脳卒中をやっつけろ!

脳卒中に関する専門医の本音トーク
 最新情報をやさしく解説します 

脳梗塞の治療 日本でも申請が出たMerci 

2009年03月26日 | 脳梗塞
今、最も新しい脳梗塞超急性期治療について紹介します。
脳梗塞は「脳の血管が詰まっておきる」わけですから、これを溶かすか取ってしまえば良いわけです。
これまでは「溶かす」方が中心になってきましたが、これまで紹介してきたように薬で溶かすのには限界があります。
我々はバルーンでつぶす操作を加えたところ、劇的にその効果が上がりました。
しかしそれにも限界がある。
だったら、カテーテルで取ってしまえば良いんです!!!

でもそんな器用なことが可能なのでしょうか?
答えは?そう、できるんです!
何はともあれ見てください。メルシー(Merci)というカテーテルです。

http://www.youtube.com/watch?v=99x_APzvD1c

どうですか?
すごいですよね!メルシーという名前がまた良いじゃないですか!
これが使えるようになると、まさに「脳梗塞治療新時代」の幕開けだと思います。
これを開発したPierr Gobin 先生は先週日本脳卒中学会で私が発表したのと同じセッションで特別講演されました。

実はこのカテーテル、日本での使用に関して企業から申請が出されたのです。
厚生省の優先項目に入っているそうだから、1年ぐらいで認可される見通しとか!
「近未来」がいよいよ現実的になってきましたね。
医療の進歩はすごいですね!
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

質問に対する答え

2009年03月24日 | 脳梗塞
MENSさんからのコメントに対する答えです。
「最初はtPAに間に合えばほとんどの人が良くなると思っていました。この治療に間に合うようにわたしたちの病院でも練習をしました。今まで何人か治療して良くなった患者さんもいたけど、あんまり変わらない患者さんがいて何でかなと思ったんだけど、謎がとけました。でもどうして効かないのですか?」

そうですね。どうしてtPAを点滴しても良くならない人がいるのでしょうか?
まず一つめは、詰まった血管が開通しないためです。脳梗塞で血管が詰まる場合には多かれ少なかれ、血管の中に血液の固まりが出来るのです。その固まりの主体成分であるフィブリンが多いか少ないか、これがtPAで溶けて開通するかどうかの分かれ目といわれています。
二つめは、tPAのために出血を起こす人がいるためです。その確率はそれほど高くありません。完成した脳梗塞の中ににじみ出た無症状の出血を含めても5%程度です。症状を強く出す人は1-2%といわれています。頭ではなく体の別の部分に出血することもあります。

実際に患者さんを治療中に検査を行うと、血管が通らないために良くならない人がほとんどです。
ですから救済療法がクローズアップされているのです。



コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳梗塞の治療 tPA静注療法後の救済療法 

2009年03月22日 | 脳梗塞
脳梗塞編の続きです。
tPAを点滴しても開通しない時にはどうするか?
以前、「閑話休題」で紹介した「救済療法」を行うのです。

3時間以内にtPAを点滴しても詰まった血管が再開通しない場合、そのまま様子を見ていたらどうなるか?
我々の経験ではほぼ全例が高度の障害となってしまいます。
これについて我々の同門の施設である高山赤十字病院のデータをもらって検討中ですが、ほぼ同じ傾向のようです。
つまり1時間後に詰まったままだと非常に結果が悪い。
そこで私たちはtPAの点滴が終わっても血管が開通しない患者さんに対して、すぐにカテーテル治療を追加し、閉塞部で風船を広げることで血栓を破砕し再開通させる治療を試みています。
この治療で少なくとも半数の患者さんに再開通が得られて劇的に症状が改善することが分かってきました。

以上を総合すると、
全体の20-30%がtPAで開通する。
残りの70-80%のうち半分(35-40%)が救済治療で開通する。
合計すると55-70%で最開通が得られる、ということになります。

これぐらい効けば、いいのかもしれません。
この治療法をこれまで学会で発表してきたところ大きな反響がありました。
今回脳卒中学会でのプレゼンもこの治療を披露したためだと思っています。
国内のハイボリュームセンターのいくつか(多くの治療を手がけている東京、仙台、大阪の施設)に、我々の治療プロトコールを提供しました。
自分たちがはじめた治療が専門家に興味を持ってもらえる、その結果、これまでよりも多くの人が日本の各地で救われる。
非常に素晴らしいことです。

最近ではそれらのメンバーを中心にデータをまとめられないか、前向き試験でこの治療の有効性を確認できないかということを議論しています。
前に紹介した「科学的検証のための多施設前向き調査」です。
がんばらないと!

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プレゼン終了!

