活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

TOP RUNNER  プロ・フリーダイバー 篠宮龍三

2009-06-07 00:07:51 | 映像の海
2009年6月6日 午前0時10分~
MC:箭内道彦(クリエイティブディレクター)
   SHIHO(モデル)


※ 写真は、篠宮龍三氏のHPより。

普段、テレビは殆ど観なくなって久しい。
朝、出勤の支度と朝食を進めながら、時計代わりに観るくらいな
もので、夜に帰宅したときに、電源を入れることはまず無い。

ただ。
昨日の夜。
風呂上り。
冷えたビールを飲みながら、何気なく見た夕刊のテレビ欄に、
このキャッチコピーを見た。

「水深105メートル グランブルーの世界へ」

番組名を見ると、NHKのTOP RUNNERである。

そのキャッチコピーに吸い寄せられるように、
主電源を投入。
観始めるや、そこで静かに海の魅力を語る男、
篠宮龍三に、僕はすっかり魅せられてしまった。


彼の話を聞いていると。

その穏やかな口調で語るその言葉の端々から。
伝わってくる、海の匂い。

それは、身体の周囲に渦を成し、体表を流れる水流の感触さえ
感じられるような…。
更には、ごぼごぼという気泡が砕ける音さえ聞こえるような…。

そんな、不思議な幻覚を、つかの間楽しむことが出来た。


この番組の中で紹介されたフリー・ダイビングのスタイルは、
スタティックとコンスタントの二種。

スタティックは、文字通り水面で静止し、息をどれ位止められるかを
競う競技。

コンスタントは、水面から垂直に潜降し、どこまで到達できるのかを
競う競技。

その競技について。
篠宮が語った言葉。

 ”闘争心は、邪魔”

競技、なのでなる。
相手が人であれ、自然であれ、何かと競い合うことを競技の定義と
すれば、それを行うに当たって闘争心が邪魔になるというのは、
どういうことなのか?

その理由を、篠宮はこう説明する。

どちらの競技も、自分の肺の中の空気のみを糧として行う。
その際に重要なことは、人の身体でもっとも酸素を多量に費消する
組織である脳を、如何に低燃費を維持しつつ、競技に必要な判断等
を行っていくか?ということである。

その、二律相反することを実現する上で、タイムであれライバルで
あれ、競うというテンションを持った瞬間に脳の酸素消費は高まり、
記録の更新は望めないものとなってしまうのだ、と。

つまり、フリー・ダイビングとは、競技でありながら何かと競うの
ではなく、自分の体内からと、自然の海からの双方の声を虚心に
聞き続けることで、行うスポーツなのだ。

その両者の声をきちんと聞くために、必要なこと。

それが、海に対するリスペクトであり、そのことを彼は次のような
美しい表現で総括する。

「海は自分を映す鏡」
「リスペクトせずに入れば、必ずしっぺ返しを食う」


古代エジプトはバケト二世の墓のレスリングの壁画や、
古代ギリシャのパンクラチオンの例を紐解くまでも無く、古来、
スポーツは競う、という点をこそ、その原点においてきた。

それが、現代になって、競わない新たな競技というスタイルを確立
できたことは、人類の文化的成熟を指す、一つのバロメーターと
言えるだろう。


現在。
篠宮は、沖縄にその居を構え、トレーニングを行いながら、フリー・
ダイビングの振興に尽力している。

彼は、沖縄の海について、沖縄の陸と同じような穏やかさを持つ海だと。
だから、大好きなんだと語る。

その目線の先にあるものは、ONE OCEAN
(ひとつのうみ)
という観念を、全ての人が共感できるようになる、
という夢。

壮大過ぎる。大風呂敷。
ともすれば、そうも捉えられかねないスケールの夢である。
だが、彼の地道な営みは、既に多くの輪を生み出してきているのだ。

そうした啓蒙活動も。フリー・ダイビングも。
全てを含めて、楽しい。そう彼は述懐する。

そう自然に思える彼だからこそ。
水面の波紋のように、広がってゆく輪があるのだ。


(この稿、了)

このコラムを書いていると。
ああ。
また、海に抱かれに行きたくなってきた。

(付記)
再放送は、BS 2 6/10 早朝3:00から。
※ 地上波での再放送は、無いようです。


彼が、学生時代に観てフリーダイビングに関心を持つきっかけと
なったという映画。美しい映像を、堪能してください。
グラン・ブルー<グレート・ブルー完全版> [DVD]

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「トップランナー」からスピンオフした本。
番組の中で語られた、様々なトップランナーの思いが凝縮して
います。
NHK「トップランナー」の言葉―仕事が面白くなる! (知的生きかた文庫―BUSINESS (え13-1))
NHK『トップランナー』制作班
三笠書房

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フリー・ダイビングを描いた漫画では、これが最高と僕は
信じています。
Glaucos(1) (モーニング KC)
たなか 亜希夫
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彼に、何が有ったのか…。合掌。
海の人々からの遺産
ジャック マイヨール
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