滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

大手小売会社のミグロスが電気自動車販売に参入

2010-06-09 04:27:42 | 交通
スイスのスーパー、デパートのチェーン店ミグロス(Migros)社が先月、電気自動車の販売に進出することを発表しました。ミグロスは、スイスの小売業界ではナンバーワンのシェアを持つ企業です。

ミグロス社はM-Wayというプロジェクトを立ち上げるために約2500万フラン(約20億円)を投資。M-Wayでは、電気自動車や電気スクーターの販売やリースのほか、保険、融資、メンテナンス、事故時サービス、アドバイスなど総合的なサービスを提供していく予定です。

手始めに7月よりアルプス地方でのレンタルカー事業をスタート。そして秋にはチューリヒにM-Wayショップをオープンし、本格的な業務を開始する準備が進められています。

写真©www.migros.ch

M-Wayの初プロジェクトとなるのが「アルプモビール(Alpmobil)」です。これはアルプスのグリムゼル地域が実施する観光プロジェクトで、夏のバカンスシーズンに観光客に電気自動車をレンタルし、体験してもらうという主旨のもの。地域のエネルギー自立を目指す団体である「エネルギー地域ゴムズ連盟」がスポンサーの協力を得て、M-Wayから電気自動車60台を貸付けました。

ミグロスが採用している車のモデルは二人乗りの電気自動車「ThinkCity」です。購入価格は一台6万フラン(480万円)、リース価格は月1200フラン(9.6万円)。個人客だけでなく、企業の社用車市場も目指しているといいます。

しかしこの価格、スイスの庶民の経済感覚から、かなりかけ離れています。いくら電気自動車がまだ高いとはいえ、2人乗りで6万フランは高いです。ミグロスは、庶民の味方のスーパーだったはずなのですが・・。

環境団体のコメントも少し警戒的で、「電気自動車の電気が持続可能なものであるのなら歓迎」というもの。本当にエコなモビリティの普及を考えているならば、ミグロスには太陽光発電パネル込み、あるいは再生可能電力込みで、庶民にも手に届く価格の電気自動車を販売してもらいたかったところです。

実際に、オーストリアの電気自動車モデル地区であるフォーアールベルグ州のプロジェクトでは、ソーラー電力込みで電気自動車を販売しています。

このように小売会社が電気自動車業界に参入するのは、実はスイスでは初めてのことではありません。これまでにデパートのLoebがSmartで失敗、そして生協コープがSAMで失敗しています。小売業界の巨人ミグロスは電気自動車で成功することができるでしょうか、今後の発展が楽しみです。



★ミグロス社とソーラーエネルギーの話★
ミグロス社は自社建物に太陽光発電パネルを積極的に設置しており、今日までに14の建物で年230万kWhを生産しています(同社の計算では690世帯分の電力に相当)。

最新の事例はスタンス市のショッピングセンター「レンデパーク」(写真)。中央スイスでは最大規模の太陽光発電設備となり、年50万kWhを生産します。とはいえ設備を所有し、運転するのは地元のエネルギー会社です。

ミグロスの広報新聞には、「ミグロスは今後も太陽光発電を増やすつもり。秋から展開するM-Wayの電気自動車のことも考えてのこと。」とあります。


写真©Keiko Saile/Migros Magazin

太陽熱温水器の分野でも、ミグロス社はパイオニア的な設備を実現しています。例えば、2003年にはチューリッヒ市にある本社ビルで、太陽熱温水器によるオフィス冷房設備をいち早く実用化しています。

また、チューリッヒ近郊にあるミグロス系の大型娯楽スポーツセンター「Milandia」では、650㎡の太陽熱温水器を運転し、プールやシャワーの給湯を行なっています。こちらでも地元のエネルギー会社が設備を所有・運営する方式が採用されています。

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