脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
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くも膜下出血ー術後管理

2008年10月26日 | くも膜下出血
くも膜下出血の治療には3つの山があります。

一つ目は再出血の山
これまで説明したクリッピングやコイリングがこれにあたります。
もっとも命に関わる山です。

2つ目は脳血管攣縮(れんしゅく)の山
出血の4日後ぐらいから脳の血管が細くなり脳梗塞をおこすのです。
一つ目の山を越えた後に来る、この山も重要です。
2週間まで続きますがその後はまた自然に太くなります。
治療の結果次第では麻痺や失語(言語障害)が後遺症として残ります。
ですから出血の後、2週間は集中治療をしてこの山をなんとか超える。
これがくも膜下出血の術後、最も重要なことなのです。

3つ目は水頭症の山。
出血のために脳の中に水がたまってくるので、頭の水を細いチューブでおなかに流す手術を行います。
これは手術をすればなおります。

以上のようにくも膜下出血は発症してから3の山を超えなければいけない大変な病気なのです。
ただし治療がすべてうまく行くと、全く元通りに戻れる可能性がある病気でもあります。
長い間この病気について説明してきましたが今回で終了です。
次回からは別の話題に移りますね。
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熊本

2008年10月18日 | 学会/研究会
先週、熊本大学神経内科の平野照之先生に講演に呼んでいただきました。
平野先生は国循のころの先輩で、脳血管障害を専門とする内科医の若手のホープです。
そんな先生に呼んでいただいて光栄です。
私の前に講演された朝日野総合病院の清水先生は血圧の管理に関してプロ中のプロで、かの有名な久山スタディにも関わっておられたとのこと。ご発表もうなってしまうほど非常に興味深い内容で、強く感銘を受けました。
ありがとうございました。勉強になりました。

さて私は頸動脈ステント留置術について講演をしました。
熊本では現在神経内科が中心になりCASを始めているということでした。
脳血管に造詣が深い先生方です。心から応援します!

さて講演会の後、「ぷれいやあず」というバーに連れて行ってもらい、カードマジックをみました。
私はマジックを間近でみるのは初めてだったので感激しました。
本当に種が分からない。目を凝らしても見抜けない。
すごいですねー。

最後は熊本ラーメンに連れて行ってもらいました。
店は知らなければ入れないぐらいの「場末」な雰囲気。
店に入るとぷんと鼻を突くとんこつの強いにおい。
しかし、これがものすごくうまい。
まず麺。独特のにおいがあり、長浜ラーメンとも違う。あれほど細くないし麺自体に味がある。
麺だけでもおいしい。
でもスープも絶品。熊本ラーメンってこんなにうまいんだ、と衝撃を受けました。
熊本行ったらぜひ食べてみてくださいね。

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くも膜下出血ークリッピング術 その5 ドレナージ

2008年10月13日 | くも膜下出血
ドレナージって言う言葉知っていますか?
これを知っていたらまず医療関係者です。
英語の「drain」というのは「(液体)を徐々に排出する、水はけを良くする」という意味です。
また「drainage」は「排水、排水ポンプ、排水装置」という意味です。
つまり医療行為としては「手術した部分に管を入れて、体外に排出する」ことを指します。
おなかの手術のあとに手術した部分に管が入っているでしょう。
あれが「ドレナージ」です。
頭の手術でもドレナージをする事がよくあります。
皮膚の下に入れる場合は「皮下ドレナージ」
脳室に入れる場合には「脳室ドレナージ」
腰から入れるのは「脊髄ドレナージ、またはスパイナルドレナージ」
といいます。

くも膜下出血の手術では、おもに出血や髄液を外に出すために行われます。
頭に水がたまる「水頭症」を伴う事が多く、くも膜下出血によって髄液に血が混じってしまい、これにより血管が縮むためにその予防として行うのです。

脳血管内手術の方がクリッピングよりもこの水頭症が少ないという報告があります。
これはくも膜を手術でこわすことが水頭症の悪化につながるという事を示しています。
たかがくも膜といえども大事なんですね。

さて頭に管が入っていると、すごく驚きますが、本人は痛くもかゆくもありません。
管を入れておいて、十分に排出されたら抜いてしまいます。
この管一本が命に関わる事もあるんですよ。

病院で「ドレナージ」という言葉を聞いたら「ああ、あれか!」と思い出してくださいね。

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くも膜下出血ークリッピング術 その4 シルビウス裂開放 つづき

2008年10月09日 | くも膜下出血
その4での練習方法について書くのを忘れていました。
その練習法とは!
顕微鏡下で練習することです。
なあんだーという声が聞こえてきそうですが、人間での練習ではありません。
ラットなどを用いた練習です。
私の経験ではラットの大動脈と大静脈を剥離(はくり)するのが最も良い練習法です。
バイパスの練習を始めた頃「ラットがかわいそう」と私は思いました。しかし「じゃあ先生は人間で練習するの?」という当時の看護婦さんの言葉が決定的に私をこの練習に駆り立てたのでした。
とは言っても動物愛護的には問題があると思いますので、将来的にはコンピューターシミュレーションが最もいいでしょう。

