脳卒中をやっつけろ!

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脳動脈瘤についてのQ&A その8 クリッピング術後の検査は何が良いか?

2023年12月28日 | 動脈瘤

「頭にクリップが入っていますがMRIは受けられますか?」という質問もよく受けますので、ここでお答えしたいと思います。

 

30年以上前にはMRIができないクリップも使われていましたので、そのような場合には専門医に確認が必要ですが、その後はMRIが可能な金属に変わりましたし、最近のクリップはチタン製ですので、MRI検査は可能です。

しかし、チタンクリップを使っていても、通常のMRI撮影法ではクリップの周囲がよく見えないのです(図左)。矢印の部分で血管が見えなくなっているのがわかります。これはクリップの素材(金属)が邪魔をしているためです。医学的にはアーチファクトと言います。

このため、クリップ後は造影剤を使用したCT(CT血管撮影, CT angiography: CTA)を行うことが多いのです。クリップした部分の周囲がふくらんで再発することがありますので、治療後も検査が定期的に行われることが多いです。

しかし、CT検査は放射線被曝がありますし、造影剤を使用する場合には腎臓障害やアレルギーのリスクもあります。このような観点から毎年、あるいは半年ごとに検査を行うのは患者さんのリスクになります。ではどうしたらいいのでしょうか?

 

最近、開発された新しいMRI検査法、サイレントスキャンを行えば、クリップ後でも脳血管がきれいに見えることが多いのです(図右)。血管が良く見えていますね!私はこの検査結果を始めてみた時に大変驚きましたし、今でもクリップ後の血管がきれいに見えると「おー!」っと声を上げてしまいます。医学の進歩は凄いですね!

もちろん、他の検査法と同様、サイレントスキャンでもなぜか血管がうまく見えないこともあります。多くは、クリップを何本も使った治療を受けた場合に多いのですが、クリップの向きなども関係するようです。

従って、腎機能低下のある方、造影剤アレルギーのある方だけでなく、クリッピング術後には一度この検査を行ってみて、もし血管がうまく見えるのであればサイレントスキャンで定期検査を受けた方が安全だと考えています。

この検査法を希望される方は、下記までご連絡下さいね。

stroke_buster@mail.goo.ne.jp

 

 

 

 

 

 

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脳動脈瘤についてのQ&A その7 どのぐらいの間隔でいつまで検査を受けるか?

2023年12月18日 | 動脈瘤

未破裂脳動脈瘤の患者さんによく質問を受ける事項に、

「どのぐらいの間隔でいつまで検査を受けなければならないのか?」というものがあります。

まず経過観察中に動脈瘤の増大や変形をきたすと破裂率が非常に高くなることが報告されており(年率4.3-18.5%)、そのために定期画像検査が行われています。

どのぐらいの間隔で受けるかについては、我が国のガイドラインでは半年から1年毎に画像検査を受けることが推奨されています。 ほとんどの場合MRIが選択されますが、閉所恐怖症や体内の金属留置、タトゥーなどにより受けられない患者さんもいます。そのような場合にはCT造影検査などを行いますが、被ばくを減らすため1年毎に実施することが多いです。

一方、いつまで検査を受けるかについてですが、未破裂脳動脈瘤は自然に小さくなったり、消失することはほとんどなく、また、年齢とともに破裂率は上昇することが知られているため、何歳になっても受けられることが多いです。ただ、実際には病院に通うのが困難になったり、別の病気が見つかったタイミングで検査を終了される方が多いです。

欧州脳卒中ガイドラインにおいては、フォローアップの頻度と期間については、動脈瘤と患者さんのリスク因子によって決定される、と記載されています(1)。

1. European Stroke Organisation (ESO) guidelines on management of unruptured intracranial aneurysms. Eur Stroke J. 2022 Sep; 7(3): V.

 

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