脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

閑話休題 テレビ講演会

2008年05月30日 | 閑話休題
昨日は大阪でテレビ講演会というのに出て、講演をしました。
タイトルは「頸動脈ステント留置術のコツと注意点」です。
この頸動脈ステント留置は英語で
carotid artery stentingというので、頭文字を取ってCAS(キャス)と読んでいます。
この治療法は実はこの4月に正式に認可されたばかりです。
ということはまだ2ヶ月の歴史?と思われるかもしれません。

実は私自身はこのCASを10年以上前からやっていますし、すでに日本の中では一般的治療になっています。
認可に10年以上がかかってしまったんですね。
今になってにわかに社会の注目を浴びているのですが、我々にとってはすでに日常診療の一つなのです。
ただし保険が通って変わったこともあります。
それは脳保護の方法がフィルター型に変わったことです。
傘状のフィルターを狭窄部より向こうにおいて、治療中にはがれた血管の破片をひっかけて脳に飛ばないようにするのです。
百聞は一見にしかず。動画がありますので、私のホームページを見てください。
http://www.e-oishasan.net/doctors_site/yoshimura/treat03.html
どうですか?分かりましたか?

昨日は国立循環器病センター脳血管内科の豊田 一則先生と一緒に講演させて頂きました。
本当に優秀な先生ですね。あふれる程の知識と、自施設からの高レベルのデータ。
語り口も柔らかく的確。人柄も温厚。もう文句のつけようがありません。
こんなドクターがいるんですねー。尊敬します。
なぜこんな優秀な先生と一緒に自分が講師に選ばれたのか分かりません。

それと大阪に行くと、レジデントだった頃に戻ってしまうんですね。
神座ラーメン、おいしかったー。
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くも膜下出血ー診断(1) CT

2008年05月30日 | くも膜下出血
くも膜下出血を疑った時にはまず頭部CTを施行することになります。
この検査で92%は診断がつくことがくも膜下出血診療ガイドラインで示されています。
92% !
逆に言うと8%は診断できないのです。
どんな場合なのでしょうか?
まず普通のくも膜下出血のCTを示します(上図)。
赤矢印で示した白いところが出血です。
青矢印で示した黒いところは脳室(脳の水の部屋)で少し大きくなっています。
最重症のくも膜下出血です。
これで診断できないドクターはまずいないはずです。(いたら困る...)
皆さん、わかりますよね!

問題なのは出血が軽度な場合です。
次回お示ししますね。
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くも膜下出血ー症状 その3 (脳出血型)

2008年05月29日 | くも膜下出血
通常、脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血となりますが(上図左)、脳動脈瘤が脳に埋もれて存在している場合には、出血が脳内や脳室(脳の中の水の部屋)だけに起きることがあります(上図右)。
脳内出血の場合には半身の麻痺などで発症しますので、専門病院でないと通常の脳出血と間違われることがあります。

くも膜下出血の症状の特徴をまとめますね。
1)突然の頭痛
2)意識障害(頭痛とともにこれが起きた時はきわめてくも膜下出血が疑わしい)
3)半身麻痺(比較的まれ)
4)髄膜刺激症状(出血後少し時間がたってから現れる)

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くも膜下出血ー症状 その2

2008年05月27日 | くも膜下出血
前回の症状の続きです。
最近くも膜下出血の見逃しが訴えられたという報道がありました。
この医師は「突然の頭痛で患者さんがCTを撮ってほしいと希望しているのに撮らなかった」ということです。
しかもこの記事に関して医師の掲示板で「突然の頭痛というだけでCTなんか普通は撮らない」とする医師が多かったのです。
とても驚きました。
皆さんの中には「医者はすべての病気に精通しているはず」と思われている方がおられるかもしれません。
しかし違うのです。
医者になりたての頃、研修医の頃を過ぎると、自分の専門分野以外は、だんだん疎くなるのです。
ですから頭の病気は頭の医者に、おなかの病気はおなかの医者に診てもらうのが一番いいのですよ!
医者が当てにならないのなら自分が勉強すればいいのですが、それにも対応してくれないとするとお手上げですね。(;;)

実は軽いくも膜下出血はCTでも見にくいのです。
専門医でないために見逃してしまうことがあります。
「突然の頭痛」は迷わず脳外科を受診してくださいね。

では重症の場合はどうでしょうか?
頭痛を訴えた後、意識障害のため急に倒れてしまいます。
一時的な意識障害の場合と、意識が戻ってこない場合があります。
またくも膜下出血の15%は即死すると言われていて、夜間に起きた場合などは原因不明とされてしまう場合があります。
怖いですね。
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くも膜下出血ー症状

