滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

日本の森林ビジネス人材育成講座のお知らせと木のエネルギーと

2010-09-06 04:35:22 | お知らせ
一足先に秋です。ナナカマドやサンザシ、ガマズミの赤や橙の実が何とも温かく、綺麗です。朝方はもう10度近く、昼間は20度程度で直射日光が気持ちよいと感じられるほどになりました。

このところ私は「各種バイオマス尽くし」の毎日を送っていました。日本で10月にスイスのバイオマス利用についての講演させて頂くのと、年末に岩手木質バイオマス協会から発行される木のエネルギーの普及書に僅かながらスイスの事情を寄稿しているためです。

ところで、地球未来フォーラムの葉坂廣次さんから、先週、下記のお知らせが届きました。「日本の森の現状を正しく把握し、積極的に課題を解決しながらビジネスモデルを構想していく人材を育成・支援」するための講座への参加募集です。住宅づくりや森林NPOに携れている方、あるいはそういった分野での起業を考えておられる方で興味のある方は、下記サイトをご覧下さい。

(葉坂さんからのお知らせ)
第一次産業を支援する経産省の農商工・人材育成事業が募集開始。
テーマは、『森林ビジネス、今がチャンス』。間伐材でも住宅が十分造れるという 事例を学びながら、自らの活動プランを明確にできます。メイン講師は、農商工連携を作ったお一人で、当時大臣官房審議官だった大塚洋一郎氏をはじめ、実践者が多数。
開催場所は、東京(八重洲)での講義が4日(9・11・12・1月)。 
岐阜県での現地視察・研修が2回(10月)。
宿泊費も含め、助成金事業のため全てが“無料”のまたとない機会です。
締切は、9月6日(月)。詳しくは、↓下記ホームページをご覧ください。
http://www.noshoko-jinzai.net/
伊勢神宮の森を守る岐阜県・旧加子母村より

また、6月に私も参加させて頂いた一般市民向けの岐阜県加子母の森林ツアーについては、下記のサイトで参加募集を見ることができます。丸二という東京の住宅建設会社が、森林問題についての市民啓蒙の社会活動として主催されています。日本の人工林の現状と問題解決の糸口を加子母の森で、森林組合長さんなどから直接話を聞くことができます。9月と10月にも1度ずつ開催されていますので、関心のある方はこちらからどうぞ。
http://www.maruni-kashimo.net/tourform

話をバイオマス、特に木のエネルギーに戻しますと、日本でスイスやオーストリアのように木のエネルギーをいっそう活用していくためには、やはり日本の林業が持続可能な形で機能していることが前提となります。なぜなら木のエネルギーに使われるのは、主に森林からの低質材や木の建材として使えない部分、あるいは製材過程で生じる端材だからです。

木のエネルギー利用の基本は、木の資源のカスケード的な利用ですから、森から木が出ない、間伐も行なわれない状態では、木のエネルギーも経済的に作れません。反対に言えば、低質材や端材をエネルギー利用・販売することで、森林運営、木材生産における価値創出、経済性が高まります。

スイスの木質バイオマス利用でいつも言われることですが、何しろ、木のエネルギーは地元に流れるお金の額が大きいのです。設備費・燃料費・維持運営費・減価償却費を含めて、灯油暖房に支払う資金100フランのうち、60が外国に、25が国内に、そして地元に15が流れます。ガス暖房だと75フランが外国、10が国内、15が地元です。そして木質暖房の場合は外国に10フラン、国内が40フラン、地元が50フランという分配になります。

つまり、森林を持つ地方の公共建築や地域暖房で木のエネルギーで暖房や給湯を行なうことは、地域循環型の経済を作ることに繋がります。しかも、今日スイスでは木のエネルギーの価格(設備投資・運営・燃料費を含む)は、設計さえしっかりしていれば、灯油のそれと競争できるほどになっています。長期的に見れば、木のエネルギーの方が安くなるでしょう。

何だか、一般論になってしまいました・・。今日は本当はエネルギー農家の第四弾として、木のエネルギー農家の話をしたかったのですが、それは次回に報告することにします。


短信

ドイツ、オーストリアに追いつかないスイスのソーラー機器販売
ソーラーエネルギー機器の市場データによると、2009年度スイスでは、暖房・給湯用の太陽熱温水器の販売は29%、太陽光発電パネルは139%成長した。太陽熱温水器の施工面積は14.6万㎡で、物件数は1.6万台。その3分2が一戸建ての設備、2200台が集合住宅の設備となっている。しかし隣国のオーストリアでは同期間に人口1人頭にしてスイスの4.3倍の温水器が施工されている。今年よりスイスでも太陽熱温水器への助成が強化されたため、今後オーストリアとの差が縮まることが期待される。業界目標は2020年までに太陽熱温水器の普及度、1人頭1㎡である。対して太陽光発電パネルの2009年の設置出力は3.7万kW、27.5万㎡。ドイツは同じ期間に人口1人頭10倍の設置出力が施工されている。これは唯一、両国のフィードインタリフ制度の違いに起因する。

ノイエンブルグ州の風力プロジェクト、地域の電力供給の20%を予定
ノイエンブルグ州政府のエネルギー担当大臣は州政府に、新しい風力計画の中で、同州の5箇所に50基の風車を設置することを提案。ノイエンブルグ州の電力需要量は1000GWhであるが、風力パークは200GWhを生産する計算だ。同州では風力計画のほかにも、太陽光発電、深層地熱、木質バイオマスについての増産プログラムを現在計画中である。

ハンドサイクリング世界杯で金メダル、パッシブハウスを実践する車椅子の女性建築家
先週、カナダで開催されたハンドサイクリングの世界杯で、スイス人の女性建築家のウルスラ・シュバラーさん(34)が金メダルを獲得し、メディアから注目を浴びた。今回で4度目の世界一となる。彼女はスポーツ選手としての活動と平行して、環境建築で知られるルッツ建築事務所で働き、バウビオロギーやパッシブハウス建築を日々実践する。ラジオでのインタビューで彼女は、建築家としてゼロエネルギーハウス、プラスエネルギーハウスを実現したり、スポーツ選手として300kmの車椅子マラソンに参加することが目標だと話す。印象的だったのは彼女がスポーツに関しても、建築に関しても「エネルギー消費量を最小にして効率を最大に高めること」が大事、と言っていたこと。前向きで力強い彼女の今後の活躍が楽しみだ。
http://www.ursulaschwaller.ch/(シュバラーさんのホームページ)
http://www.lutz-architecte.ch(エコ&省エネ建築のルッツ建築事務所)

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