すとう信彦 & his band

社会起業家(チェンジメーカー)首藤信彦の日常活動とその仲間たち

アフガニスタンでのNGO犠牲

2008-08-27 23:44:01 | Weblog
アフガニスタンでタリバン系武装グループに拉致された伊藤和也氏の死亡が確認された。第一報では足と頭部を撃たれているとのことだが、そうすると、グループの逃走途中あるいは逃亡しようとしたところを射撃されたのではと思う。犯人が撃ったのか、警察との銃撃戦で警察側の弾が当たったのか、真相はわからない。おそらく警察側は自分たちの責任は認めないだろうから、一応、武装グループによって射殺されたということになろう。
こんなにアフガニスタンに貢献しているのに「なぜ?」というようなコメントが出ているが、世界各地で毎年何十人と死んでいくボランティアを見ればわかるように、現地に貢献し、地域の住民に愛されていることは、必ずしも攻撃され場合によっては虐殺される善意の人々の免罪符にはならない。そもそも誰かを助けるという行為自体が、別の誰かを苦境に追い込む場合もあるのであって、誰かを愛し愛されることは、別な誰かを憎み憎まれていることと同じことなのである。乾燥地で一本の井戸を掘って、村人に感謝されることは、別の村の井戸の水が枯渇して何百人の命を危険にさらす可能性すらある。
だから、紛争地の援助活動は、何よりも援助者の価値観が大切であり、そこから生まれる正義感を地域で共有しなけれならない。それは簡単ではない。結果、すべての善意の行動は批判され、攻撃される可能性があり、だからこそ援助にたずさわるものはプロフェッショナルな危機管理能力を持つことが前提となる。はたして31歳の若者にそこまで期待することはどうであろうか?その意味で、ペシャワール会自体が伊藤さんの死に責任を持つことは当然だが、これを機会にNGOや多くの犠牲者を出したJICAなども活動とリスクに関して、真剣な議論をしてほしい。逆に、危険だから日本人は退避しろという外務省的スタンスでは何の解決にもならない。
しかし、そもそもそうした活動の場は、武装勢力だけではなく、疫病やちょっとした怪我からの感染や、HIVやマラリヤなどがごく普通に蔓延し、そして何よりも自動車事故のリスクのきわめて高い地域である。銃で撃たれて死亡するよりも、自動車事故で死亡する確率は何十倍も高いのではと思う。
その意味で、紛争地で活動するNGOのスタッフの事故は確率の問題である。もっとリスクの高い活動たとえば地雷除去では、どんなに準備を徹底しても対人地雷2000個に一個の確率で暴発事故が発生するという。
したがって、紛争地で活動する人はそれぞれが何らかの覚悟を持って行動するのであって、おそらく伊藤さんもそうした覚悟の人だったのだと思う。小生もかって何度か、この橋を渡ったらもう戻れない、この丘を越えたらもう帰れない..と思いながら丘を超え川を渡っていった。そう考えれば、死んでいった伊藤さんと、いまキーボードをうっている自分との間にどれだけの差があるのかとも惑う。
死亡の第一報に接し、複雑な思いを抱えながら、伊藤和也さんの冥福を祈りたい。