2008年05月25日 | くも膜下出血
くも膜下出血ってどんな症状が出るのでしょうか?
まず一番多いのが頭痛です。
というと、自分もそうかもしれない!と心配になりますよね。
でも安心してください。ほとんどの頭痛は脳卒中ではありません。
この頭痛には特徴があるのです。
それは「突然」痛くなるということです。
突然も突然、何時何分に急に!と、時間を特定できる感じです。
朝起きたら何となく、というのはまず違います。

また頭痛がおきてしばらく経つと「髄膜刺激症状」が現れます。
頭を前に曲げてあごが胸につくかどうか、つけばオーケーです。
吐き気を伴うこともあります。

いずれにしろ、突然に起きた頭痛はすぐに救急病院を受診する必要があります。
たとえ頭痛以外は元気でも、病院にかかってください。
ただし脳外科のある病院ですよ!

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くも膜下出血-破裂脳動脈瘤

2008年05月21日 | 動脈瘤
いよいよ破裂した場合のお話です。
脳動脈瘤が破裂するとくも膜下出血を起こします。
そうするとどうなるのでしょうか?

前にも述べたと思いますが、動脈瘤の治療を受ける前提で、3分の1が元気になり、3分の1が後遺症、3分の1が死亡と説明しています。
昔のデータになりますが、動脈瘤の治療をしない場合には死亡率は50-70%と報告されています。
怖いですよね。一旦破裂すると半分以下の確率でしか元気になれないのです。

それでも病院に運ばれたからにはわれわれ脳外科医は全力で治療に当たるのです。
少しでもいい状態に!と願いながら。
実はくも膜下出血は脳外科医が最も気合いを入れて治療を行う疾患の一つです。
なぜなら、治療の出来不出来で患者さんの人生が変わってしまうからです。
ひとときも気を抜けないんですよ、この病気は。
説明を一通り知ってもらうとその理由が分かると思います。
では次回から始めますね!
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ステントとは? その2

2008年05月18日 | 血管内手術
前に「ステントとは?」で、ステントの原理を紹介しましたね。
「留置したステントが再度縮んでしまうことはないのか」とコメントを頂きました。
上の図に示すように、バルーンだけで動脈硬化による狭窄を拡張すると直後にelastic recoilという現象(血管の弾力でもとにもどろうとすること)がおきて広げたバルーンよりも狭い状態になってしまいます。
また一旦は広がっても2-3ヶ月経過すると、再狭窄が起きてしまいます。

ステントはこれを防止することが出来ます。
ステントはバルーンで広げた形でそのまま残りますので、elastic recoilが少なくなり、結果として再狭窄が少なくなるのです。
最近ではさらに再狭窄を減らすために薬剤をコーティングしたステントもあります。
これについてはいずれまた詳しく解説しますね!

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未破裂動脈瘤の治療法選択ー血管内手術(近未来編)その4

2008年05月18日 | 動脈瘤
上の図はアメリカで開発され臨床応用が始まった新しいマイクロカテーテルです。その名はENZO!
マイクラス社が取り扱っています。
フェラーリの創設者のENZO Ferrariにちなんだとか!
名前負けしないその斬新なカテーテルは、手元の操作でマイクロカテーテルの先端を曲げられる(!)というスグレモノです。
え?そんなことも出来なかったのかって?
そうなんです。実はマイクロカテーテルの誘導は脳だけでなく心臓や末梢血管でも先端に角度のついたワイヤーを先行させてそれに沿わせるだけ...という職人芸なのです。
それでも相当入りますけどね。
脳では血流に乗って流すタイプのフローガイドマイクロカテーテルもあります。
これもうまく使うと脳動静脈奇形などでは威力を発揮します。

でもこういったものを駆使しても挿入に時間がかかることがあって、そういう時は「先端が自由に遠隔操作できるカテがあったらなー」と思っていました。
つまり以前からだれもがこのENZOみたいなカテーテルを頭の中で想像してはいました。
しかし実際に作るのは別のこと。
アメリカで実際に見てきて写真を撮ってきました。
細いマイクロカテーテルです。技術的困難が相当あったものと考えます。
まずは賞賛を送りたいと思います。
今後も改良が必要とは思いますが、新たな時代を切り開く可能性のあるカテーテルです。

こうして見ると血管内治療はまだまだ新しい機材が開発中で、今後も発展する可能性が高そうですね!
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国立循環器病センター脳血管内科

