さて、血圧を下げる薬(降圧剤)には色々な種類があります。
1)カルシウム拮抗薬
2)アンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬
またはアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)
3)利尿薬
4)交感神経β受容体遮断薬(β遮断薬)
5)交感神経α受容体遮断薬(α遮断薬)
などです。
なんだか難しい名前ばかりですね。でも自分がどんな薬を飲んでいるのか、飲むことになるのか、ご関心があるところだと思いますし、飲むなら効果の高い薬を内服したいところです。
さて、以上の1-5のうち、ガイドラインでは前3者が脳卒中患者さんに対して推奨されています。しかしこれだけの薬の種類の中からどうやって選んでいるのでしょうか?
それは以前説明した統計の手法です。つまりそれまでに行われた複数のランダム化試験の結果を再解析して、膨大な数の患者さんのデータからどの薬が脳卒中の予防効果があったかを割り出すのです。この方法はメタ解析(Meta-analysis)と呼ばれ、最も信頼性の高い解析法とされています。
「本当は毎回新たにランダム化試験を組み直した方がいい」という見解もあります。「過去の報告のデータを集めて各群3,000例になった」とは言っても、それぞれ患者さんの背景が異なるので、「人種や持病、年齢などが違うグループをごっちゃまぜにして何が分かる!」というわけです。生データを集めるのではなく、ネット上(論文上)のデータだけで解析することが多いことも批判の対象になります。
しかし一方で、多くのランダム化試験で設定される条件自体が薬の効果を出すために仕組まれたものであって、「様々な患者さんが混じっても差があるということこそ真実である」、という見解もあります。
こういった意味からは、より多くの人を調べればいいわけですが、臨床においては人を対象とするために条件が限られてきます。国民全員、あるいは地球上の人を2群に分けて効果を試すことは事実上不可能ですので、ある集団を調べてそのデータを普遍化するという手法をとらざるを得ません。このため様々な意見があるものの、今のところ医学の世界ではメタ解析が最も信頼性が高いとされていて、このガイドラインも基本的にメタ解析の結果を重視しています。
さて、次回はそれぞれの薬についてもう少し説明します。