活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

模索■HAYABUSA、いのちの物語(その3)

2011-05-22 03:08:17 | 宇宙の海

HAYABUSA、いのちの物語
開催日時:2011年5月5日(木) 14時~ 約1時間半
会場:すばるホール 2階ホール
主催:財団法人 富田林市文化振興事業団
協賛:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
講演者:上坂浩光氏(HAYABUSA BACK TO THE EARTH監督)



■邂逅

はやぶさの、あの劇的なタッチダウンから2年後に製作された
CGムービー「祈り」。

その作品の映像制作を担当する中で、監督ははやぶさが地球に
帰還する姿を観て、自らの生み出した映像ながら涙が出た、と
語る。


そして。

いつか、自分の手ではやぶさと彼を巡る物語を紡いでみたい。
そうした感情が、監督の心底に収積されていったそうだ。


その監督の思いが、具体的なものとして動き出したのは。
東京は、代々木の地からであった。


2008年3月24日から四日間に渡って、東京・代々木にあるオリン
ピック記念青少年総合センター
にて開催された日本天文学会の08年
春季年会



実際に演者が口頭で行う講演だけでも、379。
ポスター展示による講演を入れるとその総数は629となる、
日本の天文学上の一大イベントである。


当然。
講演のジャンルも、多種多様に及んでいる。


 ・外線・サビミリ波で探る赤い宇宙の形成の進化
 ・『あかり』で探る銀河系・近傍宇宙での物質循環

その他、高密度星、超新星爆発等、総計18ものジャンルに
分かれて開催された講演群の中に、

 ・天文教育/その他

として括られたものがある。


文字通り、学校教育等のテーマが取り上げられることが多い、
このジャンルにおいて。

大会初日の3月24日。
「教育/太陽系」用のB会場にて、13時からの皮切り講演として
割り当てられたものこそが、

 ・癒し系音楽ビデオ「祈り~小惑星探査機はやぶさの物語~」を
  使ったアウトリーチ活動とその反響
であった。

主演者は、当時はまだ徳島県立あすたむらんどに在籍されていた
吉住千亜紀氏。

そして。
吉川 真、森 治 (JAXA)、尾久土 正己 (和歌山大学)と並んで、
「はやぶさ」ビデオ企画委員会の名前もエントリされている。

この講演では、科学ミッションを紹介するビデオの嚆矢としての
「祈り」の意義、そして公開後の反響等に基づく今後の方向性に
ついての考察が主なテーマであった。

この会場にて。
監督は株式会社リブラの田部一志社長の媒(なかだち)により、
初めて大阪市立科学館の飯山学芸員と知己を得る。

HBTTEのファンであればご存知の方も多いと思われるが、
株式会社リブラはプラネタリウム番組の製作や運営コンサルを
主な生業としている会社である。

その社長が、大阪市立科学館にてちょうどフルドームシアターを
活かした作品を創りたいという話があることから、会場にて監督を
紹介されたということである。

こうして。

映像をクリエイトする手段を模索していた飯山氏と。
製作に向けた費用や上映場所等の資本を模索していた監督と。

そして。
何よりも。
自らのはやぶさを創り上げたい!という点において同質の熱意を
持つ二人が邂逅した。

この時が、正しくHBTTEが世にその歩みをはじめた瞬間と
言えるのかもしれない。

そう。
文字通り。
思いの「火」と「火」が重なりあい、「炎」となったのである。

更に。
JAXAの吉川真先生も加わって。
こうした作品を生み出したいという四者それぞれの思いが、
スパークを飛び交わさせていた…。


■模索

こうして。
監督による、はやぶさを主人公に据えた物語の製作が始まった。

といっても。
大阪市立科学館の責任者のまでのプレゼンに通らなければ、監督
率いるLiVEではやぶさの物語を創ることは出来ない。

そのための、まずはシノプシス作りから製作はスタートした。

当初の監督の構想では。
はやぶさミッションチームを中心に据えたドキュメンタリー風の
作品を考えられていたようである。

これは、はやぶさについて知れば知るほどに、彼らミッション
チームがもはや仕事というよりも人生を賭けてはやぶさに対峙
していることをひしひしと実感したためである。

そのため、当初の作品のコンセプトは、

 ・ロケット開発とはやぶさプロジェクトへのオマージュ

というものであった。

ところが。
この、監督の構想を聞いて。
LiVEのとある社員が猛然と反対したのだとか。

その、理由は。

JAXAの人々とはやぶさの物語となれば、そこに自らを投影
することは出来ない。
結果、そこに生み出される物語も勢い傍観者風にしか見れなく
なってしまう…というものであった。


その意見に対する評価は、様々だろう。

純粋にはやぶさの軌跡のみを追うストーリーとすれば、確かに
感情移入もしやすいことは理解できる。
(そして、結果としてHBTTEはその形に結実した)

だが…。
その決め付けは、映像の持つ力を矮小化し過ぎてはいないか?

様々な人物が交錯し、織り成す物語といえば、正に通常の映画
そのものではないか。

スクリーンの登場人物に己の人生を仮託して、つかの間の生を
体験する。

そして、優れた作品は、それを観た観客に自らの生き方をも
変えさせる力を持っている。

それこそが、映画空間の持つ力だと思うのだが…。


ともあれ。
そうした、当初検討したシノプシスに対する否定的な見解以外
にも、監督を悩ませる問題があった。

それは。
フルドームシアターの持つ、4Kピクセルという桁外れの解像度
である。

(この稿、続く)



(付記)
はやぶさ帰還1周年を記念した講演会が、株式会社リブラも協賛
する中で準備中である。

6月12日(日)と、ちょうどロケットまつりと重なっている
日程なのが痛いけれど、さてどうしたものか…。

ちなみに、講演会では川口教授や監督、その他の豪華な顔ぶれが
予定されている。

お申し込みは、上記のリンク先にある要項からどうぞ。






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