2008年05月18日 | 閑話休題
お久しぶりです。
このところ学会での講演が多く、やっと時間が出来ました。
先週末は日本病理学会のワークショップ、日本神経学会のランチョンセミナーで話をさせて頂きました。
テーマは頸動脈狭窄症の治療です。
自分は手術も血管内治療もどちらもやっており、詳細な術前診断により使い分けています。
だから治療結果はすごくいいのですよ!
得意な領域の一つなんです。

今回の日本神経学会では九州医療センターの矢坂正弘先生とお話しさせて頂きました。
実は矢坂先生とは国立循環器病センターで一緒に仕事をさせて頂いたことがあるのです。
自分が国循の脳外科レジデントだった頃、2ヶ月間、脳血管内科にローテートさせて頂いたのです。
当時の脳血管内科の部長は山口武典先生(現日本脳卒中協会理事長)でした。
研修中、山口先生とお話しさせて頂く機会があり、「俺は患者が治れば内科的でも外科的でもどちらでもいいと思っているんだ」といわれてました。私は「こんな内科医がいるんだ!」と深い感銘を受けました。温厚で、度量の広い、素晴らしい先生です。
当時の研修で習得した診断法、薬の使い方、頸動脈超音波など今も大変役に立っており心から感謝しています。

さてその頃、脳血管内科スタッフとしてバリバリ論文を書いておられたのが矢坂先生なのです。
普通超音波検査は、胸のところにプローブを当てて検査するのですが、これでは脳梗塞の原因を見落としてしまうことが多いのです。
これを解決するため、胃カメラのように細いプローブを食道に入れて検査すると、心臓の中や大動脈に脳梗塞の原因の血栓が見つかることが多いのです。そんな検査法は正直、国循に行くまで知りませんでした。
あんなすごい先生と一緒に講演させてもらえるなんて、なんかの間違い(?)と思ってしまいます。

現在このブログは動脈瘤一色ですが、徐々に頸動脈狭窄症などの脳梗塞関連や特殊な血管異常(もやもや病や動静脈奇形)についても話を展開していきますよ。
乞うご期待!
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未破裂動脈瘤の治療法選択ー血管内手術(近未来編)その3

2008年05月04日 | 動脈瘤
動脈瘤の再開通を防ぐコイルのお話の続きです。
前回紹介した「目からウロコ!」のコイルについて紹介しますね。
そのコイルはハイドロコイル(Hydrocoil)という名前のコイルです。
アメリカのMicroVentionという会社が作っています。
コイルに吸水性のポリマーがコーティングしてあり、コイルが血液と触れると徐々に膨張してくるのです。
ですので、前回紹介したようなルーズな塞栓であってもコイル自体がふくれて容積を増すために最終的には十分な塞栓になるというスグレものです。
百聞は一見にしかず。
動画が以下のサイトにありますのでぜひ見てください。

コイルの膨らむ動画
http://www.healthmedia.ca/3danimation/03hydrocoil14.htm

ハイドロコイルを使った塞栓術の動画(英語のナレーションでちょっと長いですが、最後まで見てくださいね)
http://www.healthmedia.ca/3danimation/03MVIhydrocoil.htm

どうでしたか?すごいでしょう!
コイルをつめる様子もよくわかりましたね。
昨年ニューヨークを訪れた際には、ルーズベルト病院ではこれをほぼ全例に使って動脈瘤の塞栓を行っていました。
日本ではテルモが輸入するとのことです。
早く認可をとってほしいですね。

実は自分が国立循環器病センターのレジデントだった頃に、塞栓物質にこういったポリマーを使うという発想を持っていました。
当時のチーフの風川先生(現福岡大学)の指導のもと動物実験をしたこともありましたが、「アクリルアミドなどの物質は発がん性などの長期安全性が確保できない」という考えで、人間に使用するのは当分は無理そうだと、あきらめてしまいました。
しかしそれを乗り越えてくる人(企業)があるんですね。
しかもコイルにコーティングして体積を稼ぐとは!
拍手喝采!

動脈瘤の塞栓術後の再開通は、やはり塞栓物質の体積率をあげるのが最も効果的との見解が主流です。
しかもハイドロコイルでは、そのコーティングが膨らんでくるまでは、塞栓中のコイルの滑りなどにも問題がない!
これらの観点からすれば、このコイルは理想的とも言えます。
早く使いたい...(^0^)/

実は年内にこういったコイルが日本で使えるようになる可能性もあると予測しています。
楽しみですねー!
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