すぷりんぐぶろぐ

桜と絵本と豆乳と

「いろは…」の感染へ

2020年03月04日 | 読書
 先週は今江祥智の本を漁って読んでみた。その中の一冊。

 【いろはにほへと】今江祥智・文  長谷川義史・絵  BL出版



 初めて文字を習ってうれしい「かっちゃん」が「いろはにほへと」と唱えながら道を歩いていて、侍とぶつかってしまう場面からこのお話は始まる。

 最初は怒った侍も、かっちゃんが覚えたての「いろは…」を練習していると知り、少し愉快になり思わず自分も口ずさみ歩いていくと、馬にぶつかり、その馬上にはご家老がいる。侍は、つい「いろは…」…と言い訳するとご家老はそれを面白がる。

 どこか微笑ましい「いろはにほへと」は侍からご家老へ、そして場内に戻った家老からお殿様へ。機嫌の良くなったお殿様は隣国の使者と接して…

 と、繰り返し連鎖する筋。
 結局「いくさ」は回避され、「穏やかさ」が感染していく話といってもいいだろう。


 昨年末に職場で忘年の宴をもったとき、慶事があった方がいて「幸せは伝染する」と話したことをぼんやり思い出す。


 そして私たちが今置かれている状態を見つめ直してみる。

 新型ウィルスの感染拡大防止にそれぞれが気を配らなければいけないことは言うまでもない。

 しかしその行動とともに、何か別の意識まで伝染させていくような状態に陥っていないか。

 予想される事態に備えておくことは肝心だ。しかし、その備えが過剰になりすぎ、困っている状況を生み出している。
 個人にとっては必要感が大きく、価値の高い物事まで、平均化された考えで測られ、何事も目立たぬが良しとされる。

 いわば、重苦しさの感染である。

 事態の深刻さを理解していないわけではないが、もっと「おちつけ」と繰り返したくなる。