会津八一&団塊のつぶやき

会津八一の歌の解説と団塊のつぶやき!

メディアとガザ報道(広河隆一)   SURUME

2009-01-25 00:37:26 | Weblog
 フォトジャーナリスト広河隆一が、メディアのガザ報道を批判している。「ハマス(パレスチナ)のロケット攻撃が原因(イスラエル人が一方的にハマスの暴力にさらされてきた)でイスラエルのガザ攻撃が行われたという報道は間違っている。占領という暴力の中で、大勢のパレスチナ人が殺害されてきた事実関係を調べていない」
 イスラエルは超大国アメリカを後ろ盾に、マスメディアにまで影響を与える。日本で流れる報道は、ほとんどアメリカや西側諸国の立場に立って報道される。パレスチナ側からの報道は圧倒的に少ない。その他、イラクやアフガニスタンの立場からの情報もイスラムの立場からの報道もほとんどない。日頃、メディアから情報を得るが、どのような立場でその報道がなされているか考えないと誤る。無残に殺されていく地球上の各地の人々を深く思う。

『いのちの作法』5  M新聞・NKDさんより (SURUME)

2009-01-15 21:24:35 | Weblog
 さて、映画の「雪ぞり」の場面では、「そり」や「箱ぞり」からヒントを得て作られたというナレーションがありますが、「箱ぞり」とは何かについては説明がありません。しかし、『村長ありき』では、それが豪雪によって孤立させられた山奥の無医村の悲惨な象徴であったことが重く語られます。
 無医村であった沢内村では、冬、重病人が出ると、箱形の「箱ぞり」に乗せ、提灯の明かりを頼りに何人もの男たちが押したり引いたりしながら、医者のいる隣村まで3?4里の雪道を運ばなければならず、病人が途中でこと切れてしまうことも少なくありませんでした。村の人々は、それを見ると、「ああ、また箱ぞりがいく…」と暗い気持ちになったそうです。「箱ぞり」には重病人だけでなく、医者の死亡診断書をもらうために遺体を乗せて運ぶこともあったそうです。「そういう村を、なんとかして変えたい」というのが、深沢村長の強い思いでした。
 映画の終わり近くで、老人ホームの入所者のお年寄りと家族と介護スタッフが集まって「見取り」について語り合う会が開かれる場面があります。「家族のいるところで死にたい」とか「この施設の方がいい」とか、みんなが普通に話し合っています。お年寄り本人を交えて、通常ならタブーとされるような話題について平気で話し合う光景??ここには、沢内村の「生命行政」50年の実績が裏打ちされているといえるでしょう。
 今年は、「人の命」を追求したキューバ革命達成50周年であり、ゲバラ生誕80周年に当たる年でもあります。ゲバラの映画も始まりますので、ぜひ見にいきたいところですが、『いのちの作法』もぜひ見ていただきたい映画であり、『村長ありき』はぜひ合わせて読んでいただきたい本です。 (完)

『いのちの作法』4  M新聞・NKDさんより (SURUME)

2009-01-13 23:10:48 | Weblog
 沢内村が策定した「地域包括医療実施計画」には、次のような核心部分がある。

 【幸福追求の原動力である健康を、人生のあらゆる時点で理想的に養護するため、
  1 すこやかに生まれる(健康な赤ちゃんを産み育てる)
  2 すこやかに育つ(心身ともに強靭で、聡明な人づくり)
  3 すこやかに老いる(健康態老人づくり、不老長寿、生存限界年齢・自然死への接近)
  この三目標実現のために、
  ・ 誰でも(どんな貧乏人でも)、
  ・ どこでも(どんな僻地でも)、
  ・ いつでも(24時間、365日、生涯にわたって)、
  学術の進歩に即応する最新・最高の包括医療サービスと、文化的な健康生活の保障を享受することが必要】

