活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

SELENE(かぐや)搭載カメラによる月面の縦穴発見

2009-11-14 11:16:00 | Webの海
出典:ISASメールマガジン 第267号【 発行日- 09.11.03 】
記 :固体惑星科学研究系 春山純一(はるやま・じゅんいち)
タイトル:SELENE(かぐや)搭載カメラによる月面の縦穴発見
 ~月面下の溶岩チューブ(溶岩トンネル)存在の可能性~ その裏話

※ この記事の原文は、こちらで読めます


※ ISASメールマガジンのお申込は、こちらから


(「はやぶさ」の無事帰還を、月の女神セレーネに祈念しつつ)


月面と聞いて、皆さんはどのようなイメージを思い浮かべるだろうか?

ロマン派ならば、ウサギが餅つきをしている童話的、牧歌的な印象?

リアル派ならば、夜昼の温度差が-200℃~100℃にも及ぶ過酷な土地?

科学派ならば、アポロ11号の初着陸の際の足跡?
(「インデペンデンスデイ」が好きなシャドー81さんは、こちらかな?)



実際。
この温度差の激しさが、月面での活動の阻害要因の大きな一つだろう。

人にしろ、人工物にしろ。
その温度差に耐えうるだけの強度を宇宙服なり外装に持たさなければ
ならないのだから。

その他。
絶え間なく降り注ぐ宇宙線。太陽フレア。隕石…。
それらへの対応を考えたとき。

そのハードルは、必然的に高くならざるを得まい。

だが、そのハードルを下げる方法がある。

それが、地下基地の建設である。

勿論、資源採掘を兼ねて掘削すればいい話なんだけれど。
資源の領有権の整理とか、そうした資材の運搬とか。
その他、無数にある問題を考えれば、それが実現できるのは、
SFの世界でのお話。

…だった。
先日までは。


その壁を、一気にブレイクスルーするきっかけとなるかもしれない
発見が、先日SELENE(かぐや)搭載カメラによって撮影された
月面の映像からもたらされた。


それが、溶岩ドーム(溶岩が流出した後に遺された天然の地下ドーム)
であり、世界で初めて月面でのドーム発見に至った秘話を伝えたのが
今回取り上げた記事である。


(※ 出典は、JAXA提供原版に山陽新聞がスケールを記載したもの
(山陽新聞Webニュースより (10月24日18時49分))


改めて記事を読み直す。

発見の興奮。
詳細な分析により規模が明らかになるにつれ起こる衝撃。
(その規模感をよく表している毎日新聞掲載の図版)


出典は、毎日新聞Webサイト 毎日新聞.jp 2009年10月25日より

ついで。
その事実を如何にしてより早く、より科学的に価値のある形で
世に知らしめるか?という問題との戦い。

どちらも、思わず固唾を呑んでしまうような緊張感と、頑張れ!
と応援したくなる思いに満ちている。


前者の発見秘話については。
そもそも、溶岩ドームの存在そのものは、40年も前。アポロ
計画の頃から研究者の間では予見されていたらしい。

地球の火山(例えば、ハワイのキラウエア火山)でも、その形成は
確認できるとのことなので、月もその黎明期に火山活動があったと
すれば、溶岩ドームは発見されても何もおかしくない。

それでも。
今日まで、様々な国が行ってきた月面の観測活動を通じても、
この溶岩ドームは発見されなかった。

アポロ計画と平行して進められたアメリカのルナ-オービター
計画では。
5機の無人観測衛星が、なんと月面の99%を60mの分解能で
撮影していた、という。


(※ 出典は、NASA(画像提供はJAXA HPより))



にも関わらず。
今回発見されて溶岩ドームは、僅か数百mのずれにより、そのレンズに
捉えられることはなかった。

この記事を記した春山助教授は、もし当時にこのドームが発見されて
いたら、人類の月面開発は全く異なる進捗を見せていたかもしれない
と残念がる。

確かに、地上で枯渇しつつあるレアメタルを中心とした資源確保や、
恒久的な宇宙観測の橋頭堡として、このドームを活用しようという
機運が盛り上がれば、ずっと早い時期から月面基地構想が浮上しても
おかしくなかったであろう。

そう思う反面。
まだ人類は、早すぎたプレゼントだったからこそ、見つからなかった
のでは。とも思う。

勿論、日本の科学者と衛星によって発見されたことも喜ばしいしね。


後者の情報公開に向けた戦い(論文執筆)については。
論文の学術誌への掲載などという営みに、これまで、そしてこれからも
全く縁が無いと言い切れる文系人間の僕にとっては、非常に新鮮かつ
興味深い記述だった。

雑誌刊行のスケジュールや、論文精査のスピード感。
また、学術誌そのもののステイタス等を考慮した、掲載誌の選定。

ついで、論文の執筆とその提出。
そこでの、編集部、ならびにレビューワーとのやり取り。

ダメだしを何度も食らいながらも、都度見直しをかけて再提出。
そして”遂にアクセプトされ、in press(印刷中)”という連絡を
貰ったときの、春山助教授の興奮と安堵が、記事からはしみじみと
伝わってきて、こちらも思わず肩に入っていた力が抜けたことを
実感した。



2007年9月14日に、種子島射場から打ち上げられて以降。
数多月面の映像をハイビジョンで捉え、送り続けてくれた「かぐや」。
彼女は、つい先日。
2009年6月11日に、その使命を終えて、月へと還っていった。

でも。
彼女と、そのお供の衛星(「かぐや」は、「おきな」と「おうな」
という伴星を搭載しており、月周回軌道に入ってから分離。それぞれ
別の目的の観測に従事した)が送ってくれた画像や映像、データは。

今回の溶岩ドーム発見のように、様々な新事実を僕達にもたらして
くれることだろう。


特に、今回の溶岩ドームの発見が。
実用段階に入るときを、この目で見ることが出来るのかどうか。
それは分からないけれど。

幼少の砌からのSF好きとして。
出来れば、そうした時代まで生き延びて、本格的な宇宙開発時代を
実感してから旅立ちたいものだと、そう願う。


(この稿、了)

月のかぐや
JAXA(宇宙航空研究開発機構)
新潮社

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