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桜と絵本と豆乳と

オイルショックからの本選び

2020年03月13日 | 読書
 みうらじゅん先生の「オイルショック!(老いるショック)」宣言が頭に残っていたので、それに関わるような書名の文庫を読んでみた。


 【暮しの老いじたく】(南 和子 ちくま文庫)

 これはまったく「実用書」の類だった。だから具体的に老齢になってどのような手続きが必要か、どんな道具が便利か、注意すべき事項は…などが中心だ。10年ぐらい経ったら役立つかなあとぼんやり思ったが、それがもしかすればあと1年でやってくるかもしれないという想定も必要か。それが「老いる」ことなのだ。孫へ読み聞かせをしていて婆さんの声をふざけて昔の俳優(浦辺粂子)でやってみて大笑いした後、この文庫でその女優の死に方(衣類に火がつき焼死)を知り、笑えない記述にどっきりした。そういう出逢い方もある。


 【生と死についてわたしが思うこと】(姜尚中  朝日文庫)

 これは2008~12年頃書かれたコラムの集約で、老いとは直接的な関わりはなかた。しかし東日本大震災、原発事故などが取り巻く情勢のなかで、家族内に不幸を抱えた著者が、何を大切に生きていくかが問いかけられている一冊だった。ベストセラー『悩む力』が著者の代名詞になっている。悩むにはエネルギーが必要だ。悩むには批判精神が必要だ。悩むにはぶれない芯が必要だ。二つの国家を冷徹に見ている者の矜持を感じた。


 【知的な老い方】(外山滋比古  大和文庫)

 専門的な著書は読めないが、著者のエッセイ風の本はたくさん読んでいるので愛読者の一人を自負している。今回、ああそうかと改めて強く認識させられたのは、日本の知性と称される著者の源泉は、間違いなく「好奇心」だが、実はあまり長続きしない性質のようだということ。失礼ながら「三日坊主」的興味関心の繰り返しや、不得手な整理整頓の箇所を読んで、心強く思ってしまった。「知的」は素敵な形容詞であり目指す対象になるのだが、ある意味では以前書いた方言「クサレタマグラ」の連続によっても、ほんのちょっと近づけると知って嬉しかった。