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脳動脈瘤についてのQ&A その3 脳動脈瘤破裂予防効果のある薬剤

2023年08月06日 | 動脈瘤

先日のホルモンに関する記事に対して、脳動脈瘤を経過観察中の方から質問がありました。そこで今回は「脳動脈瘤破裂予防効果のある薬剤」についての情報を紹介したいと思います。

これまで、医学研究を通して脳動脈瘤破裂予防効果のある薬剤の候補となってきたのはスタチン(コレステロールを下げる薬)とアスピリン(血液をサラサラにする薬、鎮痛剤)などです。しかし、これらの薬剤は心臓血管系の薬として広く使用されており、1人の患者さんに重なって処方されていることが多く、その効果を判定しにくいことが多いのです。

そういったバイアスを排除するために行われた研究結果が日本から報告されています(Shimizu K. et al. PLoS One. 2021 Feb 12;16(2):e0246865.)。

この論文において脳動脈瘤破裂との負の相関(減らす方向性)が示されたのは下記の薬剤です。

1)スタチン(コレステロールを下げる薬)

2)カルシウム拮抗薬(血圧を下げる薬)

3)アンギオテンシン受容体阻害薬(ARB) (血圧を下げる薬)

つまりこれらの薬剤を内服していなかった人に破裂が多かったということです。

1)は動脈硬化の進行を抑制する作用があり、2)3)は血圧を下げる効果がありますので、それらの効果を介して破裂と負の相関があったことが推察されます。

これらの薬剤が動脈瘤の破裂予防に本当に有効かどうかについてはまだ結論が出ていません。しかし、少なくともコレステロールの高い人や、血圧の高い人がこれらの薬剤を内服することはリーズナブルと考えられます。

 

一方で、破裂との正の相関(増やす方向性)が示されたのは下記の薬剤です。

1)アスピリン以外のNSAIDs(消炎鎮痛剤)

オッズ比はなんと3.24。つまりNSAIDs(消炎鎮痛剤)を常用している人には破裂が3倍ぐらい多い、ということになります。何らかの病気で痛みのある方は内服せざるを得ないかもしれません。しかし、脳動脈瘤をお持ちの方で、もし内服を減らしたりやめられるのであれば、「破裂を増やさない」効果が期待できます。

ちなみにアスピリン以外の主なNSAIDs(消炎鎮痛剤)を挙げておきます。

  • ロキソプロフェン(ロキソニン®など)
  • ジクロフェナク(ボルタレン®など)
  • インドメタシン(インダシン®など)
  • メフェナム酸(ポンタール®など)
  • スルピリン(メチロン®など)
  • アセトアミノフェン(アンヒバ®、カロナール®など)

 

以上のように、まだ破裂を防ぐ薬は実用化されていませんが、脂質異常症や高血圧などがある場合に今回紹介した薬剤を内服すること、そして消炎鎮痛剤を常用しないことが、破裂予防に有効な可能性があると思います。

いかがでしたでしょうか?今回の情報が少しでも皆さんのお役に立つと嬉しいです。

 

コメント (2)
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