりました。

この十戒、舞台が和歌山県ということで、「きた~!」と喜んだのはつかの間、和歌山、
白浜の地名が出てきたのは冒頭の一回限り、以降すべての出来事は数キロ離れた沖合の
個人所有の孤島で繰り広げられ、そこが和歌山であろうとどこであろうと、まったく
地域性に関係ない展開に、正直ちょっと拍子抜けしました。

物語の流れは、前々作の方舟を踏襲していて、かなり強引にクローズドサークルが
形成され、連絡手段が絶たれた状況で連続殺人事件が起こります。方舟ではまんまと
作者の術中にはまり、最後の最後にあっと驚かされた私です、今度はそうはさせじと、
慎重に読み進めたし、少なくとも二段構えくらいでどんでん返しがあるだろうと、
覚悟しながら挑みました。それゆえ、作者のミスリードに引っかからなかったけれど
そこまでで、結局、トリックや真犯人は解明できませんでした…

方舟のような度肝を抜かれるラストではなかったし、設定、話の流れ、トリックの
詳細などに細々ちょっと無理があると感じましたが、夕木さんの特徴である上品な
語り口や奇をてらわない淡々とした話の進め方、仰々しすぎない表現などをとても
気に入っていて、次回作も今から読むのを楽しみにしているのです。

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生存者ゼロ

2023-11-25 17:35:00 | 図書館はどこですか




北海道東川町の図書館で「このミステリーがすごい!」企画を組んでいて、一冊読み
終えたあと、勢いに乗ってさらにもう一冊と読み始めたのが、この「生存者ゼロ/安生正
(あんじょう ただし)著」でした。現地では、出だし、第1章の途中くらいまでしか
読めなかったので、続きを地元図書館でお借りした本で、リレーして読み終えました。


いわゆるパニック・サスペンスもの、舞台は北海道、根室沖の石油採掘施設で発生し、
経路不明なまま中標津に上陸した「何者」かが猛威を振るい、北海道の東部半分は壊滅状態、
最初何かしらの「細菌」によるパンデミックかと思われていたものの真の正体を突き止め、
札幌など西部都市への襲来を食い止めるべく、ギリギリの状態で手に汗握る駆け引き、
決戦が繰り広げられます。

結果的にはパンデミックとはやや異なるものの、それに類するような、あるいはそれ以上
の危機的な状況を書き上げたこの小説は、新型ウィルスによるコロナ禍パニックが起こる
前に発表されていたことが、まず括目されるべき点でしょう。このような非常事態が、
物語の中だけの絵空事でないことは、つい最近、全世界的に経験したことです。コロナは
変異し、感染力は高まったものの、幸いにも逆に毒性は弱まったことで、徐々に脅威が
薄れていきました。あれでもし毒性もさらに強まっていたとしたら、今頃まだ猛威を
振るい、世界中を震撼させていたかもしれません。

小説ではタイトル通り、これに襲われると「生存者ゼロ」のすさまじさで町がのみ込まれ、
北海道の半分がほぼ絶滅します。中盤までは原因、正体を突き止めるためのせめぎ合いが
続き、終盤はそれとの激しい戦闘が迫力ある描写で描かれます。正義感の強い自衛隊員、
最初は反発しながらやがて心を開いていく美人生物学者、マッドサイエンティストと彼に
敵対する出世欲は強いが無能な科学者、空回りするばかりの役に立たない政府首脳陣など、
この手の分野ではよくお目に掛る登場人物には事欠かないし、ストーリー展開もこちらの
期待、希望に限りなく近いように進んでくれるのでのめり込んで読んでしまう一方、読者の
想像を超えていないと言えばそう映ってしまいそうで、その点、やや物足りなさを感じる
のかも。ただしこの感想は、すべて読み終えての後出しじゃんけんで、先が気になる展開に
ページをめくる手はとにかく早まるばかり、私などは主人公サイドに肩入れしながら読み
進めることが多いので、「正義が勝つ」結末に異論を唱えているわけでなく、むしろ歓迎
しなければならないはず。これが、小松左京さんの「日本沈没」や「復活の日」みたいな、
主人公にとって辛辣で悲劇性の強いラストを迎えていたら、物語の深みはより増すであろう
反面、あとあとまで引きずること間違いありませんから。


主だった舞台がほとんど北海道ということもありますし、北海道旅行が好きな方々は、
そのあたりの興味から手に取ってみても面白い作品だと思いますよ。ただし、道東好きの
方には今度の旅の行先を変更していただかなければなりません、あなたがお気に入りの街や
観光地はすべて廃墟と化していますので。

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名探偵のいけにえ

2023-11-16 19:17:17 | 図書館はどこですか



たしか春先の旅行へ出かける寸前で順番が回ってきて、泣く泣く権利を放棄し、改めて
再予約を掛けたのがこの「名探偵のいけにえ~人民協会殺人事件/白井智之著」でした。
その間、なにか賞をとったことで注目を高めたこともあり、さらに人気に拍車がかかり、
あれから半年、ようやく再度順番が回ってきました。実は今回も旅行中に「受け取り可能」
になるかもしれなくて、内心ヒヤヒヤものだったのです。結果的に当初の思惑よりも
やや早めの帰宅となったことで、少し余裕をもって手にすることができました。


意図したわけでなく、たまたま旅先の図書館で先行して読むことになったのが同じ作者の
「名探偵のはらわた」で、~いけにえのひとつ前の作品になることから、結果的に発表順に
読めることになり良かったんじゃないかな。しかし、タイトルは似ていても、関連性は
ないみたいだなと思って読み始めました。~はらわたよりもはるか昔の1978年の事件、
しかも舞台は主に海外で、登場人物にも相関性はなさそうだし、まったく別の物語として
とらえたほうが良さそうに思いました。でも実はそうじゃないんですよね。これを読み
終えたあと、無性に~はらわたを読み返したくなりました。