 このような人間尊重の村政にリーダーシップを発揮した深沢さんには、確固とした理念があった。価値の根本は人間であるという哲学と、憲法第25条である。人間の尊厳を尊重する民主政治、村人による自治は、何よりも人間の平等性に立脚すべきものであり、人間の生命に格差があってはならないという強い信念であった。
 沢内村が老人医療無料化を実施しようとした時、岩手県は国保5割給付のもとで10割給付をすることは条例にも反し、行政訴訟を起こされることも十分考えられるとして、思いとどまるよう指導した。これに対して深沢さんは、「裁判されるなら受けて立つ。憲法に照らして、私は絶対に負けない。最高裁まで争う。本来は国がやるべきことをやっていない。だから沢内村に必要だからやるんだ。国は必ず後からついてくる」と反論した。この事実からも、深沢さんの確固とした理念が伝わってくる。
 この先駆的な地方自治の姿と実践の成果は、人々を感動させ、やがて世論の高まりのもとで、県や国が70歳以上の高齢者医療費の無料化を実施するのだが、1983年(昭和58年)、国家財政の破綻と医療制度の欠陥のツケを高齢者にしわ寄せする「老人保健法」を強行した。深沢さん亡き後のその時も、沢内村は村民共同のあかしとして無料制度を堅持し、地方自治の自主権を貫いた。最近の市町村合併により、一部負担に後退せざるを得なかったものの、「生命行政」の理念は脈々と受け継がれており、「生命尊重」が町是とされている。(中略)
 沢内村は、今も確固とした原点であり、深沢さんの発したメッセージは、強烈な光となってわれわれに差し込んでくる。(2008年初夏)◆ 

『いのちの作法』3 M新聞・NKDさんより (SURUME)

2009-01-10 00:16:15 | Weblog
◆(前略)
 今回の復刊は、「少子高齢化」といわれる状況のもとで、産科・小児科・救急医療にかかわる困難や、消えた年金問題、「後期高齢者医療制度」の強行という問題で怨嗟と怒りの世論が沸騰しており、何より現在ほど命が軽んじられている時代は戦争下を除いてなかったほどの状況にあることから、それなりの必然性を持っていると言ってさしつかえないだろう。
 なぜか。それは、深沢晟雄さんが沢内村長として先駆的、開拓的に展開した「生命行政」の理念が、不死鳥のごとき生命力を発揮していることにあろう。
 沢内村(現西和賀町)は、岩手県中部の奥羽山脈東側に位置し、わが国有数の豪雪地帯で、かつては「天牢雪獄」とさえ言われ、長いこと豪雪と多病と貧困に苦しんできた村であった。1957年(昭和32年)、村長になった深沢さんは、後に「自分たちで生命を守った村」として知られるようになる「生命行政」を推進した。日本一、赤ちゃんの死亡率が高かった村が、62年(昭和37年)に地方自治体として初といわれる乳児死亡率ゼロを実現した。また、61年(昭和36)年4月からは、60歳以上の高齢者と乳児の医療費を無料化した。 

『いのちの作法』2  M新聞・NKDさんより (SURUME)

2009-01-06 22:32:40 | Weblog
 正月休みの間に、横浜・黄金町にある名画座『ジャック&ベティ』(一度ツブれましたが、若者たちが再建して頑張っている映画館です)に、『いのちの作法——沢内[生命行政]を継ぐ者たち』を観にいってきました。この映画は、08年、岩手県の山奥の一寒村を舞台に製作されたドキュメンタリー映画です。
 では、「生命行政」とは何でしょうか?
 映画の中に、冬の夜、老人ホームのお年寄りたちを「雪ぞり」に乗せて若者たちが引き、「かまくら」など雪の夜景を見せて歩くシーンがあります。この「雪ぞり」は、中にいるお年寄りが寒くないように、しっかりと囲いを作った自動車のような「そり」で、12年ぶりで復活したものです。しかし、予定した当日、暖冬のために道路には雪がなく、若者たちは町民の協力を得て雪を運び、道路に敷き詰めます。そして、「雪ぞり」に乗って満足した老女が、「生きててえがった(生きていてよかった)」とつぶやきます…。
 「生命行政」の概略とその今日的意義については、この映画が製作される元になった1冊の本、『村長ありき——沢内村・深沢晟雄の生涯』(及川和男著、08年7月、れんが書房新社)の「復刊へのあとがき」(08年)に端的に示されていますので、少し引用してみましょう。  (続く)