観客動員数とはあくまでも「背景」であり、「それ自体」が評価されるべきではない、という傍観者氏への異論です。いまや村上隆は「世界的なアーティスト」として知られています。ではそこでいったい何が「世界的」なのかというと、あたりまえですが、その作品が世界的によく知られているということです。つまり世界中の人が村上隆の作品を「見ている」ということです(もちろん世界中といっても所詮はアートワールドの中でですけれども)。とにかく、その作品のコンセプトなどを理解するかどうか以前に、世界中の人が「見ている」わけです。そして世界中の人々が見たその作品は、まず村上隆が見たかった作品であり、完成後に村上隆が実際に見た作品です。カイカイキキのアトリエから作品が発送される直前、村上隆はその作品を厳しく最終チェックしますが、この作業は品質管理であると同時に、自分が見たかった作品を自分でじっくり見るという経験です。そのとき、おそらく村上隆は全神経を集中して見ています。このとき、うかつに話しかけてはなりません。村上隆は、そこで「見る」という作業を通して、何か重要なことをしていると思われます。それはたんなる品質チェックではない。(続く)