両作品の共通項は、過去に実際起きた大事件を下敷きにしている点で、~いけにえでは
それがオンタイムで進行するので1978年まで時が遡るのです。当時世間を騒がせた
「人民寺院での大虐殺」をほぼそのまま舞台にして、そこに新解釈をくわえながら、
助手を助け出すために潜入した探偵による謎解きが繰り広げられます。そのため、
登場人物の大半が外国人で、日本人は探偵側のわずか数名のみ、前作~はらわたよりも
テンポの悪さがマイナス材料だと感じるのは、横文字の名前に苦手意識のある私は、
いちいち表紙裏にある人物一覧表で確認しなければ誰が誰だかわからなかった間延びが、
そう思わせたのかもしれません。

また、一つの事件に関し、解答が三通り用意され、その複層構造には舌を巻く一方、
さすがにちょっと強引で無理のある推理もあったりで、それが中だるみしているような
印象を与えるのかもしれません。探偵の説明が全般少しくどすぎるような気がします。
しかし最後の「後日譚1」「後日譚2」の数ページでの急展開が、そのもやもや感を
少し吹き飛ばしてくれたかな?


白井さんの小説では、探偵役、主人公サイドにも容赦なく厄災が降りかかるので、
感情移入しにくいのが難点と言えば難点なのかも。でも、~はらわたをまた読みたく
なったなあ。次作品では「はらわた」の再登場、再活躍にも期待したいところです。

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火祭りの巫女

2023-10-15 18:23:30 | 図書館はどこですか



図書館でお借りした「火祭りの巫女(みこ)/月原渉(つきはら わたる)著」は、
月原さんの最新刊の紹介を新聞記事で読んだのがきっかけで、その新刊がなかなか
図書館に入りそうになく、ひとつ前に発表されたものを先に読んでみたのです。

舞台は敗戦後の傷跡がまだ完全には癒えていない昭和で、土着の風習が残る
山間の辺鄙な村で執り行われる神事「ヒマツリ」の最中事件が起こります。
アニメでいうと、「ひぐらしのなく頃に」に近い世界観でしょうか。
おどろおどろしいムードの中、「異形」のもののけが暗躍するなどするので、
異次元の出来事なのかと思わせつつ、探偵は、数少ない証拠から、鋭い推理で
事件の顛末を論理的に解き明かします。しかし、事実は奇なり、事件現場で
起こったことは、彼の想像を超えた凄まじいものでした。このところ読む
サスペンスものは、二重三重に結末が用意されている念の入れようで、
私のようなへっぽこ探偵には、とても真実にたどり着きそうにありません。

端的に事件が解明される一方で、ミステリアスに展開されるホラータッチな
描写はけっこう扇情的、それはいいとして、物語前半に「お使い様」と称される
バケモノが登場するのですが雲散霧消、正体が判明しないまま終了となるし、
また、ヒロイン(の一人)が熱い煙を吸い込んだせいで一時的に声が出なく
なっているはずなのに、次の場面(最終局面)では朗々と長話を続けていたり、
とある女性の年齢設定に無理があるなど、大雑把な箇所が目につき、ツッコミ
どころがけっこう多いのも事実です。怪奇ミステリみたいな類をあまり
読んでいない私なので正直よくわからないのですが、この程度のゆるさは
問題ない範疇なのでしょうか?

ホラー要素はあれど、私のような怖がりでも問題なく読める範囲だし、
サスペンスに本格推理的なものがごちゃ混ぜなせいか、筋書きが散漫気味、
八方美人的に薄っぺらで、その点多少物足りない気がするのを横に置くと、
私としてはのめり込み続きが気になって、あっという間に読み終えましたよ。

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先の旅で読んだ本~女王蜂

2023-10-11 19:08:00 | 図書館はどこですか




先の北海道旅行・秋編で読んだのが「女王蜂/横溝正史著」です。金田一ものの長編で、
往きのフェリーで四分の三ほど読み終え、残りは道中で読んでしまいました。映画化
されている割には(主演は中井貴恵さんだったような…)知名度がイマイチ高くないのは、
横溝さん自身、ベスト作品に選んでいないように、有名作品に比べると完成度がやや
劣っているとみなされるからですかね。でも、とても面白く読み進められました。
「三つ首塔」と同じような冒険+サスペンスを中心に置きながら、それに本格推理を
加味したてんこ盛りの内容で、サービス精神たっぷりなんですよ。


         

旅のお供とするのは、こうした推理もの、サスペンスものが、肩がこらずに読めて最適
なのかも。帰路の船で純文学ものを読み始めたところ、これがやはり私にはなかなか
手ごわくて、半分程度しか読めませんでした。その続きは、次の道中となりそうです。


    

こちらは、旅先の図書館で読んだ「名探偵のはらわた/白井智之著」の表紙の再掲分です。
ちょっとグロい場面はあるけど、二重三重に張り巡らされた伏線を論理的な推理で手際よく
回収、面白くて気に入ったので、もう一度ご紹介しておきます。

カバーイラストは遠田志保(えんた しほ)さんで、今村昌弘さんの「屍人荘の殺人」なども
手掛けられるなど、キュートで魅力的な女性を描かれますよね。アニメ「幼女戦記」の主役
『ターニャ・デグレチャフ』(推定年齢:8~10歳くらい)がはたち前後まで成長すると、
こんな感じのイカすウェーブになるのではと想像してしまいます。存在X(≠神)との
戦いに敗れることなく生き延び、「妖女戦記」、その日が来るのを楽しみに待ちましょう。
    

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