壺中日月

空っぽな頭で、感じたこと、気づいたことを、気ままに……

グラヌラツィオーネ

2008年04月17日 23時40分52秒 | Weblog
 「三越イタリアフェア」が、日本橋・三越で開かれている(25日まで)。
 食料品、リビング用品、ファッションなどで、7階・催事場がごった返している。
 魚介類が苦手なわたしには、食料品売り場は全く興味がない。興味があるのは、工芸品の実演。
 いつ見ても感心するのが、シェルカメオの実演だ。
 今回は、人物モチーフを得意とする巨匠アキート氏と、古典芸術の雄セルベ氏が、実演のために来日された。
 女性の横顔を彫ったアキート作の、気品あふれるシェルカメオに感銘を受けた。もちろん、セルベ作のシェルカメオの神々しさも、素晴らしかった。

 今回初めて日本お目見えの「金細工の工房」、これがまた素晴らしい。
 この工房(会社)は、1950年の創業以来、さまざまな金細工製品を創作してきたという。
 たゆまぬ研究と熟練の職人技が生み出すジュエリーは、アンティークからモダンなデザインまで、伝統美と現代的なエトルリア様式とがもたらす芸術作品である。
 この独特な技法を、「グラヌラツィオーネ」(粒金加工)と呼ぶそうだ。こんな技法があることは、初めって知った。興味しんしんで、通訳の女性を通していくつか質問したが、いやな顔をせず、丁寧に答えていただき感謝している。

 「グラヌラツィオーネ」というのは、世界最古の金細工技法のひとつで、古代エトルリア人がすでに優れた技術を持っていたとされる。
 薄い金の板に描かれた図柄にそって、極小の金の粒を乗せ、溶接・加工していくのが特徴という。
 実演の方は2代目で、父親である初代の、長年にわたる研究と努力が、神秘の古代エトルリア人の金細工技術を、現代に蘇らせることを可能にしたのだ。
 実演を見ていると、薄い金の板には何も描かれておらず、極小の金の粒に接着剤のようなものをつけ、それを薄い金の板に次々と置いていき、ひとつの図柄を完成する。熟練と根気の要る、まさに神業のような作業である。

 この工房の作品は、すべてが一点もの。伝統的な金細工技術を用いて、完全な手作業で制作している。つまり、“世界でひとつだけ”の価値があるということ。
 数千年の歴史を持つ「グラヌラツィオーネ」技法により、現代的なイメージのジュエリーから、エトルリアや古代ローマの文明を発想するネックレス、宝石と組み合わせたペンダントなど、あらゆるデザインの製品を作り上げている。
 どの作品にも、際立った品質の良さと、美しさが備わっていて、出るのは“ため息”ばかり……。


      春雨と カメオの少女つぶやきぬ     季 己