壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

朝倉文夫

2008年04月18日 21時26分54秒 | Weblog
 初めてだった、宙を舞う屋根を見たのは。
 今朝9時過ぎ、突風が吹いたと思った瞬間、ベリベリという凄い音がした。
 窓の外を見ると、斜め前のクリーニング店の屋上の小屋の屋根が、突風で壊れ、屋根の三分の一が宙を舞っていたのだ。
 ほどなく、畳2枚分ぐらいの屋根が、道路に落下した。人通りがなかったのが幸いだったが、まだトタン板1枚が、光ファイバーのケーブルに引掛り、ゆらゆら風に揺れている。

 110番通報で、警察官と関電工?の作業員が駆けつけ、30分ほどで事なきを得た。
 テレビのニュースでは、よく見る光景だが、実際に見るとこんなに興奮するのだと、改めて感じた。 
 ケガ人こそ出なかったが、凄い光景を見てしまったので、外出は控えることにした。ほんとうは、谷中の「朝倉彫塑館」に行く予定だったのだが……。

 朝倉彫塑館は、彫刻家・朝倉文夫のかつての居宅を改造したもので、いまは台東区の所有となっている。
 鉄筋コンクリート造りの旧アトリエ部分と、丸太や竹をモチーフにした数寄屋造りの旧住居部からなっている。和洋折衷の特異な建築は、朝倉文夫本人の設計で、本人の意向が強く反映されているという。

 中庭の池と、5つの巨石の石組みもまた格別な日本庭園は、いつ訪ねても心安らぐ。大きなオリーブの樹が印象的な屋上菜園もいい。
 しばし縁側に坐り込んで、朝倉文夫を偲ぶ…、何と満ち足りた時間と空間であろう。
 その朝倉文夫は、昭和39年(1964)4月18日、急性骨髄性白血病で89年の生涯を閉じた。

 「見るだけでは物足りないから触ってみたいという、触感を誘うまでにその作品ができていれば、すこぶる傑作だということができる」
 という言葉を残しているだけに、朝倉の作品には、むしゃぶりつきたくなる作品が多い。やはり傑作が多いということであろう。
 代表作に、「墓守」「時の流れ」「大隈重信」「翼の像」などがある。

 展覧会に行くと、よく「作品には絶対に手を触れないでください」という表示を見かける。たしかに木彫は、手の汗や皮脂がついて、売り物にならなくなってしまうだろう。しかし、ブロンズや、陶磁器なら許してもいいのではないか。
 ただ、拝見する方も、指輪をはずすという、最低限度の心遣いは必要だ。
 先日見た「木彫二人展」にも、「作品には手を触れないでください」との表示がいくつもあったが、手を触れたくなるような作品は、皆無であった。


      吹抜けのそこに「墓守」風光る     季 己