滝川薫の未来日記

スイスより、持続可能な未来づくりに関わる出来事を、興味がおもむくままにお伝えしていきます

2023年までにカーボンニュートラルを目指すスイスのコープ生協

2010-02-25 04:31:26 | その他

スイスで毎日のお買い物をするスーパーといったら、ミグロかコープです。

スイスの小売店業界ではミグロがシェアのナンバーワン、コープがナンバーツーを占めますが、両者ともに営利の最大化を目的とするのではない、生協組合の会社であるのが特徴です。

うち5万人の従業員をかかえるコープは、90年代初頭からエコロジカルな品揃えにおいて、市場のリーダーシップを握ってきました。いち早くからオーガニック食品認証の「ビオ・スイス」印やフェアトレードの「マックス・ハベラー」印の食品や製品、持続可能な漁業による「MSC」印の魚貝類などを販売し始め、また環境負荷の少ないノンフード製品の「エコプラン」、オーガニックコットンの下着やベッドウェアの「ナトゥーラライン」、動物に優しい飼育による「ナトゥーラ肉・卵」、山岳地方の農家を応援できる「プロモンターニャ」・・・等といった、充実のエコ製品ラインを揃えてきました。

 

そして、そういった製品の背景情報を、毎週無料で全国の家庭に配布されるコープ新聞で消費者に伝え、啓蒙しています。また、毎年、売上げの1部(9億円)を「ナトゥーラ基金」に入れて、持続可能な農業に関するプロジェクトや研究に出資し、例えば、農家のバイオガス発電設備を助成したりしています。コープの昨年の売上げは、ドイツの安売り店LiedlやAldiのスイス進出にも関わらず、10%も成長しており、とても元気の良い企業です。

 

そんなコープが近年、力を入れているのが、2023年までに「CO2ニュートラル」になる、つまりCO2の収支においてゼロになること、という経営目標です。2023年という期限が、コープの本気を物語っています。

コープは2004年に小売店としてはいち早く、国の「産業界CO2削減対策機関」と、CO2の削減協定を結んできました。国との協定では、企業はCO2排出総量を把握し、毎年何パーセント減らすという目標を定め、その達成度を国の機関が定期的にモニターリングさせます。国の機関とこのような協定を結び、CO2削減を達成する企業には、2008年から実施されている灯油へのCO2税が免除されるのがスイスの仕組みです。ちなみに、コープの現在の年間排出量は10万tです。

 

カーボンニュートラルといっても、コープ社では、まず初めにCO2排出量の60%以上を自社努力で削減、エネルギー消費量は08年度比で20%減らす計画です。つまり店舗や工場、オフィス、流通センターなどで、省エネを行い、再生可能エネルギーを使います。(エネルギー消費量はもう少し減らないものかと思いますが。)その後で足りない分、40%程度を国内外での排出権購入により相殺する計画です。

 

ラジオのインタビューで、コープのサステイナビリティ担当者が、「マッキンゼーレポートにもあるように、省エネとCO2削減対策は、長期的には市場での競争力を高め、お金の節約につながるということが、コープの場合も当てはまるのだ。」と答えていました。今後CO2税の額やエネルギー価格の高騰は避けられないからです。コープは、こうした「CO2ニュートラル」化により、将来的に年7000万フラン(67億円)が節約できると考えているそうです。

 

どんな対策により-60%を実施するかというと、断熱、節電、再生可能エネルギーです。具体的には自社の建物のミネルギー化、照明のLED化、CO2冷媒、冷却時の排熱利用、木質バイオマス暖房、生ゴミからのバイオガス利用・・・等々が挙げられています。

 

これらの対策は既に実施されていますが、先日には新聞Der Bund誌に、コープで採用された新しいLEDランプの記事に載っていました。もともとスイスにはネオン広告はありませんが、COOPという社名のロゴのランプは店舗入口に設置されています。コープの場合、そのような社名ランプが全国で4250個あるそうですが、それを段階的にLEDに切り替えていくことで節約できる電力量は、400~600世帯分の消費量に相当する2GWhに上ります。コープが採用したLED照明は、従来のLEDシステムをベルンのメーカWestiform社が改良したもので、様々な工夫や制御により、今日の広告ランプと比べると80%の電力を節電できるそうです。

ますますコープびいきになってしまいそうなニュースでした。

www.coop.ch

 


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