春たけなわの候、野山に自生して、しかもたいそう美しい花の木に、躑躅(つつじ)がある。
躑躅はまた、観賞用に庭園や公園など、いたるところに植えられ、春から夏にかけて漏斗(ろうと)状の花を開く。
種類もはなはだ多く、植物のスペシャリストから、次のように教えられた。
「“紅もゆる”とうたわれるのはヤマツツジで、紫紅色でガクの粘るのがモチツツジ、枝端に三枚の葉のつくのがミツバツツジ、朱色系のがレンゲツツジ――と知っていれば山地の目立つ躑躅はマスターできる。
庭園で、濃紅色の小花はキリシマツツジ、粘性で白はリュウキュウツツジ、紫紅がオオムラサキ、ピンクがヒラドツツジ、濃赤だったらケラマツツジ……」と。
躑躅わけ親仔の馬が牧に来る 秋櫻子
躑躅(つつじ)というむずかしい文字は、漢名の躑躅(てきしょく)をそのまま借りてきたものという。
躑躅(てきしょく)とは、羊がこの花を食べると有毒なので、膝を折って倒れるという意味。しかし、ヤマツツジの花は、毒がうすく、子供が取って食べている。
一説に、「羊の性至孝ナリ。コノ紅キ莟ヲミテ、母ノ乳房ト思ヒ、膝マヅキテ之ヲ吸フ、故ニシカイフ」とある。
春さりゆかば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道(ぢ)の
丘辺の路に 丹つつじの……
『萬葉集』巻六、高橋虫麻呂のこの長歌にあるニツツジは、今のヤマツツジのこと。同じく巻七の、
山越えて 遠津の浜の 石躑躅
わが来たるまで ふふみてあり待て
というイワツツジは、おそらくモチツツジであろう、と言われている。
昔は、このイワツツジが最もよく知られていて、『源氏物語』少女(おとめ)巻にも、
「御前近き前栽に、五葉・紅梅・桜・藤・山吹・石躑躅などやうの春の翫びを……」
とある。
吾子の瞳に緋躑躅宿るむらさきに 草田男
昨日は、東京の躑躅の名所を紹介したが、全国の躑躅の名所には、九州の雲仙・霧島山、近畿地方で保津川、中部地方から東へ来て、八ヶ岳・箱根・館林・那須など、数々ある。たいていは、キリシマツツジ・ミヤマキリシマなどの赤い花が多く、盛りの季節には、全山紅に燃えるがごとき壮観を呈する。
稜線の瘦せゐしところ山つつじ 季 己
躑躅はまた、観賞用に庭園や公園など、いたるところに植えられ、春から夏にかけて漏斗(ろうと)状の花を開く。
種類もはなはだ多く、植物のスペシャリストから、次のように教えられた。
「“紅もゆる”とうたわれるのはヤマツツジで、紫紅色でガクの粘るのがモチツツジ、枝端に三枚の葉のつくのがミツバツツジ、朱色系のがレンゲツツジ――と知っていれば山地の目立つ躑躅はマスターできる。
庭園で、濃紅色の小花はキリシマツツジ、粘性で白はリュウキュウツツジ、紫紅がオオムラサキ、ピンクがヒラドツツジ、濃赤だったらケラマツツジ……」と。
躑躅わけ親仔の馬が牧に来る 秋櫻子
躑躅(つつじ)というむずかしい文字は、漢名の躑躅(てきしょく)をそのまま借りてきたものという。
躑躅(てきしょく)とは、羊がこの花を食べると有毒なので、膝を折って倒れるという意味。しかし、ヤマツツジの花は、毒がうすく、子供が取って食べている。
一説に、「羊の性至孝ナリ。コノ紅キ莟ヲミテ、母ノ乳房ト思ヒ、膝マヅキテ之ヲ吸フ、故ニシカイフ」とある。
春さりゆかば 飛ぶ鳥の 早く来まさね 龍田道(ぢ)の
丘辺の路に 丹つつじの……
『萬葉集』巻六、高橋虫麻呂のこの長歌にあるニツツジは、今のヤマツツジのこと。同じく巻七の、
山越えて 遠津の浜の 石躑躅
わが来たるまで ふふみてあり待て
というイワツツジは、おそらくモチツツジであろう、と言われている。
昔は、このイワツツジが最もよく知られていて、『源氏物語』少女(おとめ)巻にも、
「御前近き前栽に、五葉・紅梅・桜・藤・山吹・石躑躅などやうの春の翫びを……」
とある。
吾子の瞳に緋躑躅宿るむらさきに 草田男
昨日は、東京の躑躅の名所を紹介したが、全国の躑躅の名所には、九州の雲仙・霧島山、近畿地方で保津川、中部地方から東へ来て、八ヶ岳・箱根・館林・那須など、数々ある。たいていは、キリシマツツジ・ミヤマキリシマなどの赤い花が多く、盛りの季節には、全山紅に燃えるがごとき壮観を呈する。
稜線の瘦せゐしところ山つつじ 季 己