脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

Mt. Fuji Workshop

2010年08月30日 | 学会/研究会
週末Mt. Fuji workshopという会に出席してきました。
今回は福岡大学の井上先生が主催されました。テーマは「動脈解離と脳卒中」です。
動脈解離は若い人の脳卒中の代表的な原因疾患です。
今回は一日このテーマに沿った演題が提示され、大変勉強になりました。

もともと斉藤 勇先生と端 和夫先生がclosed meetingとしてはじめられたこの会は、脳血管障害に関して一つのテーマをじっくりと討論する形式で行われます。
私も以前この会で緊急バイパス手術について発表したことがあります。
今回で第29回という伝統ある会ですが、今回、運営委員に加えて頂きました。
自分などが選ばれるとは予想外のことですが、とても光栄です。
微力ながらこの会の発展に協力したいと思います。

福岡はとてもいい天気でした。
会は井上先生のご趣味のワインの試飲会などもあり、華やかな雰囲気でしたし、会場のヒルトン福岡シーホークホテルは素晴らしいホテルでした。
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鵜飼

2010年08月21日 | 閑話休題
そういえば最近、鵜飼を見ました。
これまで40年以上、岐阜に住んできましたが、恥ずかしながら舟に乗るのは初めてだったのです。
中濃病院で「もやもや病」に関する講演をさせて頂いた後、参加された先生方と関市の小瀬鵜飼に行きました。鵜匠の家で天然の鮎づくしに舌鼓を打った後、いざ屋形船に乗り込みました。
まず乗り込んだだけですでに楽しい。船に乗るだけで話が弾みます。
そして、鵜飼は?
予想以上に素晴らしいものでした。関の鵜飼は周囲に明かりがなく、観光客も少ないため、かがり火に照らし出された鵜が目の前で鮎を捕るところを見られます。船から降りた後も、鵜匠の家で鵜に餌をあげるところまで見せてくれます。こんなに楽しいものだったんだと感激しました。
これまで長良川の川原や橋の上から鵜飼を遠目に見て、「あんなの何が楽しいんだろう?」とか、「観光のために残してるんじゃないか」などと思っていましたが、端から見るのと、船に乗るのでは大違い。翌週には東京から帰省した弟家族を連れて、長良川の鵜飼に行ってきました。

調べてみたところ、長良川の鵜飼は1300年以上の歴史があり、日本で唯一の皇室御用の鵜飼で、獲れた鮎は皇居へ献上されるそうです。鵜匠は代々世襲制で、宮内庁式部職という職名を与えられているとのことです。
長良川鵜飼は歴史的にも織田信長や徳川家康などの保護を受けてきました。伝統装束に身を包んだ鵜匠が篝火のもとで鵜をあやつる様子は、まさに「幽玄の世界」という感じです。千年以上も前の人たちが、同じものを楽しんだということはとても感慨深いものでした。

みなさんも機会があればぜひ船に乗ってみてくださいね。
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もやもや病について その4 治療:血流を増やす バイパス術4

2010年08月19日 | 脳梗塞
ではもやもや病にバイパス手術を行うとどうなるか?
上の図のように、皮膚の血管から脳に血流が流れ込むようになります。
それとともにもやもや血管が徐々に退縮して行きます。
これは脳に血流が増えたことによって、もやもや血管にかかる負担が減少したことを意味します。
つまり、「もやもや血管が破綻することによる出血」や「もやもや血管では足りなくて脳梗塞を起こす」可能性が減少することを意味します。出血も梗塞も両方とも予防できると考えられます。

また、上の図では中大脳動脈と前大脳動脈の両方に血管がつながっていることが分かります。
個々の患者さんの状態によりますが、現在の私の手術法はこの二つの血管(中大脳動脈と前大脳動脈)の両方にバイパスを行う方法をスタンダードにしています。
これまでこの手術で後遺症が出たことはありませんし、治療後に脳卒中になった人もおらず、明らかに有効であると考えています。

明日ももやもや病のバイパス手術があるので、この手術法を行う予定です。
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教科書の編集

