会津八一&団塊のつぶやき

会津八一の歌の解説と団塊のつぶやき!

道風記念館と会津八一3 古典への思い  素空

2012-06-12 21:04:28 | Weblog
 神林恒道(會津八一記念館館長)は會津八一の古代奈良への酷愛に象徴される古典主義について解説してこう言う。「19世紀以降の文明が分業主義による総体性の喪失により奇形化し醜くなったことに失望し、古代ギリシャや日本の古代の全人間的な表現を評価したことによる」
 28歳の時、八一は親友の伊達俊光への手紙でこう書いている。
「Humanity as a wholeを美とも真とも神ともして、個人に於ける人間性の完全完備を希求するのが、僕が半生の主張である。僕が希臘生活をよろこぶのも、古事記の神代の巻を愛するのも、この故である。僕が19世紀の文明に対してあきたらぬところあるは、僕の見解が氷の如く冷ややかなるが為めではない。分業主義の余弊として、deformityにみちみちたる此の世のあはれなる光景に対する悲憤の熱涙が、往々皮肉家の冷笑と混同されるのである」
 実際、早稲田大学ではギリシャ美術を講義し、その後奈良美術史や東洋美術史を担当する。教え子には分業主義を戒め、「個人に於ける人間性の完全完備」を説いた。
 古代奈良の酷愛や奈良の歌はこうした八一の芸術観を背景にして生まれている。
 注 Humanity as a whole   全体としての人間性
    deformity 形が損なわれていること、奇形