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脳動脈瘤 その43 脳血管内治療:その13 フローダイバーターとは?

2021年10月31日 | その他
これまで動脈瘤に対するコイル塞栓術を紹介してきましたが、コイル治療が適していない動脈瘤もあります。
それはどんな動脈瘤でしょうか?

代表的なものは、以下の通りです。
 1. 大型、巨大脳動脈瘤
 2. 血栓化動脈瘤
 3. 紡錘状動脈瘤
 4. 再発動脈瘤
このような動脈瘤に対して、以前は治療を断念するか、このブログで紹介したような複雑な外科的治療が行われていました。
しかし、最近ではいくつかの新しい治療器具が導入され、血管内治療が大きな進歩を遂げています。

その代表の一つが「フローダイバーター」と呼ばれる治療器具です。
この器具は目の細かいステント(メッシュの筒)で(図)、これを血管に留置することで、動脈瘤への血流を減らし、徐々に小さくするというものです。
下記のアニメーションをご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=cBtvPzLyrtM

動画でお分かりのように、治療自体はとてもシンプルです。
動脈瘤の中に管やコイルを入れる必要がないので、術中の出血合併症はコイル塞栓術よりも少ないと考えられます。
このため、世界的にこの治療が激増しており、私の海外の友人は「最近動脈瘤の中にカテーテルを入れる機会が非常に少なくなった」と言っています。

フローダイバーターの導入によって、血管内治療の領域に大きな変革期が訪れているのです。
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脳動脈瘤 その42 脳血管内治療:その12 ステントアシストテクニック 4

2021年10月24日 | 動脈瘤
それではステントアシストテクニックの最後に、私たちのよく行う工夫について紹介します。

一般的にはステントを完全に留置してからコイルを挿入します。
しかし、この方法には欠点もあります。
1)マイクロカテーテルが抜けるとステントを超えて再挿入しないといけない。
 (それによって動脈瘤を傷つける可能性がある)
2)マイクロカテーテルの移動が難しくなる
 (それによって十分な塞栓ができない可能性がある)
以上のことから、最悪の場合、ステントを留置したのにコイル挿入ができなくなってしまうという可能性もあるのです。

このような事態を避けるため、私たちはステントを半分ほど広げた状態でコイルを挿入し、十分塞栓できてからステントを完全に留置する方法をとっています(図)。
この方法はセミジェイルテクニック(Semi-jail technique)と呼ばれていて、当初、韓国から報告されましたが、その報告では治療成績があまり良くありませんでした。
そこで、私たちはいくつか改良を加えて、合併症を減少させることに成功しました。
1)最新のオープンセルステントを選択する
2)抗血小板薬の有効性を確認し、調整してから治療する
以上によって、合併症は少なくなり、極めて良好な治療成績になったため、24例経験した時点で国際雑誌に報告しました(Shirakawa M, Yoshimura S, et al, World Neurosurg. 2019)。
この方法はこの報告後も継続しており、私たちのステント併用コイル塞栓術の主流となっています。
このように既にある機器の中から適切な選択をして、工夫を加えることで格段に良い治療結果を出すこともできるのです。

以上、ステント併用コイル塞栓術について紹介しました。
今後は新しい機器について紹介しますね!

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オンライン市民講座

2021年10月01日 | 学会/研究会
9月4日に開催させていただいた
第80回 日本脳神経外科学会 近畿支部学術集会の一環として、オンライン市民講座を開催しています。
下記から視聴可能です。
私は「脳動脈瘤の最新治療」についてお話ししています。
無料ですので、ぜひご覧ください!

http://kinki2021aut.umin.jp/neurosurgery/index.html
コメント (3)
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