活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

国際科学映像祭ドームフェスタ in ソフィア堺 3日目観戦記(その4)

2012-10-06 08:54:39 | 映像の海



■Awesome Light3(26min.) アメリカ


ハワイのマウイケアは、有名な天文台銀座。

日本のすばる天文台も含む、計12基もの天文台が、
軒を列ねている。

正に、天文台長屋である。

この映像は、その中の(恐らくは)ハワイ大学が建設した
天文台において、そこで観測を行う人々へのインタビューや
周辺の情景を含む、様々なシーンを映しだしていく。

ただ…。
残念なことは、インタビューとなるともうお手上げ。

殆ど会話の内容も分からないままに終わってしまった
というのが、正直な感想である。


従って、評価はつけようがない。

日本でいえば、かつての「PROJECT X」のような様々な
エピソードが語られていたとしても、それが理解でき
なければどうしようもない。

まだ、映像であればそこから伝わるものもあるが、
言葉で語られてしまっては、そのキラキラとした目や
楽しそうな口ぶりといったレベルでの共感はできても、
所詮はそこまでであった。

ということで、この作品に関する感想はここまで。



■インターミッション

ここまでで、午前中の上映予定は全て終了。

午後の上映開始までは、1時間の昼食タイムである。

が。
その間の時間を利用して、2本の映像が参考上映される
という。

一つは、

 ・Additional screening 「Escher's Universe(25min.)」
   ※ Additional screening :追加上映の意。

もう一つは、
 ・「The Zula Patrol:Down to Earth(24min.)」


なんと。
両方とも観れば、昼食を食べる時間は皆無である。

なんでも、元々Escherの方は昨日上映する筈が、スケ
ジュールが押してしまったのか上映できなかったために、
急遽ここに押しこむことにしたようである。

主催者の方の、なんとか準備した作品は全て上映したい!
という熱意は十分に伝わったが、両方を流せば昼食はおろか
トイレ休憩さえままならないとは、なかなかな無茶ブリで
ある。

さて、自分はどうしようかと、シクシクと痛む目を揉み
ながら一瞬考えたが、ここまできたら!と観続けること
を決意する。

なに。
一回くらい昼ごはんを抜いても、死にはしないさ。



■「Escher's Universe(25min.)

エッシャーといえば、”錯視絵(騙し絵)”やモザイク
模様の繰り返し絵で有名なオランダの画家である。

それくらいは分かっているが、裏を返せばそこまで。
個々の作品については、代表作とされるものであっても
タイトルを知っているものもないというお粗末なレベル
故に、どこまで楽しめるかと心配であったが、映像が
始まるや、その作品世界に引き込まれてしまった。

作品は、そのエッシャーの作品をモチーフに、シーンを
積み重ねていくように構成されていた。

前段は、「Hand with Sphere」や「Drawing Hands」、
「Belvedere」といった作品に描かれた不思議な空間を
カメラは追っていく。

ただ、この時点では。
この作品の監督は、その描画の視線を作品世界の中では
なく、外に置いているように思えた。

勿論それは、意図や思いがあってのことであろうが、
僕としてはもっとどっぷりと、自分があの奇妙な世界の
中に入り込んでしまったかのように思えるような感覚に
誘って欲しかったと感じたのである。

スティーブン・キングの怪作に「ローズ・マダー」と
いう作品がある。

ストーカーの夫から逃亡を続ける妻。

その妻が、逃避行の中で一枚の絵画を手に入れたことを
きっかけに、二人の追跡劇はそのステージをリアルから
幻想の世界へと移行し、そこで二人はついに対峙する…。

というストーリーなのだが、この中で妻(ローズ)が
彷徨い込む幻想の世界の描写が凄まじい。

夫が見せる偏執性と、絵画の中の世界という異常空間。
その二つの狂気が主人公を追い込む。
それはまた、主人公に同化してストーリーを追い続ける
読者をも追い込むこととなる。

読んでいて、もうなんともいえないヒリヒリ感を味わった
ものだが、出版社側も同じ思いを感じていたことは、
本作品の文庫版の帯コピーにも見て取ることが出来る。





そうした感覚が、この映像を見ている時にも感じたいと
思ったのだ。

ところが…。


描かれる対象が、錯視画からモザイク模様に変わって
いくにつれて、その印象は変わっていく。

「昼と夜」や「空と水」、「爬虫類」といった作品の中で
見られたモザイク模様が画面に延々と繰り返されていく。

されを観ているうちに観客は、エッシャーが生み出した
トロンプ・ルイユ(騙し絵)の世界に否応なしに組み
込まれていくような不安感と、自分の周囲が寸分の隙間
もなく固められていくことによる奇妙な安定感という、
相反する二つの感情に襲われることになる。

観終わった後も、自分が現実の世界に立ち返ってきた
のだということを、改めて五感を用いて再確認する
必要に駆られるほどの、不思議な感覚。

これこそは、今回の基調講演でダン・ネフス氏が説いた
ドームシアターは、観る者の五感を総動員することで、
その世界に観客を引き込むことが出来るメディアだと
いう主張を体現したものだと思う。

いい映像だった。


この作品は、参考出展ということもあってか、国際
科学映像祭のHPにもyoutubeでのトレーラーがUPされて
いなかった。
(正式出品されている中にも、UPされていないものは
 あるけれど)

参考までに、こちらを御紹介して締めくくろうと思う。

今回の映像とはテイストが異なるけれど、エッシャー
ワールドを映像化しようとする、その志は感じることが
できる動画です。


不思議動画 エッシャー



こちらは、今回の作品とテイストが似ている映像。
見比べてみるのも、面白いと思う。
Escher




(この稿、次でラスト(の予定))




M.C.エッシャー [DVD]
クリエーター情報なし
レントラックジャパン


だまし絵の描き方入門―エッシャーの描法で不思議な絵が誰でも描ける
クリエーター情報なし
誠文堂新光社



ローズ・マダー〈上〉 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社


ローズ・マダー〈下〉 (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社

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