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慢性硬膜下血腫に対する血管内治療

2024年02月20日 | トピックス

頭部打撲のあと、しばらくして頭の中(硬膜と脳の間)に血液が徐々に溜まってくることがあり、慢性硬膜下血腫と呼ばれています。

初期症状としては、頭痛や言語障害、半身麻痺などの症状のほか、物忘れ、失禁、なんとなくぼーっとしている、といった認知症を思わせるような症状もあります。一方、重症の場合は意識障害を起こすこともあります。

進行は一般にはゆっくりで、自然治癒するケースさえありますが、徐々に血液が増えて脳を圧迫し、命に関わることもあります。

症状が強い場合には、外科手術が行われます。頭蓋骨に小さな穴をあけて、血液を洗い流す手術(穿頭洗浄術)が主流です。局所麻酔で行われることが多く、比較的安全な手術です。また、術後に症状が劇的に改善することがあり、脳神経外科の手術の中でもかなり多く行われている方法です。

ただ、この治療にも欠点があります。それは再発です。術後の再発率は2~35%とされており、無視できない数値です。以前は再発したら穿頭術を再度行い、何度も再発する場合には開頭手術を行うしかない、とされていました。

しかし最近、硬膜に行く動脈(中硬膜動脈)をつめたらなおってしまった、という興味深い報告があります。

実は私も10年以上前に同様の経験をしており、他院で2度の手術を受けた患者さんに対して、硬膜に行く血管をつめる血管内治療を行ったところ、その後2週間で完全に治癒してしまい、たいへん驚きました。

先週、Phoenixで開催された国際脳卒中学会(International Stroke Conference: ISC 2024)ではこの血管内治療の有効性確認のためのランダム化比較試験が3つ報告され、3つともに有効性が示されました。

 この治療に関しては、世界で12のランダム化比較試験が走っているということですが、最初の3つで有効性が示されたことで、世界的に流れが変わってくる可能性があります。

また一つ、外科から血管内へ治療が変わっていくのかもしれない、と強く感じた発表でした。

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