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脳梗塞急性期治療:6時間以降 点滴

2009年05月20日 | 脳梗塞
MRIですでに脳梗塞が広範囲に出てしまったらどうするか?
その場合には、点滴の治療をするしかありません。
ひとくちに点滴と言っても色々種類があります。
1)単なる水分補給の点滴
2)抗血小板作用のある点滴
3)抗凝固作用のある点滴
4)活性酸素を消去する点滴

このうち1)は「水分補給」と聞くと、「そんなものいらない」と思われるかもしれません。
しかしこれが意外に効果があるのです。
例えば夏のゴルフの後、入浴後、飲酒後、などはまず「脱水」になっており、このために血液の粘稠度が上がって「血液ドロドロ」になっています。
ここで水分を点滴すると、それだけで「血液さらさら」になるのです。
脳梗塞になりかけた患者さんの症状が劇的に改善することもあります。

次に2)ですが、実は日本にはそれほど血小板機能を抑制できる点滴はありません。
しかしそれなりに効果のある薬はあります。
オザグレルナトリウムという薬剤で、商品名で「キサンボン」や「カタクロット」と呼ばれる薬です。

3)の抗凝固療法も使われます。
アルガトロバンという薬剤で、商品名で「スロンノン」、「ノバスタン」などです。
2)との使い分けに関しては色々と議論があるところで、正直医師の好みで使い分けられています。

最後の4)は日本の製薬会社が開発した薬で、活性酸素を消去するエダラボンという薬剤です。
商品名は「ラジカット」といい、ほとんど副作用がないのに効果はある薬です。
ラジカット(radicut)は名前の通り、ラジカル(radical)をカットする(cut)薬です。
脳の血管が閉塞した時に発生するフリーラジカルを止めるスカベンジャー(補足剤)です。
ラジカルは反応性が高いですから、いろんな分子と反応してしまい周辺の神経細胞を死滅させます。
それを止めることによって進行を防ぐというわけです。
また脳梗塞後の脳浮腫(脳のはれ)をおさえる働きもあり、よく使われています。

以上、まず点滴について述べました。
これだけでも色々な薬があって使い分けられていることがお分かりかと思います。
どれも急性期に詰まった血管を再開通させるtPAや血管内治療ほどの効果はありませんが、水分補給などはもともとの脳梗塞の原因である脱水を改善できるという意味で、非常に重要な治療法です。
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