2010年08月15日 | 閑話休題
「脳動脈瘤血管内治療のすべて」という教科書の編集をしました。
中部地区では、根来 真先生が脳血管内治療の普及と啓蒙に努められてきました。先生が本年、日本血管内治療学会の会長をされるということで、この教科書の出版が立案されたのです。
このため同じ中部地区ということで、岐阜大学の私にもこの教科書の編集が依頼されました。
私たち岐阜大学の同門の先生が多くのパートを執筆したこの教科書はとても良い記念となりましたし、私自身も教科書の編集について勉強させて頂きました。
今回の編集を通して色々とアイデアがわいてきました。できれば地道に形にしていきたいと思います。
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臓器移植の意思表示について

2010年08月12日 | 閑話休題
「柴犬好き」さんから、臓器移植の意思表示についてコメントを頂きました。
日本臓器移植ネットワークのホームページを見たところ、現在大きく分けて3つの意思表示方法があるとのことです。
1.インターネットによる意思登録
2.意思表示カードやシールへの記入
3.被保険者証・運転免許証の意思表示欄への記入

自分が留学した1999年、アメリカではすでに運転免許証取得時、臓器提供の意思表示を確認する項目があり驚きましたが、日本でもとうとう同じ状態になりました。
ただ,今回ホームページを見るまで、インターネットやモバイルサイトでも登録可能とは知りませんでした。

関心のある方は下記ホームページをご覧になってください。
 日本臓器移植ネットワーク
 http://www.jotnw.or.jp/
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臓器移植

2010年08月10日 | 閑話休題
臓器移植法改正後、初めての脳死移植が行われました。
これまでは本人が移植に書面で同意し(臓器提供意思表示カードを所有)、かつその記載に間違いがなく、さらに家族の反対がない場合にのみ、脳死状態からの移植が可能でした。
私自身も臓器提供意思表示カードを所有しており、もしもの場合には移植に反対しないよう家族にお願いしています。
しかし実際には、このような条件が全て整うケースは非常に少なく、現にこれほど重症患者を多く扱う私たちの施設でも脳死移植を経験したことがありません。

このため心臓や肺の重度の病気を持ち、移植でしか生命を維持できない患者さんは、唯一の可能性を求めて海外で移植を受けることを余儀なくされてきました。多くは募金等でその資金を賄うことになりますし、海外で大きな治療を受けるのは本当に大変だと思います。
また心停止後でも提供できる腎臓等の提供も日本では少ないため、中国等で金銭によって移植を受けるケースも増加して、国際問題になっています。

さらにもう一つ大きな問題だったのは、これまでの法律では日本では小児からの臓器提供が認められていなかったことです。ですから子供の心臓病や肝臓病の患者さんは、海外で移植手術を受けるしかありませんでした。これまで何度も海外で移植を受けたという報道を目にされたことがあると思います。アメリカや他のアジアでは可能で、日本だけダメというのはどれだけ論理を振りかざしても理屈が通りません。

ですから私は基本的に今回の改正については賛成です。
確かに脳死の判定にはグレーゾーンがないわけではありませんので、警鐘を鳴らす方もおられます。
私も脳死判定等は極めて慎重に行うべきと考えますが、上記のような状況を考えた場合、前に進めることも重要だと思います。

関連学会では今回の改正で、脳死移植が10倍程度に増加すると見込んでいるとのことです。
それでもまだまだ足りないでしょう。それは、移植を待ちながら亡くなられていく患者さんがいるということです。
今後、日本でも脳死移植が発展することを願っています。
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もやもや病について その4 治療:血流を増やす バイパス術3

2010年08月10日 | 脳梗塞
もやもや病のイメージをお示しします。
正常では太い脳の血管が、右のもやもや病では非常に細くなっているのが分かると思います。
こうなると脳への血流が減少してしまい、ある程度を超えると脳梗塞になってしまいます。
このため、代償機構が働き、脳の細い血管が拡張してきます。
これがもやもや血管です(矢印)。
つまり、もやもや血管というのは、それ自体が病気なのではなくて、脳を守るためにできているのです。
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もやもや病について その4 治療:血流を増やす バイパス術2

2010年08月09日 | 脳梗塞
まずバイパス術のうち、直接吻合についてお話しします。

脳の血流が悪い場合、他の血管を脳の表面の血管につなぎ、バイパス(回り道)を作成することで血流を改善する方法です。
心臓や足の血管でも行われる方法ですが、脳の場合には皮膚の表面の血管を使います。

耳の前に指を当ててください。細い血管が脈打つのが分かると思います。
これが浅側頭動脈(せんそくとうどうみゃく)です。
これを脳の表面にある、中大脳動脈(ちゅうだいのうどうみゃく)という血管につなぎます。
ですから、脳の血管をつなぐ代表的な手術法は「浅側頭動脈ー中大脳動脈吻合術(ふんごうじゅつ)」という名前になります。

直接血管をつなぐわけですから、その手術はすごく細かい手技になります。
血管はどちらも直径1ミリぐらいですから、練習を積んでいないときれいにつながりません。
普段の修練や経験が最も影響する手術の一つと言えます。
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もやもや病について その4 治療:血流を増やす バイパス術1

2010年08月05日 | 脳梗塞
前回の記事にコメントを頂きました。
今回からバイパス術について紹介します。

もやもや病は脳の血管が徐々に詰まって、脳の血のめぐりが悪くなる病気であることをお話ししました。
詰まってくるのなら溶かせば良いのでは?という質問を受けたことがあります。しかし、徐々に進行し、血管の壁自体が動脈硬化のように分厚くなって詰まってくることが分かって来ており、血栓で詰まるわけではないので薬による対処は不可能と考えられています。
このため、古くから行われているのがバイパス術です。

脳血管のバイパス術とは、簡単に言うと、皮膚の血管を脳の血管につなぐ手術です。医学的には吻合(ふんごう)術と呼ばれます。
しかしその方法には、直接血管をつなぐ方法(直接吻合)と、脳の周囲の組織(硬膜、筋肉、筋膜など)を脳に接するようにして自然に血管のつながりができるがようにする方法(間接吻合)の2通りがあります。
また直接吻合にも、小さな傷で行う方法と大きな傷で行う方法、1本だけつなぐ方法、2本以上つなぐ方法があります。

どのように違うのか、次回から説明します。
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医学論文

2010年08月02日 | 閑話休題
皆さん、医学論文っていうのはどんなものか分かりますか?
医師たちが経験した症例や新しい治療法などをまとめた文章で、医学雑誌に掲載されたもののことです。
医学会では世の中に広く公表するためにはこのように専門雑誌に掲載されることが重要なのです。
一般にはテレビや新聞による報道が広く情報を公開する方法なのですが、専門家領域ではそういったことよりも、「論文にすること」こそが「科学的に最も格式が高い」と考えられているのです。

この雑誌への投稿ですが、以前は印刷して国際便で送っていました。でも今はインターネット経由がほとんどです。
投稿する医学雑誌のホームページを開いて、そこから「論文投稿」という項目を選び、クリックしていくと投稿できるのです。
本当に便利になりましたが、逆に電子化が進んだために、医学雑誌そのものを手に取ることが減ってしまいました。
PDFファイルとして保存しておいた方が場所もとらないし、検索も瞬時に可能ですから便利なのです。
しかし時には見開きで見たり、ポケットに携帯したいこともあるなあー、と思います。そういったときは印刷すればいいのです。あまり欠点がないですね。

さて、投稿の話に戻りますが、自分たちが載せたいと思った論文でも、雑誌に投稿すると、その雑誌が依頼する「査読委員」が判定しますので、採用されなかったり、大幅な修正を求められることがよくあります。
自分もいくつかの雑誌の査読委員をしていますが、「この症例は興味深いな」とか、「雑誌に掲載して多くの人が見たほうがいいな」と感じるかどうかが一つの重要なポイントです。
ただ判断基準は人それぞれ違うので、自分たちが「この論文は絶対に通るはず」と思っても、あっさりreject(拒否)ということもあります。またほとんど同じ形式のまま別の雑誌に投稿するとそのまま採用されることもあります。
雑誌やその査読委員ごとに興味が違うのです。ですから運もあるのかなと思います。

昨日、一つ論文投稿をしました。
いい返事が来るといいんですけど。
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