活字の海で、アップップ

目の前を通り過ぎる膨大な量の活字の中から、心に引っかかった言葉をチョイス。
その他、音楽編、自然編も有り。

影を慕いて■KAGAYA監督トークショーinわかやま館(その10)

2011-12-30 02:35:28 | 宇宙の海

日時:平成23年8月20日(土) 午後2時~
場所:わかやま館1Fイベントホール
主催:みさと天文台友の会
テーマ:「星への憧れ-宇宙と神話の世界-」
写真画像提供:@j_pegasus(わかやま館元シアターディレクター村田氏)
CG画像提供:KAGAYA氏(※ 掲載は、氏の許可を得て行なっています)

<Atention>
 このレポートは、KAGAYA氏のトークショー、ならびにその前後に
 氏に対してブログ主が行った質問等を再構築しております。
 内容に関して事実と齟齬等有った場合には、その責は当然ながら
 全てブログ主に帰します。



■影を慕いて

北上川のほとり。イギリス海岸と呼ばれている河川敷の横を通り、
内陸の花巻から釜石方面へと向かう仙人峠までの約64Kmの距離を
結んで。

かつて、岩手軽便鉄道と呼ばれた汽車が。
夏は、絞れるような濃緑の中を。
冬は、全てを包み込もうとする灰色の重しを纏いながら。
ごとごとごとごとと、その小さな車体を走らせていた。

※ 軽便鉄道は、主に”けいべん”と発音するが、地方によっては
  ”けいびん”とも呼称するようである。
  ちなみに岩手では、”けいべん”と発音されていた。



(路線図画像提供:Wikipediaより)

今から、約百年ほども昔。
大正から、昭和初期にかけての時代のことである。

この汽車が、賢治の生み出した銀河鉄道のモデルであることは
よく知られているが、残念ながら今はもう当地では、その走る
姿をみることは適わない。


線路についても、似内(にたない)から釜石方面はJR東日本の
釜石線として路線図上は残っているが、それも線路幅(軌間)の
関係もあり、往時の線路はもう使用されていない。

 ※ 岩手軽便鉄道 : 762mm
   JR東日本 釜石線 :1,067mm

更に、花巻市内はかつての終着駅だった軽便花巻から似内まで
の間は、路線さえ別ルートとなってしまっている。


ちなみに。
花巻市内の旧路線のルートについては、hamagakiさんが主宰を
されているブログ「 宮澤賢治の詩の世界」の中に、グーグル
マップの上に路線図をマッピングしていただいているものが
UP
されている。

これを見ていると、イギリス海岸と軽便鉄道の位置関係等が
一目瞭然である。

また、実際に市内の路線跡の現状については、鷹羽雅人さんが
主宰するブログ「Cafe Dragoon」内の
旅の記録の廃線・廃道・道路関係に収められている「釜石線
(旧岩手軽便鉄道)旧線区間(花巻~似内間)
」に、実に
丹念にかつての線路跡の情景がUPされている。

そこには。
鉄道の線路が走っていたことを示す面影は、既に殆ど残って
はいない。

それでも。
路線跡の県道の写真を眺めていると、なんだか二重写しに
線路やそこを走ってくる軽便鉄道の姿が浮かび上がってくる
ような感覚も沸き上がってくるから不思議である。


更には。
往時の軽便鉄道そのものの面影を知りたい方には、こちら。
楓ちゃんさんが主宰されているブログ「楓村通信」の中の
「軽便追想」~過ぎ去りし夢の世界へ~ に、JR東日本
花巻駅構内にパネリングされている軽便鉄道の写真がUP
されている。

#しかし、蒸気機関車はセピアな写真がよく似合うなぁ。


いずれも。
賢治の面影を訪ねて、花巻を散策する際には是非連れ出したい
ページである。


そして、いよいよ。
満を持して登場するのが、KAGAYA氏による取材の模様である。

まずは、KAGAYA氏ご自身のHP「KAGAYA STUDIO」内にある
「銀河鉄道の夜」メイキングより。

【エピソード6】岩手軽便鉄道の取材では。
トンネル跡の廃坑等の遺跡を訪ねていくKAGAYA氏の遠景を、
眺めることができる。



そして、更に。
氏のご友人である加倉井厚夫さんが、2003年の5月にKAGAYA氏と
一緒に花巻を訪ねた際のルポ「イーハトーブの春旅」にも。
KAGAYA氏が写っているものも含めて、様々な写真がUPされている。