さて、私はチューリヒ大学にいたとき、毎週バイパスの練習を行っていました。
初日はチューブをつなぐ練習から始まり、徐々にラットの血管をつなぐ練習に入るのです。
確立したトレーニングシステムがチューリヒ大学にはあります。
有名なヤシャギル(Yasargil)教授がこのシステムを作られたと聞いています。
そこにはフリックさんという、元看護士の指導者がいます。
フリックさんは「ちょーきびしい」のですが、ラットの血管吻合の腕は「超一流」で、練習に関していろんなことを教えてもらえます。
私はチューリヒ留学前に国立循環器病センターですでにラットでの血管吻合の練習を終えて実際の手術もしていましたが、フリックさんの指導には「目からうろこが落ちる」思いを何度もしました。
詳細は省きますが、ピンセットの持ち方から、針を通す位置、間隔、結び方、閉め具合、糸を切る位置まで、一本の縫合にここまで!と思うほどこだわっていて、本当に目の覚めるような思いでした。
頚動脈に静脈をつなぐことが出来るようになると徐々にフリックさんが手を加えて難しくしていきます。
そしてそれに合格し始めると、空いた時間で大動脈の剥離を許されるようになるのです。
これもこだわりはじめるとどれだけ時間があっても足りないぐらい奥が深いのですが、不思議なことに練習を重ねるに従って時間内に剥離できる範囲が広がって行きます。
この剥離操作はシルビウス裂をあけるのにそっくりです。
ぜひこれから手術をトレーニングする先生達にやってほしい練習法です。

そして次に大事なのは実際に剥離の上手な先生の手術を見ることです。
ぼんやりと見るだけでは習得できませんが、自分が実際に手術をするようになると、参考となる重要ポイントが見えてきます。
私は国循の橋本先生のビデオを見ながら、大学に戻ってからは先輩の郭先生、岩間先生(現当科教授)の手術をみて参考にしました。
最近では旭川赤十字病院の上山先生の手技を見に行って学びました。
うまい人のやり方にはそれぞれ理論やパターンがあるものです。これを頭に叩き込んで、「細い血管も全て残すぞ!」と気合いを入れて手術していれば、徐々に綺麗な手術が出来るようになります。
実践が最も大切ですが、そこに至るまでの練習法、練習時間も大事です。
この辺りはちょっとスポーツに似ています。
いい指導者の元でいい練習法でたくさん練習をする。
これがコツだと思います。

入門者達よ、がんばれー!

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盛岡冷麺

2008年10月03日 | グルメ
脳神経外科の最大の学会、日本脳神経外科学会に出席しました。
場所は岩手県の盛岡市。
名古屋から新幹線で5時間近くかかります!(;;)
しかし今回はこの総会で、シンポジウムでの発表の機会を得たので、かなり張り切っていってきました。総会でのシンポジウムは名誉なことなのです。
自分の発表は「頸動脈狭窄症に手術と血管内治療をうまく使い分ける」という趣旨で、「CAS with CEA –プラーク診断による治療法選択について」という題名です。
頸動脈が細いと脳梗塞の原因になるので、この細い部分を手術できれいにしてしまう「頸動脈内膜はくり術:CEA」が行われてきました。しかし種々の事情でこの手術は日本ではそれほど普及せず、風船とステントで広げる「頸動脈ステント留置術:CAS」が増加してきています。このステント留置術は「切らない治療」なので、効果が同じであれば手術よりも優れているのですが、まだ手術の成績には若干及びません。このためその治療成績を改善する工夫が必要です。私たちは頸動脈の動脈硬化部(プラーク)そのものを種々の検査で調べ、ステント留置に向いていない症例に手術(CEA)を行い、他はステント留置術(CAS)を行うことで非常に良好な成績を上げています。
会場からもこの治療選択に同意するコメントが多く寄せられ、「ますますがんばらなければ!」と思いを強くしました。

さてここ盛岡は、市町村合併で人口30万人以上になったとのことで、結構都会です。
しかし町の中を美しい北上川が流れていますし、なんとその川をサケが登ってくるというではありませんか!
こんな県庁所在地の川にサケが登ってくるなんて!
感動しました。

もう一つの感動は、食べ物のうまさ。わんこそばが有名ですが、今回は「盛岡冷麺」と「じゃじゃ麺」にトライしました。
とくに私は冷麺が気に入りました。お店は「肉の米内」という焼肉屋で、麺がうまい!。半透明でコシのある麺に、キムチの辛めのスープ、絶妙です。さらに最後にスイカの甘さがたまりません。
盛岡に行かれたらぜひ食べてみてください。

じゃじゃ麺は、自分がこれまで食べたものとは違っていました。みそが少なめで酢とラー油とにんにくを自分で追加し味付けします。最後に生卵を食べ終わった皿に入れると、ネギとお湯を注いでくれ、これにみそ、塩、コショウで味付けしてスープを頂く。これもうまい。これまでのじゃじゃ麺とは一風変わったものでした。

しかし岩手はおいしいものがいっぱいでとてもいいところでした。遠くても、それぞれの土地を訪れるこの学会スタイルもやはり悪くありませんねー。

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