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脳動脈瘤 その41 脳血管内治療:その11 ステントアシストテクニック 3

2021年09月19日 | 動脈瘤
それではどのようにステントを選択するか、説明します。

まずこの治療においては5ミリ以上のサイズの動脈瘤が適応になります。
これはステントの適応が5−7ミリ以上のためです。

ではまず、まっすぐな血管に大きめのサイズの動脈瘤がある場合を考えてみましょう。(図A)
このような場合にはどのステントでも問題なく治療が可能です。

次に、小さめ目のサイズの動脈瘤ではどうでしょうか?(図B)
この場合にはコイルのサイズも小さくなりますから、ステントの目が大きいとコイルが網目からはみ出してしまいます。
このため目の細かいステントを選ぶ方が有利です。

一方で、実際には血管が曲がっていることもよくあります。
曲がった血管ではステントが血管の壁に密着しにくくなります。(図C)
密着が悪いとステントと血管壁の間に隙間が残り、そこに血のかたまり(血栓)ができやすくなります。
血栓ができると、その部分が詰まったり、脳の血管に流れて行くことで、脳梗塞を起こしてしまいます。
このため、密着しやすいタイプのステントを選ぶことになります。(図D)

以上のように、動脈瘤の大きさや、使用するコイルのサイズによってステントを選んでいるのです。

大まかには以上のような流れになりますが、実際の選択に当たっては血管自体のサイズや枝の位置など様々な要因が影響しますので、専門医はその状況に応じて適切なステントを選ぶことになります。

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脳動脈瘤 その40 脳血管内治療:その10 ステントアシストテクニック 2

2021年09月15日 | 動脈瘤
前回の続きです。
日本で脳動脈瘤治療に使用できるステントには3種類あって、それぞれ別の会社から提供されています。
それぞれ特徴があります。
まず上二つのステント(Enterprise2とLVIS)はマス目(英語でcell)が閉じた形なので、クローズドセル(Closed cell)型と呼ばれます。
一方、一番下のステント(Neuroform Atlas)はZ型のものが所々繋がっているだけで、マス目が開いているのでオープンセル(Open cell)型です。
また、Enterprise2とNeuroform Atlasはレーザーで切り出して作っていますが、LVISはワイヤーを編み込んで作っています。

以上のように、脳動脈瘤用のステントは構造や作り方が三者三様で、それぞれに特徴も異なっています。
このため、私たちはこれらを状況によって使い分けています。

どのように使い分けるのか?
次回説明しますね。

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脳動脈瘤 その39 脳血管内治療:その9 ステントアシストテクニック

2021年09月12日 | 動脈瘤
みなさんお久しぶり!
今回はステントアシストテクニックを紹介しますね。
従来治療が難しかった入り口(ネック)の広い動脈瘤も、ステントを併用することで治療できるようになりました。
上の図をご覧ください。
血管の横にできるタイプ(左)ではステントを留置すれば、血管を綺麗に温存して治療が可能です。
血管の分かれ目にできた動脈瘤はやや治療が難しいのですが、2本のステントを組み合わせれば治療が可能です。
このようにステントを使うことで、コイル塞栓術の適応が一気に広がりました。

ただし欠点もあります。
ステントは正常血管に留置するため、それが血管の壁に取り込まれて膜が張るまで血液サラサラの薬(抗血小板薬)を内服する必要があるのです。
また右の図のように2本のステントを組み合わせるような場合には、生涯内服を続ける必要があります。

これらについて、次回もう少し詳しく説明します。
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