この旅では、帰路の途中で宮城県沖で発生したM7.1の地震
遭遇し、電車がストップしてしまい、八戸駅で新幹線泊するといった
ハプニングにも遭遇されたようだが、そうしたエピソードも含めて尚
とても楽しそうな雰囲気がよく伝わってくる写真ルポである。


ちなみに、この写真に写っている宮守橋は。
花巻市内から約30Kmほど太平洋側へ向かったところにある橋
である。

この橋にイメージを喚起されて、KAGAYA氏は「銀河鉄道の夜」の
あの冒頭の美しいシーンを生み出したのだろうか…。

リミテッドエディション(限定版画)
          「旅立ちの渚 The shore for Setting out」


更に補完すると。
岩手軽便鉄道が通っていた頃の宮守橋の写真が、こちらのページに
UP
されている。

賢治も、かつて。
この鉄道に乗って行き来したのだということを思うとき。
しみじみと、感慨深いものがある。


長らくと、イギリス海岸や岩手軽便鉄道にまつわる影を追って
きた。


今回のトークショーにおいても。

この鉄道やイギリス海岸に、賢治の銀河鉄道の残照を求めて。
何度も花巻に通いつめたというKAGAYA氏の述懐があったことは
既に紹介した。


そのようにして、KAGAYA氏は。

宮守橋の橋脚を見上げて。
そこから天に駆け上がっていく銀河鉄道の幻影を見。

リミテッドエディション(限定版画):「銀河の彼方」

旧暦のお盆に北上川で行われる灯篭流しに、烏瓜(カラスウリ)に
ロウソクをつけて流す星祭りを連想し。

リミテッドエディション(限定版画):「光の川へ」

イギリス海岸で拾ったバタクルミの化石に、プリオシン海岸の
渚を重ねあわせ。

リミテッドエディション(限定版画):「プリオシン海岸」

草木の中に埋もれるように、永劫の静謐の中にあるトンネルの
遺構では。

トンネルの内壁にこびりついていた煤を観て。
その遺構がかつて”生きていた”証のような気配を身近に感じ。

リミテッドエディション(限定版画)
         「銀河へ続く道 The way to Fantasy Railroad」


その廃線の線路脇に咲き誇るりんどうの花に、銀河鉄道の車窓から
カムパネルラとジョバンニが見た情景を思い出す。

リミテッドエディション(限定版画)
         「秋の軽便鉄道 Fantasy Railroad in autumn」


このりんどうの花言葉は。
「悲しみに沈むあなたを愛す」というもの。

どういう経緯で付けられた意味かは不明だが、まさにこの物語の
ためにあるような言葉である。

#まあ、博識な賢治がその言葉も知っていた上で、この物語を
 生み出したと考える方が自然だけれど。


そして。
イギリス海岸では、天の川がちょうど川面にかかる情景を観て。
日本からは見えない、遙かなサウザンクロスを思う。


リミテッドエディション(限定版画)
         「サウザンクロス Southern Cross」


 ※ 画像は、クリックすると拡大します。
   いずれの版画も、アールクールのKAGAYA オンラインストアにて
   好評発売中です。
   もう少し手に入りやすいものであれば、末尾のリンク先に
   ある絵葉書セットがあります。


こうした繰り返しの中で。
氏の「銀河鉄道の夜」が、徐々にその姿を見せていったのである。


「銀河鉄道の夜」予告編(日本語版)


(この稿、続く)


(付記)
ささやかなる、トリビアを。

「銀河鉄道の夜」に出てきた機関車の汽笛や車両の走行音は、
岩手軽便鉄道と同型車両が今も運行されている明治村にて
氏が収録してきたものである。

博物館明治村の蒸気機関車





【KAGAYA】銀河鉄道の夜 絵はがき8枚セット art by KAGAYA
クリエーター情報なし
アールクール

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