2009年03月21日 | 閑話休題
今日は脳卒中学会のBig debateでプレゼンしてきました!
このような大きな学会で、重要な役割をさせてもらったことは大変光栄なことです。

今回は大勢の聴衆の前で、急性期脳梗塞3症例について自分の担当である血管内治療の「弁護」をしました。
ただ自分自身は、内科的治療・外科的治療・血管内治療を、患者さんの状態に応じて「うまく使い分ける」ことが信条です。
ですから、その状況に最も適した治療ができるよう日々修練を積んでいるつもりです。
治療法はどれでもいいのです。患者さんの結果さえ良ければ(^^)。

ですが、今日はある一つの治療法の弁護をすることになってしまい、ちょっと違和感がありました。
でもまあ、分かる人は分かってくれたかな?
講演の中でも自分がバイパスした症例も出したので、偏った治療をしていないということは伝わったと思います。

大役のため最近ずっと気になっていましたが、無事終わってほっとしました(^^)v

このセッションの後、Pierr Gobin 先生の新しい治療デバイスの話がありました。
次回紹介しますね!
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

祭ずし

2009年03月20日 | グルメ
岡山駅で特急やくもに乗り換える時、周りの人たちにつられて買ってみました。
岡山名物のままかりや、しゃこが入っていてすごく美味しい!
1250円とちょっと高いけど、みんな良く知ってますねー。
岡山駅では要チェックです  (^.^)b
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第34回日本脳卒中学会総会

2009年03月20日 | 学会/研究会
明日から第34回日本脳卒中学会総会が島根県で開催されます。
この学会は、日本脳卒中学会総会、日本脳卒中の外科学会、スパズムシンポジウムの3つが合同で開催される大きな学会です。
脳卒中に関する日本最大の学会で、脳卒中に関することなら、ほぼ何でも情報を仕入れることができます。

今回は2日目の大きなセッションで、発表を依頼されました。
他2名のディベーターは札幌医大の宝金教授と国立循環器病センターの豊田先生です。
ビッグなお二方に挟まれて若干緊張しています(^^;)v

ただテーマは急性期血行再建戦略、つまり脳梗塞の超急性期治療に関することです。
自分が常日頃、最も力を注いでいる分野ですので、多くの興味深いケースやデータを持っていますが、できるだけ分かりやすくなるように今も修正しています(おいおい前の日だよ!と言われそうですねー)

明日は5時間以上かけて松江に向かいます。スライドを準備しながら!
では次回は松江から連絡しますね。

----------------------------------------------
ビッグディベート2:急性期血行再建戦略
座長:森 悦朗(東北大学 高次機能障害学)
座長:宇野 昌明(徳島大学 脳神経外科)
座長:寺田 友昭(和歌山労災病院 脳神経外科)
ディベーター:宝金 清博(札幌医科大学 脳神経外科)
ディベーター:豊田 一則(国立循環器病センター 内科脳血管部門)
ディベーター:吉村 紳一(岐阜大学 脳神経外科)
----------------------------------------------
座長:嘉山 孝正(山形大学 脳神経外科)
【特別講演】Mechanical thrombectomy for occlusion of main cerebral arteries
Weill Cornell medical College. New York, NY, USA
Yves Pierre Gobin
----------------------------------------------
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳梗塞の治療 tPA静注療法:再開通率 

2009年03月15日 | 脳梗塞
tPAを点滴した時にどの程度つまった血管が開通するのでしょうか?
まずこの治療が日本で認められた時に私自身が抱いた疑問です。
それまでカテーテルを使った動脈内注入療法で良い成績が出ていたからです。

このtPAという薬は「血管の中にできた血栓を溶かして再開通させる」作用があります。
この薬は点滴により体内の全ての血管を巡りますが、前回の図に書いてあるようにフィブリンという血栓に含まれる物質のみに効く性質を持っています。
このためカテーテルを使ってつまった頭の血管の中に直接注入しなくても、点滴だけするだけでいいのです。
すばらしいですよね!
でももしそれまでの方法より効きが悪かったら患者さんが気の毒ですよね。
それに私自身が絶対に許せません。
なぜなら脳の血管が詰まっている時には、早く開通するほど後の回復がいいからです。
なのにアメリカで始まったこの研究は血管が再開通するかどうか調べずに認可されているのです。

それでこの治療をする患者さんを全員脳血管撮影室に搬入して、治療前から点滴中ずっと血管撮影を行うことにしました。
どのぐらい詰まっている血管が通るのか?
その結果、27人中6人、たった22%しか再開通しなかったのです。
この数字には衝撃を受けましたし、大変残念ですが現実です。
この結果は学会でも注目されています。

しかし実はこの調査が進行するより前に現場のスタッフたちは気づき始めていたのです。
私たちのチームはいつも動注とバルーンカテーテルを使った治療で、詰まった血管を再開通させてきました。
だからtPA静注療法をはじめてわずか数例で「この治療法は効果が少ない」と気づき始めていたのです。

でもアメリカのFDAが認可した、高いレベルのエビデンスのある治療です。
日本でも私の尊敬する山口武典先生をはじめ、トップレベルの脳血管内科医、脳神経外科医が中心となって推し進めている治療薬です。
どうしたらいいのでしょうか?


コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳梗塞の治療 tPA静注療法

2009年03月10日 | 脳梗塞
脳梗塞急性期に行うtPA静注療法。
どのぐらい効くのでしょうか?

前にもお話ししましたが、ある治療の効果を本当に確認するためには
その治療を行うかどうかをランダムに振り分けて
1)治療を行うグループ
2)治療を行わないグループ
を比較する必要があります。

tPA静注療法はこういった振り分け試験を受けて効果が証明されています。
1995年アメリカの国立衛生研究所(NIH)の研究によって、この治療による予後改善効果が認められたのです。
tPAの投与を受けたグループでは状態の良い患者さんが39%、偽薬を使ったグループでは26%と、状態の良い患者さんがtPAの投与により13%増加していました。

というと「え?たったそれだけですか?」といわれそうです。
確かにこの治療を行えば、「良くなる患者さんが増える」のですが、全ての患者さんが良くなるわけではないのです。
その一つの理由は血栓が溶けない場合があることです。
もう一つの理由は血栓を溶かす強力な薬なので、効き過ぎによる脳出血が起きるためです(全体の6.4%)。
「薬の点滴」といっても、リスクなしで治療できるわけではないのです。普通のクリニックで受ける水分補給のためのの点滴とは全く違うのです。

一方、この治療の非常に良い点は、「CTスキャンさえあれば、医師が一人いればどこでもできる」ことです。
それまで血栓溶解を行っていなかった中小の病院でも、CTさえあれば、一人の医師がやる気になればできるのです。
これがtPA静注療法の最大の利点です。

ただ日本は医療大国です。医療レベルは世界一と評価されています。
脳卒中の専門家も非常にたくさんいますし、救命センターや脳卒中センターはたくさんあります。
よほど山の中や離島でなければ、大きな医療機関が短距離に存在するのです。
ですから日本では専門家による治療が短時間で受けられることが多い。
ここがアメリカとの大きな違いです。

私が欲張りなのかもしれませんが、「自分が出会う患者さんは全員良くなってほしい」と思ってしまいいます。
ですからこの治療が新たに承認されたとき、その本当の効果を確認したいと思いました。
なぜならそれまでずっと、私は脳梗塞の急性期にカテーテルを使った血栓溶解療法を行って非常に良い結果を得ていたからです。
点滴だけでどのぐらい溶けるのでしょうか?
次回にその最新の結果をお話しします。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

とっておきのラーメン

2009年03月08日 | グルメ
私のとっておきのラーメン屋さんを紹介します。
それは「ラーメンハウス大樹(だいじゅ)」です。
私が中学生の頃から通っているお店です。
いろいろなところでおいしいご当地ラーメンを食べますが、ここのラーメンはやはりおいしい。
このあたりでは珍しい「白みそラーメン」がおすすめで、絶品です。
お店の見かけは地味なので見過ごしがちですし、常連さんを大事にするため取材を断っているそうです。
ですから雑誌などにもまず出ない、知られざる名店です。
でもここのおかみさんはとっても優しくて感じのいい方ですよ。
場所は本巣縦貫道(モレラの前の通り)沿いで、岐阜第一高校の近く、リカーマウンテン北方の斜め向かいです。
(岐阜県本巣市上真桑2258:058-324-7552)
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳梗塞の治療 超急性期(3時間以内)

2009年03月06日 | 脳梗塞
まず超急性期治療です。
2005年10月に新たな脳梗塞の治療薬が日本で認可されました。
正確には、組織プラスミノーゲンアクチベーター(tissue plasminogen activator: tPA)と呼ばれる薬です。
このtPAは点滴するだけで脳血管の詰まったところを溶かす素晴らしい薬です。

それまでの脳梗塞の治療薬は、詰まったところを溶かすのではなく
1)脳を保護する
2)血液をさらさらにして脳梗塞再発を予防する
3)動脈硬化の伸展を抑制する
などの効果をもつだけで、超急性期には効きません。
だからこれは画期的な新薬なのです。

日本でやっと認められたtPA。
実際に上の症例のように点滴するだけで詰まった太い血管が再開通するのです。
すばらしい!

ただしこのtPAが使えるのは発症後3時間。
これを少しでもすぎると、有効性がなくなるといわれています。
ですから脳卒中の患者さんを素早く見分けてtPA治療をしている病院に運ぶこと!
これが現在の脳梗塞超急性期治療のポイントです。

しかし全例に再開通が起きるのでしょうか?
有効率は何パーセントぐらい?
合併症は?
いろいろ気になることがあります。
順に説明して行きましょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする